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手負いの聖女様

「聖女様が魔王を倒したぞ!!」

「号外〜!号外〜〜!」


人々で賑わう活気溢れる国、クルートゥル王国。

そんなクルートゥルの下町では、朝早くから盛大な祭りが開かれていた。


その()()は魔王の敗北にあった。

長年の戦いが、遂に終結。魔王軍対国王軍で、我らが国王軍が勝利したのだ。


その中でも、聖女様率いる“クルリカ隊”の活躍は凄まじかった。


迫り来る魔族達をなぎ倒し、道を切り開き――。

果てには聖女の全ての力を奮って、不滅と言われた()()第6代目ユースヴァルド魔王を倒してしまったのだ。


これには国王も大歓喜。聖女であり、また公爵家の令嬢でもあるノア・ライリス令嬢は、国を救った英雄――即ち大聖女へと昇格した。


大聖女となったノアは、元々の婚約者である王太子殿下と結婚し、国母として国を収めていく……はずだった。


そう、はずだったのだ。




◇◇◇



「良くぞ魔王を倒し、帰ってきた」


国王の御膳にて。ノア・ライリス大聖女は、ただ静かに頭を下げていた。


『あれが国を救った大聖女……?ボロボロじゃない……』

『目が……足が……』


ひそひそと聞こえるノアへの蔑み。

ノアに向けられる民の視線は、国の英雄を見るような目ではなかった。


しかしそれも仕方の無いことだった。


ノアは片目が潰れ、黒の眼帯をつけていた。右足は膝から下が無く木の棒で支えられている。


それは少なくとも、可憐で美しい“ノア公爵令嬢”の姿ではなかった。

その光景は、魔王軍が壊滅し平和ボケしていた国民達にとって、信じられないことだった。



「……ノア大聖女。その怪我は……?」


国王が恐る恐る聞くと、ノアは顔をあげた。


「はい。魔王との戦いの際に負ったものでございます。しかし右目は残っておりますゆえ、問題はございません」


その声は淡々と、それでいて冷気さえ感じられた。冷たく疲労を帯びたその瞳に、大聖堂が静かになる。


「その怪我は……治せないものなのか」

「はっ。この傷は魔王の魔力を帯びております。現在の回復魔法では不完全かと」


魔族により傷つけられた部位は、特殊な魔力を帯びることにより治療が出来ない。

それが高位な魔族ほど、傷は残りやすくなるのだ。


魔王の……それも本気の魔力を浴びたノアの傷は、一生物になってしまうだろう。


その事は、国王も民も分かっていた。


「やはりそうか……」


国王は苦渋の顔をし、隣に控えていた王太子殿下に何かを耳打ちした。

ユリウス王太子殿下はいつも通りの無表情で、ノアの前へと立つ。


そして次の瞬間、誰もが信じられないような言葉を放った。





「ノア・ライリス大聖女。貴女との婚約を破棄します」





ざわりと大聖堂の空気が震える。


散々国に尽くし、体を痛めた聖女との婚約を、破棄。これには後ろに控えていたクルリカ隊員たちも怒りを露わにしていた。


「お待ちください!なぜノア様に婚約破棄を言い渡すのですか!ノア様は国を救った英雄、それも大聖女です。婚約破棄をする利点など、無いではありませんか!」


クルリカ隊副隊長、ケール聖騎士が声を荒らげる。その言葉に、周りの民達は賛同していた。


「静粛に」


国王は騒然とする大聖堂を静めると、とある一人の女性を前に上がらせた。


その女性は、真っ白な髪にきめ細やかな肌――傷だらけのノアとは、対称的な存在だった。

ユリウス王太子殿下が女性の手を取る。そして、手を掲げとんでもないことを宣言した。


「彼女……アリス・ルイーザ伯爵令嬢こそ、新しい聖女である」


カクヨム様にて最新話から掲示させて貰っています

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