戦神とライトノベル
初探索を終えた次の日、戦神ナッコフは大泣きしていた。
最強無敵である筋骨隆々の老人が泣いている姿は異様すぎた。
「ご、ご主人様、どうされましたか?」
「うぉぉおん!! よかった!! 色々な障害が間にあったけど、勇気を出して告白してカップルになって、後日談では結婚して子供までいて、とっても感動したァ!! これが我が人類を守った意味――人の〝愛〟なのだな!!」
「さ、左様ですか……」
割と普通の営みなのだが、この年齢まで我欲を捨てて戦神として戦いに明け暮れてきたナッコフにとっては衝撃だったのだろう。
いぬっちもそこは理解しているが、いくら崇拝する戦神でもガチすぎるリアクションなので若干引いていた。
どんな毒でも効かないナッコフが、感動によって目を泣きはらしていた。
そんな状態で節電モード中のアシモンに質問をする。
「アシモンよ、作中に出てきた異世界無双系ラノベとはなんだ?」
「良い質問なのだ。ラノベとは、ライトノベルの略なのだ。ようするに娯楽寄りの小説なのだ」
「ほう」
「異世界無双とは、そのジャンルの一つなのだ」
「面白いのか?」
「それは個人の感性によるけど、さっき読んだラブコメと同じくらい人気があったのだ」
「なぬ!? あの愛を教えてくれたラブコメと同じくらい……だと……!?」
ナッコフは力みすぎて、魔力放出で身体の表面がとてつもない圧を発していた。
「よ、読みたいぞ~……ッ!!」
「ネット環境も壊れているし、そもそもサーバー自体が無事ではないだろうから今回も紙の本を現地調達しに行くしかないのだ」
「ライトノベルという書物が保管されている場所はわかるか?」
「近くに本屋はないのだ。あるとすれば……このラノベ作家の家の廃墟なのだ」
アシモンの胴体にあるパーツが開き、そこにあった液晶で家と地図の画像を映し出した。
「この家主もすでにモンスターに……」
「いや、このダックという駄目作家は無双系を出版するも打ち切りを食らって、出版社に殴り込みに行って階段で滑って頭を打って野垂れ死んだのだ」
「そ、そうか……」
「ダックの著書は家族が呆れて燃やしていたけど、コレクションの名作異世界無双ラノベは残っているようなインタビューが出てたのだ」
「よし、出発だ!!」
***
廃墟に繰り出したナッコフといぬっち。
アシモンは拠点に置いてきた。
「ご主人様、その手に持っているのは……」
「M4カービンアサルトライフルだが?」
「壮大な冒険の末に鍛冶神に作っていただいた〝神弓アポロテミス〟はどうしたんですか!?」
「威力が強すぎて資源がありそうな建物まで壊してしまいそうだし」
「それだったら素手でいいのでは……?」
「郷に入れば郷に従えだ」
ナッコフは銃を眺めたり、構えたりしていた。
「なるほど、その世界の文化を重んじるわけですね。……それで本当の理由は?」
「……カッコイイから」
ナッコフは、そのシワだらけの顔で年甲斐もなく頬を紅潮させて照れていた。
「わかりました。それで、その銃弾という矢のような消耗品はどうするんですか? 素材的に木を削って作るわけにもいかないですし」
「あ、落ちてた」
地面にあった5.56mm弾をヒョイヒョイと拾い集めていく。
「なんでそんな都合良く落ちてるんですか!?」
「これを拾っておいたマガジンに弾詰めしておいてっと……」
ナッコフは歩きながら、太く大きい指で器用に作業をする。
もういぬっちは呆れるよりも感心する段階になってしまった。
「さすがご主人様。戦のこととなれば異世界の武器でも扱えてしまう才能があるとは」
「ラブコメマンガの中で覚えた」
「あ、侮りがたし……ラブコメマンガ……」




