表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引退した戦神ナッコフの悠々自適なダンジョン生活 ~英雄するのは飽きたので今日もソロで資源集めして楽しみます~  作者: タック


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

戦神と雷龍

 ダンジョンから一旦脱出して異世界に帰還したナッコフは、ミドガルの王に拝謁していた。

 開口一番、場の空気は緊迫していた。


「王よ、雷龍の住む山への入山許可を」

「なっ!? 神にも匹敵するという、上位龍の山じゃと!?」

「はい」


 それは国にとって全軍を動かすような事態だ。

 軍神がそこに至るまでどんな経緯があったのか。


「お前のことじゃ……きっと正しいのだろうとはわかる。だが、それでも理由を聞かせてくれ。お前が入ったあのダンジョンの中で何かあったというのか?」

「新たに邂逅した、小さき世界を救うため」


 正確にはコンピューターゲーム内の世界を救うためである。


「ふっ、やはりお前はどこにいても戦神ナッコフレディ・アスガルドなのじゃな。このミドガルを救っただけでは飽き足らず、また世界を救おうとしておる。よかろう、入山を許可する。必要とあらば軍も付けるが……そっちは足手まといになってしまうな」

「許可だけでも充分です、王よ」

「さぁ、我が友、我が誇り! 再び世界を救いに旅立つが良い!!」




 ***




「ご主人様、さすがに王との謁見は肝が冷えましたよ……」


 標高が高く険しい山の上で、いぬっちは白い息を吐きながらナッコフに言った。

 横を歩くナッコフはキョトンとしている。


「ん? 我は普通に説明しただけだが……」

「コンピューターゲームの世界を救うだけってバレたら大変なことになりますよ。まぁ、コンピューターなんて説明しても伝わらないのだから、説明しようもありませんが」

「我としてはそう伝えたつもりなのだがな……言葉とは難しいものだ」

「まぁ、我々はあまり人間とは喋りませんでしたからね。常に危険な場所で魔王軍と戦っていたので」


 いぬっちは色々と思い出していた。

 自分は神の眷属〝ブラックドッグ〟として生まれたのだから、別に自身に感情は無くても問題ないと思っている。

 だが、人間として生まれた彼は、その運命から人間らしさを享受する権利すらなかったのだ。


 元から不器用な性格ではなく、そうならざるを得ない過酷な環境だったのだ。

 早くに両親から離れ、友と呼べる者は王だけだ。

 民衆は彼を戦神としか見てなくて、決して自分と同じ人間とは思ってはいない。

 だから、あまり一般常識がないのは仕方がないのだ。


「それでご主人様、本当に雷龍の魔石を手に入れるつもりですか?」

「うむ、どんな相手かはわからんが、まぁ何とかなるだろう」

「神にも匹敵する相手ですよ。一般常識だけじゃなくて、何か色々なものが抜け落ちているような……」


 いぬっちはやれやれと、犬っぽい姿ながら器用に首を振った。

 いつの間にか頂上付近まで登ってきていて、その黒い毛並みと雪の銀世界がコントラストを生み出している。

 すでに雲が出て霧っぽくなっている標高で、普通の人間なら酸欠になってそうだ。


『ほう、この雷龍を倒して魔石を得たいとほざくか?』


 その声と同時に白かった雲は、稲光を纏う黒い雷雲となった。

 雷雲の向こう側から現れたのは、あまりにも巨大すぎて認識できない何かだった。

 表現的には雷雲に隠れた果てなき壁が動いているような感じだ。


「あれ、喋る相手だったのか……。困ったなぁ、これは一方的に倒しにくいぞ」

『この状態で、まだ我を倒すつもりだというのか。よっぽどの実力者か、または馬鹿としか思えん』

「えーと、雷龍殿。お主の魔石をわけてもらえぬか? って、無理だよなぁ」

『やはりよっぽどの馬鹿か!? 腹を掻っ捌いて魔石をやる奴なぞおるか!! 龍の逆鱗に触れる無礼を身をもって知るが良いわ!!』


 世界を覆い尽くすほどの壁だと思われたモノは、雷龍の身体だった。

 天が落ちてくるが如く、それがナッコフたちの頭上に降ってきた。

 ズズンと大地震のような衝撃が走り、山の先端がナッコフごと潰れて標高が低くなってしまった。


『まったく、久々に誰かやってきたと思えば馬鹿の戯れ言とは……』

「戯れ言ではない。世界を救うために安定した電気が必要なのだ」

『は?』


 雷龍は蚊を叩きつぶしたと思っていた。

 しかし、地面の下からまだ声が聞こえてくるのだ。

 次の瞬間、雷龍の超巨大な身体が持ち上げられていた。


『あ、ありえない……なんだその力は……』

「我はナッコフ……世界を救うものだ……!!」


 ナッコフは雷龍を投げ飛ばした。

 それも超巨大な身体を弾丸のようなスピードで投げたので、遠くの山が数個潰れてしまった。


『うおぉぉぉおおおお!?』


 雷雲から姿を現した全長十数キロにもなりそうな雷龍は、二メートル程度の小さなナッコフに投げられて驚愕していた。

 簡単に言うとメチャクチャビビっていた。

 強者故に、ナッコフがまだ本気を出していないともわかったのだ。


『ま、参った! 降参だ!! この山脈を気に入っていて、下手に戦って更地にしたくないのだ!!』

「それは申し訳ないことをした」


 ナッコフは超長距離をジャンプしてきて、一瞬で雷龍の顔の横に着地していたのだ。


『まったく、お前が噂の戦神ナッコフか。人間種はたまにとてつもない奴が現れるから侮れん……』


 そういうと雷龍は巨大な爪の先でナッコフに何か渡してきた。


「これは?」

『さっき欠けてしまった角の一部だ。それなら千年か一万年くらいは安定した電気を発し続けるだろう。制御も容易だ』

「感謝する、雷龍殿」

『世界を救うことに興味はないが、お前にとってはそれほどに大事なのだろう。この雷龍に泥を付けさせたのなら、絶対に救ってこい』

「この我でも難しいかもしれないが……角の力を借りて全力で挑むことにする」


 雷龍はゴクリと息を呑んだ。

 このナッコフでも難しいと言わしめる敵がいるのだ。

 宇宙が滅ぶ可能性すらあると考え、武者震いをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の評価欄☆☆☆☆☆をポチッと押して
★★★★★にしてくれると応援になります!

いつも読みに来て頂き、ありがとうございます!

「ブックマークに追加」も便利なのでオススメです!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ