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引退した戦神ナッコフの悠々自適なダンジョン生活 ~英雄するのは飽きたので今日もソロで資源集めして楽しみます~  作者: タック


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戦神と第一住人

「警告、警告。当機を破壊しても食べられないのだー!!」


 謎の声の主に向かって泥オークが腕を振り下ろそうとした瞬間――。


「ふっ、もう大丈夫だぜお嬢さん。この学園一のアイドルであるオレ様が助けに来たからな」


 ナッコフが女性向けイケメン風の格好良いポーズをしていた。


「助けてくれるのは嬉しいけど、ボクはお嬢さんではないのだ。性別が設定されていないのだ」

「ふむ、こちらの世界はそういうものなのか。進んでいるな」

「コンプラに配慮しているのだ。それより助けるなら早めにお願いしたいのだ」


 突然の横槍に泥オークは警戒していたが、今にもその手が振り下ろされそうな雰囲気だ。

 ナッコフは自信満々の表情を浮かべ、少しヘンテコな銃の構えだがトリガーを引いた。


「……あれ? 何も出ないな……これって何か発射されて相手が死ぬのでは?」

「安全装置を外していな――」

「では、M4カービンアサルトライフルはこう使う!!」


 銃の後部――ストックの部分で思いっきり泥オークを殴りつけた。

 魔力で強化しているので下手な鈍器よりも威力が出ていて、泥オークの身体はビルまで吹っ飛んでいき、あまりの衝撃にビルが倒壊してしまっていた。


「よし!」

「よしじゃないのだ。でも、助けてくれて感謝するのだ」

「いやいや、こちらこそ……って、そちらの種族は見たことがないな。ゴーレムか?」


 泥オークを殲滅して落ち着いたところで、ナッコフは謎の声の主を観察した。

 声は中性的だったので少年か何かかと思っていたのだが、外見は人間ではない。

 白いペイントの角張った鉄の身体に、丸っこい頭部、それと足はキャタピラとなっている。


「あなた方の見た目もかなり尖っているのだ」

「ふむ、そうか。たしかに我もそちらから見れば異世界人か」

「異世界? 理解不能だけど、この世界を襲った異常事態を考えれば、考慮すべきかもしれないのだ。たしかに異世界人の方ならロボットは見たことがないのだ」

「ロボット?」

「そちらの世界のゴーレムとやらを人工的に作って量産して、人間の友とした物と理解してくれればいいのだ」

「なるほどなぁ。それにしても精巧な作りだし、受け答えもしっかりしてるな。こちらのゴーレム技術は進んでいるようだ」

「ボクはプレミアムモデルのアシモン、色々な意味でセンシティブと言われがちなロボットなのだ」

「そ、そうなのか……そこはあまり触れない方が良さそうだな……」


 ナッコフには理解できないが、異世界には異世界の事情というものがあるのだろう。

 アシモンの異文化交流に気圧されてしまっていたが、今の目的を思い出した。


「そうだ。この本の続きを探している。心辺りはないか?」

「この周辺の地図はダウンロード済みだから、ありそうな場所はわかるのだ」

「ほ、本当か!?」

「でも、ギブアンドテイクなのだ。ボクも一緒に連れていくのだ。こんな世知辛い世の中で当機だけだとすぐに破壊されてしまいそうなのだ」


 その言葉に今まで黙っていたいぬっちが大声で吠えた。


「キサマ!! 戦神ナッコフ様の従魔になろうと言うのか!? その立場がどれほど重いかわかっているのか!!」

「うーん、まぁいいか」

「そんな!? この私でさえ、神から与えられし二十の試練を乗り越えて、ようやくご主人様の従魔として……」

「すまん、マンガの続きが気になって」


 きっぱりと言われて、ションボリのいぬっちはペタンと耳を折ってしまった。


「では、交渉成立なのだ。そのマンガをSNSにあげていた人間の家の廃墟が近くにあるのだ」


 ナッコフは善は急げとばかりに、指差された方向へ向かうのであった。




 ***




 ナッコフはアシモンを抱き抱えながら廃墟の二階にやってきていた。


「建物の中も珍しいな」

「一般的な日本の家庭なのだ」


 勉強机があり、本棚があり、ベッドがある。

 ナッコフがいた世界のミドガル基準だと、全ての物が手作りなので逆に量産品は珍しい雰囲気に感じてしまうのだ。

 本棚の中を覗き込むと、そこには続きの二巻だけではなく、他の巻も揃っていた。


「おぉ……!! いや、しかしこれはもらってしまってもいいのか? 人の家だろう……」

「こんな世の中だから問題ないのだ。それでも気になるなら両手を合わせておくといいのだ」

「両手を……?」

「人間が言うところの、天国への祈りなのだ」

「なるほどな……。この異世界日本でのやり方か」


 すでに住人はこの世にいないのだと察すると、ミドガルとは違った祈りだが両手を合わせた。


「同じマンガを好きになった同好の士よ、大切に読ませてもらうぞ」


 一分ほど黙祷したあと、ラブコメマンガの二巻を取ろうとして隅にある本に気が付いた。


「おや、これは一巻に出てきた男性二人ではないか。裸で抱き合っているが、これも続きなのか? それにしてはタイトルと画家の名前が違うな……」

「それはまだマンガ初心者には早いのだ。そのまま、そっとしておくのだ」

「そうなのか? とても綺麗な絵に見えるのだが……残念だな」


 その謎の薄い本はアシモンのアドバイス通り、触れずにおいた。

 きっとこの世界には、この世界なりの流儀があるのだろう。


「さて、このまま拠点へ帰るか」

「待つのだ、マスターの健康的にも食料も探していくのだ」

「マスター?」

「もう立派な所有者だから、そう呼ぶのだ。ご主人様とか言うと、たぶんそっちの犬が怒るのだ」


 話を振られたいぬっちは、プイッとそっぽを向きながらぶっきらぼうに呟く。


「ご主人様呼びは、私一人の栄光有る特権だからな。マスター呼びでも若干気に入らんが」

「ロボット以上に融通が利かない犬なのだ」

「ガルルルル……ご主人様の庇護下に無かったら噛み砕いているところだ……!」

「ボクは今、そのマスターの心配をしていて、食料の調達を提案しているのだ」


 それを聞くといぬっちは遠吠えのようなポーズで大笑いをした。


「ワーンワンワハハハワン! あまりの冗談に野生が少し出てしまったぞ! 軍神であるご主人様は食事など必要としない! そんじょそこらの人間とは訳が違う、無欲な存在なのだぞ!」

「食べ物か……この日本の食べ物ならば興味があるな」

「えっ!? ごっ、ご主人様!?」


 いぬっちは、普段は見せないナッコフの姿に動転するも冷静に取り繕う。


「ふ、ふふ……実際に現地の料理を食べてみて確認、さすがですご主人様! ですが、我々のように食事を必要としない存在が、人間の食事など気に入るはずが――」




 ***




「ワンワン!! これ美味しいですよご主人様!!」


 拠点に色々と持って帰ってきて、いぬっちにドッグフードと呼ばれる犬用の食事を与えたら大喜びで尻尾を振ってきた。

面白い!

続きが気になる……。

作者がんばれー。

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<(_ _)>ぺこり

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