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引退した戦神ナッコフの悠々自適なダンジョン生活 ~英雄するのは飽きたので今日もソロで資源集めして楽しみます~  作者: タック


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戦神と王

ちょっと書いたことの無い感じの話に挑戦してみました。

 ――戦神ナッコフレディ・アスガルド。

 その伝説的な人物は〝異世界ミドガル〟に名を轟かせていた。


「生まれながらにして、抱き上げてきた父親の指をへし折ったって話だぜ」

「五歳でドラゴンを殺し、返り血を浴びて強靱な皮膚を得たんだってな……」

「いやいや、十歳にして人魚の肉を食べて飢えも渇きも知らずで、我々のように下賤な欲が存在しないというのも凄いだろ」

「十五歳にしてありとあらゆるダンジョンを制覇したってのも痺れるぜ」

「二十歳にして魔王軍を単独で殲滅して、世界に平和をもたらした最強の人間――いや、もはや神! 戦の神!」

「それが戦神ナッコフレディ・アスガルド様! 今も我らを守り続けてくださっている!」


 人々はそう言っていたが、本人としてはすべて過去の話だ。

 城の中、玉座に座る王が不安そうに喋る。


「ナッコフよ、今日はどうしたのじゃ?」


 王の前に跪く男――ナッコフレディ、親しき者は愛称でナッコフと呼ぶ。

 王とナッコフは若い頃からの知り合いで、今は一緒に年老いて互いに七十歳程度になっている。

 戦神と呼ばれたナッコフも顔には深いシワが出来て、元から白かった髪も似合うようになってきた。

 いわゆる老人になってきたのだが、未だに鍛え上げられた筋肉だけは若々しい。


「王よ」


 その声は真っ黒い雲が雷を溜めるかの如くゴロゴロした振動のようであり、獣の王者である獅子のようでもあった。

 敵意の無い一声であったが、周囲の近衛兵たちは身をすくませてしまう。

 それが戦神の言の葉

 窓の外は秋の荒ぶる突風が吹き荒れ、より一層の緊張感を際立たせる。


「我、ナッコフレディ・アスガルドは戦神を引退する決心を致しました」

「なっ!? そのような重大なことを突然――……いや、お前のことじゃ。よほど考えて決心をしたのじゃろう。口惜しいが止めはせぬ。理由を話してもらえないだろうか」

「はい。世界の脅威も排除し、後進の勇者たちも育成済みです。これ以上、出がらしの老害が出しゃばっても良いことはありません故に」


 ナッコフの言葉に周囲はざわめいたが、対等な王だけは小さく笑った。


「ふっ、自分では年老いたように言うておるが、誰もお前には敵わん。じゃが、お前がいなくても平和を維持できるというのを確かめるチャンスかもしれんな」

「では――」

「戦神を引退することを許可する。友よ、これからは自由に生きよ」

「有り難き幸せ、ミドガルに栄光あれ!!」


 ――そして元戦神ナッコフは、新たに誕生したダンジョンへ姿を消した。




 ***



 二日後。


「うおおおお! このヒロインとの恋はどうなってしまうのだぁぁあ!! 続きが気になりすぎる!!」


 ダンジョンの中にある住居に、素っ頓狂なナッコフの声が響き渡っていた。

 ナッコフの姿はシワも無くなり若々しくなっていたが、またすぐに老人の姿に戻ってしまった。

 その理由は手にしている一冊の本にある。


「は~……。マンガっていうのはすごいな……若返るわ~」


 気分的に若返ると、肉体まで若返ってしまう。

 特異体質であるナッコフだからこそなのだろう。


「どんな言語でもわかるスキル、初めて役に立った気がするわ……。それにしても、このダンジョンは変なところだな」


 ナッコフはこのダンジョンにきたときのことを思い出していた。

 暇だったから新たに誕生したダンジョンに飛び込んでみたところ、見た事もないような文明があったのだ。

 高い石や鉄の建物があるくらい発達していたのだろうが、崩れているところも多く、人間は存在していなかった。

 代わりに強力なモンスターがウヨウヨいたが、そこは元戦神のナッコフなので問題はなかった。

 情報を集めるために道ばたに落ちていた書物を拠点としているところへ持ち帰ったところ、それはマンガと呼ばれるものでとても面白かったのだ。


「くそっ、これが一巻ということは続きが……続きが気になる……。我がこんなにイライラしたのは魔王軍が千日間休まず攻めてきたとき以来だ……!! チクショウ!! このラブコメマンガの続きはどこにあるんだ!!」


 ――『次マップ解放条件、悪のロボット退治』と拠点のパネルに浮かび上がっていたが、そういうことは気にしていなかったのでナッコフはスルーした。


 こうして資源集めのダンジョン生活が始まったのであった。

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