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緋色のスティック  作者: ぱっち8
第6章
64/76

第63話「一閃」


SO戦 開始 


両チームが最終確認を行っていた。


「SO戦のメンバーはどうしますか?」


緋色がベンチで尋ねる。



「そうね、県大会と同じで行きましょう。順番は緋色くん、焔くん、照くんの順にします。」


みち先生がが答える。



「おっしゃー!ぜってー勝つぞ!」


照がチームに檄を入れる。


県大会でのSO戦。あの時の経験が、今こそ活かされる時だった。




一方、陽翔院中も最終確認を終えていた。


「水野、和良、眞仲。この3人で行く」


陽翔院中の監督が指示を出す。



「プレッシャーに負けるな。俺たちの方が強い!!」


キャプテンの浦崎がチームに声をかける。


---


「ピピ。監督さんオーダーをお願いします。…わかりました。」


「3人ずつで行います。コイントスの結果、成磐中の先攻です」


審判が声をかけ、SO戦の準備が整った。



観客席の緊張感が最高潮に達していた。


「いよいよSO戦だ!全国ベスト8をかけた運命の一戦!まさか陽翔院中がSO戦まで行くなんて…」


観客席からは驚きの声が響く。




成磐中 vs 陽翔院中


成磐中 ①相原 緋色 ②駿河 焔 ③朝比奈 照

陽翔院中 ①水野 流 ②和良 有兎 ③眞仲 元己


‐‐‐


成磐中 1本目 緋色 vs 浦崎



緋色がボールをセットすると浦崎をじっと見つめる。


(まずは先制して、チームに勢いを与える!)


「緋色ーーー!決まるぞー!リラックスなー!」「決まるぞ―――!」「落ち着いて――!」


照や周りの応援が聞こえる。


緋色は少し笑い深呼吸をする。県大会でのSO戦を思い出す。


(落ち着いて。いつものように)



浦崎はゆっくりとゴールの中に入り、ラインに立つ。


(さっきは完全に崩された。だが、SO戦は別だ。)


ゴールポストを1回軽くたたき、レガードを強く2回たたく。


「…よしっ!!」




ピッ!


緋色がドリブルを開始。浦崎も飛びだし慎重に間合いを測る。


緋色は金色の光を頼りに、左に仕掛けると見せて右に切り返す。


浦崎が慌てずについてくるが、緋色の動きの方が一瞬早い。


浦崎がシュートを防ぐため大きな体を使い手を伸ばし飛ぶが、緋色はさらにもう1歩右にズレてGKをかわしシュートを放つ。


ボールはゴール吸い込まれていった。



ピピィーーー!



「決まった!緋色がまずは決めた!!」


浦崎は悔しそうに地面を見つめるがすぐに前を向いた。


「ちっ...まぁいい。まだ始まったばかりだ」


成磐中  1-0 陽翔院中


---


陽翔院中 1本目 水野 vs 蒼



水野が構えると会場の注目が集まる。


(ここを止めたら流れをもって来れる!…冷静にいこう)


蒼が大きく構え、心を落ち着ける。



ピッ!


水野は少し左に進みながらGK蒼に近づくと反転。蒼に背を向けるとそこから急加速してフォアターン。


一気にスピードを上げ蒼の足元を抜こうとした。



「やった…予測通り!止めれる!!」


蒼が反応し運よくレガードに当たり、シュートボールが弾かれた。


「よっし…!!」


「あぁ!!…だがまだボールがすぐそこに残ってる!!」


観客の声よりも速く、水野が動いていた。


「まだだ!!まだ間に合う!」

 

ピ――――!!  ゴン!!


「おおおーーーーー!!入った!?どっちだ!?」


だが無情にも先に6秒の笛が鳴り、ノーゴールとなった。


「くそっ入ったと思ったのに…みんなすまない…」


水野がうなだれてチームのもとに帰っていく。



成磐中 1-0 陽翔院中  


‐‐‐

 

成磐中 2人目 焔 vs 浦崎



焔は落ち着いていた。


(今日は思ってる以上にドリブルのタッチの調子がいい。絶対行ける!)


「焔!!決めれるぞー!」


ベンチから歓声が上がる。



同じルーティーンを終え、浦崎が構える。



ピッ!


焔はなんとスタートからボールを浮かせ、ドリブルを開始。


「おおーーーー!何だあれ!!」


観客が叫ぶ


浦崎はいち早く気付きダッシュで焔に詰めるが、焔はサークルに入った瞬間ボールを浮かせシュートを放つ。


「くそっ!!!……こいつ1年のくせになんてスキルだっ!!!」


浦崎は必死に手を伸ばすがタイミングが合わず、焔のシュートはきれいな放物線を描きゴールへと吸い込まれていった。



ピピ―――!!



「うわーーーーー!!なんだあれ!!上手すぎるだろ―――!!」


静寂に包まれていた会場が一気に盛り上がる。


「よっしゃーーーー!!やっぱすげーあいつ!天才かー!!」


成磐中は焔のスーパーゴールに抱き合って喜びあう

 


成磐中 2-0 陽翔院中 


‐‐‐


陽翔院中 2人目 和良 vs 蒼



(こんなところで負けてられない。スピードで勝負だ)


ピッ!


和良の爆発的なスピードが蒼を翻弄する。


「くそっ!!速い!!」



シンプルに左右に揺さぶりをかけ、最後は左上に強烈なリバースシュート。


蒼が懸命に手を伸ばすが、ボールはゴールに吸い込まれる。



ピピーーー!



「和良は決めた! 1点差に詰め寄った!」


成磐中 2-1 陽翔院中 


---


成磐中 3人目 照 vs 浦崎



会場の緊張感が極限に達する。照が決めたら成磐中の勝利が確定する圧倒的に有利な状況。


照がボールを置く。県大会では決めた重要な一戦。


「よっしゃーーー!主役に任せとけー!」



しかし浦崎は冷静さを保っている。


(こういう時こそ気持ちが大事だ…絶対に止める!)


いつものルーティーンにも気合が入る。



ピッ!



照の豪快なドリブルが始まる。眞仲が冷静に照のドリブルを見ている。


照が右に仕掛けると見せて、左に切り返す。シュートモーションに入る。


その瞬間、浦崎のスティックが伸びてきた。


「もらった!!」



シュートが放たれる寸前に浦崎が神反応。ボールをコートからはじき出した。


「うげーーーー!!まじかーー!?」


照の叫びとは裏腹に会場が盛り上がる。


「止めたーーー!浦崎がSO戦で初のセーブ!これでまだわからんぞ!!」



成磐中 2-1 陽翔院中


‐‐‐



陽翔院中 3人目 眞仲 vs 蒼



「よし、ここで止めて決めてやる!」


蒼が気合をいれゴールに向かう。



(ここで決めれば同点。冷静に行こう)


眞仲は静かにスタートの合図を待った。



ピッ!



眞仲がドリブルで蒼に迫る。


左右の揺さぶりから、最後は青の足が揃う間もなく右下への正確なシュート。


蒼は反応できず、一瞬で決められてしまった。


(なんて冷静なんだ…コースが絶妙すぎる!)


蒼はなすすべなく決められる。



ピピーーー!



「眞仲も決めた!これで同点!」


成磐中 2-2 陽翔院中



SO戦は2-2で終了。サドンデスへ突入する。



---



「延長戦はサドンデス方式です。点差がついた時点で終わりです。攻守交替、陽翔院中からです。」


陽翔院中 サドンデス1人目 和良 vs 蒼。



和良が再びボールを置く。先ほどはスピード勝負をし掛けてきた和良。


(さっきまでとプレッシャーが違う…!でも、負けられない!)


蒼が自分を励ます。


ピッ!


和良が先ほどと同じようにドリブルを開始。和良がスピードを活かしてくる。


(さっきは、左右に振ってからのリバースシュートだった…)


蒼は焦る気持ちを抑え冷静に和良の動きを見ていた。


右に仕掛けるフェイントの後、同じようにリバースの構え。


「同じことは2回もやらせない!!」


和良はシュートを放つが、蒼が反応し好セーブ。ボールをはじき返した。


「止めた!GKが和良を止めたーーー!」


会場が盛り上がる。



陽翔院中 2-2 成磐中

     0‐0

ーーー


成磐中 サドンデス1人目 緋色 vs 浦崎


(ここで決めれば僕たちの勝ちだ…!)


緋色に勝利への重圧がかかる。


ピッ!


緋色のドリブルが始まるが、緊張からかいつもの光が現れない。


プレッシャーが緋色の動きを鈍らせていた。


「でも1v1だ!決めて見せる!」


浦崎をひきつけ今度は左に切り込みシュートを放つ。 …が、浦崎は冷静に対応。



「イージーだな!!これじゃ入らんぞ!」


浦崎が大きくガッツポーズ


「浦崎が止めたーーー!延長戦はまだ続く!」



サドンデス1人目はどちらも得点できず。両者無得点のまま次へ。


陽翔院中 2-2 成磐中

     0‐0


---



サドンデス2人目 眞仲 vs 蒼



眞仲が再度ボールを置く。さっきも決めているため余裕がある。


(ここで決めてプレッシャーをかける!!)


眞仲の目に強い意志が宿る。


ピッ!


眞仲は先ほどと同じように左右にボールを動かしながら冷静にゴールに迫る。


(この人は僕の動きを見て狙ってる…我慢だ…)


先ほどは違い蒼が飛び出さず低い体制で迫ってくる。


(…ちっ!!思ったより出てこない…!?まずい…!)


先ほどと対応を変えた蒼に、スピードをつけずに向かっていた眞仲は焦る。


SOはルール上、6秒以内でゴールにならなければならない。


一気にスピードを上げた眞仲にも冷静にシュートコースを消す蒼。



ピ――――!



シュート体制に入っていものの、間に合わず眞仲がまさかの失敗。


「うわーーー!!!あの眞仲が打ちきれない!?凄いぞ成磐中のGK!!2人とも止めた!!」



陽翔院中 2-2 成磐中

     0‐0


‐‐‐


成磐中 サドンデス2人目


「よっしゃーーーー!!今度こそ……今度こそ決めちゃる!!!!」


意気揚々と出てきたのは照だった。


「今まで勝ててきたのは間違いなく照くんのおかげよ。勝っても負けても文句ないわ!決めておいで!」


みち先生の言葉に照は興奮気味にボールをセットする。


ピッ!



照笛が鳴ると勢い良くサークルに入りそのまま豪快なシュートを放つ。


「なっ!!?」


浦崎が反応するが、コースが完璧だった。


ピピィーーーーー!


「しゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


今までのうっ憤を晴らすかのような豪快なシュート一閃。さすがの浦崎も動けずあっけない幕切れとなった。


「決まったーーー!照が決めた!成磐中の勝ちよーー!」


成磐中の応援席が大盛り上がり、選手たちはピッチに飛び出してるの元へ飛びついた。


「やったー!ベスト8だ!さすが照先輩ーー!!」


他の観客席からも大歓声と拍手に包まれる。



---



試合後、両チームの選手たちが握手を交わす。


「いい試合だった。ひりひりした試合は楽しいぜ。」


眞仲が緋色に声をかける。


「眞仲さん。ありがとうございました。陽翔院中相手にSO戦まで行けるとは思いませんでした」


「何言ってるんだ、勝ったのはお前たちだろ?成磐中のチームワークは本物だな。次も頑張れよ。」


蒼が走って浦崎に声をかける。


「とても勉強になりました!ありがとうございました!」


「君のセーブもよかったよ。今日はやられたな。」



互いの健闘を讃え合う両チーム。


全国レベルの戦いを経て、成磐中はまた一回り成長していた。



---



「みんな、お疲れさまでした」


みち先生が選手たちを集める。


「準々決勝を勝ち抜いて、全国ベスト8です」


「でも、次の相手も強いわ。今日の気持ちのまま気を引き締めていきましょう」


緋色が空を見上げる。


陽翔院中という強豪を破れた。でも、これはまだ通過点でしかない。


準決勝の相手は加来偉中。河合瞬という全国屈指のストライカーを擁する攻撃力最強クラスの相手。


「次は加来偉中か...」


緋色の胸に、新たな挑戦への期待と不安が同時に宿っていた。


しかし、今は素直に喜びたい。


全国ベスト8。


緋色が空に向かって呟いた時、仲間たちの温かい声援に包まれていた。


また新たな戦いが待っている。

全国ベスト8進出。

ついに、緋色たちは「強豪を打ち破った」という、ひとつの結果を手にしました。


SO戦——そこに詰め込まれていたのは、ただの点差や勝敗じゃなく、

「誰かの想いを受け取り、それを“ゴール”に変えようとする心」だったと思っています。


1人じゃ勝てない。

でも一緒なら、重たいプレッシャーだって超えられる。


そんな一歩一歩を、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。


 


そして、もしこの物語を「応援したい」「本で読みたい」と少しでも感じていただけた方へ、

いま『緋色のスティック』を一冊の本にするためのクラウドファンディングに挑戦しています。


プロジェクト詳細はこちらです:

https://camp-fire.jp/projects/884214/view?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_projects_show


今はまだ静かなスタートですが、

1件1件の応援コメントや支援が、大きな励みと背中押しになります。

※ご無理ない範囲で/覗き見だけでも、もちろん大歓迎です!


 


次は、準決勝。

あの“河合瞬”率いる加来偉中が相手です。


きっとまた、とんでもない試合になる気がしています。


引き続き、緋色たちの物語を見守っていただけたら嬉しいです!

次回もよろしくお願いします!


―――ぱっち8

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