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引退した戦神ナッコフの悠々自適なダンジョン生活 ~英雄するのは飽きたので今日もソロで資源集めして楽しみます~  作者: タック


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9/10

戦神と拠点拡張

「すごいのだ、これは永久電池なのだ」


 拠点に雷龍の角片を持って帰ったら、それを解析したアシモンはロボット特有の無感情っぽく驚いていた。


「よし、これでゲームの世界を救えるな!」

「ちょっと待つのだ。永久電池だけあっても、コンピューターゲームには辿り着かないのだ」

「なんだと!? 他に何が必要なんだ!?」

「ゲーム機とソフトのセット、それと拠点の拡張なのだ」


 アシモンから要求されたものは、その二点だった。

 ゲーム機とソフトというのは動画で見せてもらったので物理的な物としてわかるが、拠点の拡張というのが具体的にわからない。


「まずは拠点の拡張のために材料を持ってくるのだ。そこまで大幅な拡張じゃないから、近くの廃墟を漁ればすぐだと思うのだ」

「わかった」




 ***




 アシモンを連れて近くの廃墟を探索してきた。

 今回はケーブル類や、鉄くずっぽいもの、加工用の工具とあまり価値がなさそうなものだ。

 そのために略奪されずに手つかずでかなり残っていた。

 それらを山盛りで担ぐ。


「重さ数百キロはありそうなのに凄いのだ」

「この世界の石の道は歩きやすいから助かるな」


 ズシンズシンと足音を響かせながら無事に拠点へと帰還した。




「これと雷龍の角片を使って、拠点拡張してゲームができる環境を整えておくのだ。少し時間がかかるから、その間にゲーム機とソフトを探してくるといいのだ」

「了解した。コンピューターのための環境なんて我にはわからないから助かる」

「ゲーム機とソフトの見た目は教えたけど――そうだ、この食べ物と飲み物もあると少し楽しみが増えると思うのだ。では、グッドラックなのだ」




 ***




 アシモンが教えてくれた地図は、今まで廃墟漁りした場所よりも遠かった。

 どうやらゲーム機は娯楽だけでなく、中の部品を取り出して他の物に使うこともあるためらしい。

 そして、そういう物がまだ残っていそうな場所は、この世界の略奪者たちが集まってくる危険な場所でもある。


「ここが商店街というところか」

「こちらの世界で言う市場的な感じでしょうか。もっとも、説明を聞く限りでは荒廃する以前にかなりの店が撤退していて、目的のゲーム機とソフトがある店と、他数店くらいしか残ってないとのことでしたが」


 ナッコフといぬっちがやってきたのは、廃墟となった商店街だった。

 元は活気があったのかもしれないが、今は住人たちがいない寂しい状態だ。

 ――いや、住人ではないが人はいた。


「ようよう、ペット連れのお爺ちゃん。ケガしたくなかったら金目の物を置いてけぇ!」

「ひゃっはー! 不用意にこんなところに来ちまった不幸を呪うんだなぁー!」


 モヒカンとスキンヘッドの男二人組がナイフを手に脅してきたのだ。

 ナッコフは静かにそちらに視線をやった。


「ひっ!? な、何かコイツの顔……カタギじゃねぇような……」

「い、今気が付いたけどジジイの癖にデカくねぇか!?」


 ナッコフはナイフを向けられても危機感を全く覚えず、むしろ男二人のことを心配してしまった。


「おいおい、ナイフの持ち方が素人過ぎる。もっと、こう握りこむように――」


 ナッコフは大きな手で、男が持つナイフの刃ごと握って持ち方指導をしようとした。

 だが、ナッコフの腕力に耐えきれずナイフは折れてしまった。


「ひっ!?」

「ああ、すまん。まさかこんな脆いナイフを使っているとは思わなかったんだ……。こんなのじゃ泥オークも倒せないだろう」

「ど、泥オーク? もしかして、グロームウォーカーのことか?」

「こ、コイツバケモノだあぁぁぁあ!!」


 男の一人は半狂乱になり、その懐からハンドガンを取り出して構えていた。


「ば、馬鹿!! やめろ!! グロームウォーカーが銃声で寄ってき――」


 ナッコフはハンドガンを知らないので、暢気に世間話を続けていた。


「泥を被ったオークみたいな感じだったから、泥オークと名付けたのだが……。そうか、こちらにはオークがいないから通じないのか」

「こ、このバケモノめぇぇえええ!!」


 パンパンッ!

 軽い乾いた銃声が響き、ナッコフの頭部に向かって発射された。

 一発は額、一発は眼球だ。


「は、はは……やった……」

「くそっ!! 別に殺さなくてもよかっただろ!! しかも、今の銃声で……」

「結構大きな音がしたな。その小さいのもM4カービンアサルトライフルか?」

「いや、これはハンドガンという銃の種類で……って、なんで生きてるんだよお前!?」


 ナッコフに放たれた銃弾の一発は額の皮膚で弾かれ、あげくに眼球の方はまつげに弾かれていた。

 戦神の頑丈さは伊達ではないのだ。


 一方、商店街の方から泥オーク――もといグロームウォーカーたちがゾロゾロとやって来た。

 先ほどの銃声を聞きつけてしまったのだろう。

 ナッコフたちを不気味な眼でギロリと睨み付け、一斉に向かってきた。


「ひぃぃいい!! 奴らが来る、もうお終いだああああ!!」

「あいつらグロームウォーカーがいるから商店街に近づけなかったんだよぉぉおおお!!」

「む、そうか。それは悪いことをしたな」


 略奪者の男二人は、最初の頃と違い見る影もなく、泣き叫んで死を覚悟していた。

 ナッコフはグロームウォーカーの方を見るそぶりもせず、裏拳で一匹の頭部を破裂させた。


「掃除するからしばらく待ってろ」

「は? 一発で倒し……!? 掃除……!?」


 ナッコフは商店街を観光するかのようなゆったりとした足取りで奥へ進み、その拳だけでグロームウォーカーたちの頭部をパンッと打ち砕いて掃除をしていく。

 そして十匹ほど倒して全滅させたあと、気が付いてしまった。


「あっ、しまった!!」

「どうしたんですか、ご主人様」

「せっかくのM4カービンアサルトライフルを使っていない!!」

「そ、そうですか……」


 ナッコフは深いため息をはきながら、写真で見たゲーム屋を発見した。

 そこはレトロゲームを扱う店で、旧式のゲーム機やソフトが置いてあった。


「おぉ! 色々とあるな! ゲーム機はあるのを持っていくとして、ゲームソフトというのはどれがいいんだ……?」


 ナッコフは悩みながら、後ろで隠れて様子を見ていた男二人組に聞いてみた。


「なぁ、そこの隠れている二人。ゲームソフトはどれがオススメだ?」

「うわっ、やべぇバレた!!」

「別にとって食おうというわけではない。老人には親切にしておくといいことがあるぞ」

「あ、あんたを老人として扱えるかよ……」

「まぁまぁ、そう警戒するな。まだこちらの世界には詳しくないんだ。異世界無双系ラノベに出てきたゲームというものをやってみたくてな」

「こ、こっちの世界……? やっぱり頭どこかおかしいんじゃ……」

「異世界無双系ラノベで言うゲームなら、RPGがオススメだよ」


 男二人組は、片方は警戒をしていて、片方はゲーム好きのようで質問に答えてくれた。


「RPG?」

「ロールプレイングゲームの略。これとこれのシリーズが王道で有名。こっちは異色だけど個人的に好きかな」

「ほう、感謝する」


 ナッコフはゲーム機とソフトを袋に詰めて、次に向かいにあるコンビニへと移動した。

 生鮮食品などはすでに乾燥して食べられなくなっているが、他は使える物が多そうだ。

 その中から、アシモンからオススメされたポテトチップスとコーラだけを袋に詰め込んだ。


「そこの二人、あとはいらないから自由にしろ」

「えっ、いいの!? 俺たちはアンタをナイフで脅して物を取ろうとして、あげくに撃っちゃったのに……」

「構わん、オススメのゲームを教えてくれた礼だ」

「そ、それだけで!?」

「食べる物がなくなればどんな善人でも賊へと身を落とすこともある。それにまだお主らは人を殺したことすらないだろう」

「な、なんでわかるんだよ……」

「ビックリするくらい、ナイフの扱いが下手くそだったからな。まだ赤子が親の指をへし折った方が迫力もあるだろう」


 ナッコフは、傲岸不遜にワハハと笑いながら一切の怨み無くその場を去って行った。

 男二人は困惑しながらも、その大きな背中に頭を下げていた。

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