戦神とポテチとコーラ
「おかえりなのだ。一晩で仕上げておいたのだ」
「おぉぉ……」
ナッコフといぬっちが拠点に帰ってくると、かなり見た目が様変わりしていた。
いかにもダンジョンの一部という感じだった無骨な感じは、コードやパイプ、計器類が壁に敷き詰められ、床もそのまま座れるように畳が敷かれている。
ついでにベッドやソファー、コレクション用の棚なども増えていて、かなり居住性が増している。
「すごいな……アシモン……我に出来ないことをサラッとやってのける……」
「それほどでもないのだ。みんなは家を改造するときはちゃんと資格を持っている専門家に頼むのだ」
「どこを見てみんなと言っている?」
よい子は絶対に真似しないでください。
「そんなことより、ゲーム機とソフトをセットするのだ」
「セット……アシモンがやってくれるんじゃないのか?」
「そこは自分でやるのも醍醐味らしいのだ」
「機械とやらを我が……ゴクリ……」
ナッコフは龍を投げ飛ばせるが、こういう細かい作業をあまりやったことはない。
下手に力を入れたら壊れてしまうだろうし、手順を間違えても上手く動かないだろう。
大きな手のせいで、ゲーム機はミニチュアのように見えてしまう。
「まず、三色のケーブルをテレビとゲーム機に繋げるのだ」
「ケーブルはこれか……。テレビ……テレビとは?」
「ボクなのだ!」
アシモンのお腹がパカッと開き、見慣れたモニターと、その下にケーブルを挿す場所が露出している。
「ちょっと恥ずかしいのだ」
「そ、そうなのか? すまんな」
ナッコフは色が合うケーブルをアシモンに挿していく。
「コンセントも刺すのだ。雷龍の角片を上手く組み込んで拠点で電気を使えるようにしておいたのだ」
「何かよくわからんが、すごいな!」
「法律がぶっ飛んだ世紀末だから何でもできるのだ!」
「ええと、次は……」
「ゲーム機にソフトを入れてスイッチオンなのだ」
「いくつか現地の略奪者に選んでもらったが……この数字が一番小さいやつからやるか」
灰色のカセットをゲーム機本体に差し込み、スイッチを入れた。
ザーという音と共に画面には砂嵐しか映らない。
「これは吹雪の中でも歩いている表現か?」
「違うのだ、バグっているのだ。一回スイッチをオフにしてから、ソフトを抜き取って接触面を息でフーフーするのだ」
「フーフー……? 何かの魔術的な儀式か……?」
ナッコフはよくわからないが、言われたとおりにやることにした。
カセットを一度引き抜いて、挿入面にフーフーと息を吹きかけた。
あまりに強くしすぎると吹き飛ばしてしまう可能性もあるので、優しくソッとだ。
「よし……これで……」
カセットをゲーム機に刺して、スイッチを入れると今度こそゲーム画面が映った。
デカデカと立体感あるタイトルロゴが映し出される。
「うおお! もうこの時点で格好良いな!!」
「もっとテンションを上げる方法があるのだ」
「なに!? これ以上だと!? そんなバカな――」
「資源漁りで持って来たポテチとコーラを飲み食いしながらゲームをするのだ」
「なっ、なにぃ!? そんな背徳的なことをしても良いというのか……」
「良いのだ、これがコンピューターゲームのメジャーな楽しみ方なのだ」
ゲームをしながら飲み食いをする。
ナッコフは今までの人生で考えたこともなかった。
慎重に……のりしおポテチの袋と、コーラのフタを開ける。
緊張しながらポテチをパリッと一口――それをしゅわしゅわコーラでグイッと流し込む。
「ぷはぁっ!! なんなのだこれは!! ポテトの風味でありながら不思議で軽い食感に、丁度良い塩味と海苔の香り、口の中で割れる大海のように豪快に流し込まれる炭酸の効いた甘い飲料――怠惰! 堕落! だが、それも人間!! こういう楽しみもあるのか!! いいぞ、無限に食べられる!!」
「ポテチを手で掴むと手が油まみれになってコントローラーが汚れるから、この箸を使うといいのだ」
「ぬぅぅぅ、これが人類の叡智……」
いつの間にかナッコフは満面の笑みで若い姿になっていた。




