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緋色のスティック  作者: ぱっち8
第6章
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56/84

第55話「それぞれの初戦」


朝11時半



第1試合。


成磐中学校の選手たちは円陣を組んでいた。


「よし、いよいよ全国大会初戦だ!」


みち先生が穏やかに、しかし力強く言った。


「相手は近畿4位の火宇根中。堅実な守備と速攻が売りのチームです」


「任せとけーー!俺が点取っちゃるけん!」


照がいつもの調子で胸を叩く。


「僕、緊張してきました……」


焔が正直に言うと、緋色が肩に手を置いた。


「大丈夫、焔はいつも通りやれば必ず通用するから」



ーーー



試合開始


ピーッ!


試合開始のホイッスルが鳴った。


火宇根中のボールでスタート。


「落ち着いていこう!」


緋色が声をかけるが、全国大会の雰囲気に飲まれているのか、成磐中の動きが硬い。



開始3分、火宇根中の速攻。


素早いパス回しから、FWがシュート。


「くっ!」


蒼が反応するも、ボールはポストに当たり運悪くゴールに吸い込まれた。


0-1


「しまった……」


焔が悔しそうにつぶやく。




観客席には、岐阜日夕館中学校の選手たちの姿があった。


「篠原先輩、成磐中ってどんなチームですか?」


2年生FWの桜 虎徹 (さくら こてつ)が、3年生エースの篠原 翔馬 (しのはら しょうま)に聞く。


「中国大会準優勝のチームだな。パンフレットには8番と9番に注目って書いてあるな」


篠原は冷静に答える。


隣で、同じく3年生DFの堀田 鉄平 (ほった てっぺい)がコートを見つめていた。


「守備陣も悪くなさそうだ。あの3番の選手、けっこう動きがいいな」


2年生MFの織田 翼 (おだ つばさ)も真剣な表情で観戦している。


「8番は同じ2年生か…負けられないね」



第1クォーター中盤


「みんな、落ち着いて!練習してきたことをやれば大丈夫よ!」


みち先生が声をかける。


「そうじゃ!みんなびびってどうする!せっかくの全国じゃ、楽しもうで――!」


照の言葉で、チームの表情が変わった。


緋色のパスが正確に通り始める。


「よっしゃー!ナイスパス!」


照が受けて、強烈なシュート!


GKが弾いたところを焔が詰める。


1-1


「ナイッシューー!」


第2クォーターに入ると、成磐中が完全にペースを掴んだ。


焔の3Dドリブルが火宇根中の守備を翻弄する。


「すごい、1年生であのテクニック……やばいな」


観客席で虎徹が驚く。


焔がDFを抜き去り、サイドに広がっていた緋色へパス。


緋色は冷静に照にスルーパス。


「もらったでー!」


照が豪快にゴール!


2-1



ーーー




同じ時刻、隣のコートではCグループの注目の一戦が行われていた。


海衛学園 vs 涌陽中


北村凜太郎と藍・ウォール・功多。


二人のDFが激突していた。


「行くぞ!」


涌陽中のFWが突破を試みる。


凜太郎は相手の動きを完璧に読み、的確なポジショニングでコースを塞ぐ。


「読まれてる……」


ボールを奪った凜太郎は、素早く前線へパス。


「ナイス、凜太郎!」


海衛学園が攻め込む。


しかし、中央には功多が構えていた。


一人で中央全域をカバーする圧倒的な守備範囲。


「通さない」


功多の冷静な声。


FWが仕掛けるも、功多の長い手が伸び簡単にインターセプト。


第3クォーター、涌陽中がPCペナルティコーナーを獲得。


功多がフリッカーとして構える。


「止めるぞ!」「おう!」


凜太郎が1番騎*としてゴールの中に立つ。

*PC時は守備側は3人(6人制)+GKがゴールの中から守備。ボールが攻撃側のパサーから出された瞬間から守備ができる。必ず顔面をメットで保護しないといけない。


功多の強烈なフリック!


しかし、凜太郎がスティックで弾きシュートを防いだ。


「ナイス凜太朗!!」


試合終了。


海衛学園 0-0 涌陽中


両チーム無得点だが、内容は濃密な守備の応酬だった。


「聞いていた通りのとても良い守備だった」


功多が握手を求める。


「君もね。一人であれだけのエリアを守れるなんて…すごいよ」


「でも、チームで守る君たちのスタイルも厄介だったよ。参考になる!」


「また戦ってみたいな、今度こそ勝つ!」


「ああ、俺の方こそ!」


凜太郎の言葉に、功多はうなずきお互いを認め合っていた。



ーーー


場面は戻って成磐中の試合。


第3クォーター、緋色が一瞬の隙を突き焔へのパス。


完璧なタイミングでのスルーパスになり焔が冷静に流し込む。


3-1


ブーーッ!


試合終了のホーンが鳴った。


「よっしゃー!全国初勝利じゃー!」


照が叫ぶ。


観客席の岐阜日夕館中の4人が立ち上がる。


「へぇ…面白いチームだな」


篠原が言う。


「8番が司令塔かな。こいつらとの試合は楽しみだ」


虎徹が緋色を見つめていた。




昼食後、成磐中のメンバーは午後の試合に向けて準備をしていた。


「次は岐阜日夕館中か」


蒼が資料を見ながら言う。


「東海1位……去年のベスト8」


「まず相手の試合を見に行こう」


緋色の提案で、みんなで観戦に向かった。




午後2時


岐阜日夕館中 vs 火宇根中の試合が始まった。


開始30秒。


岐阜日夕館中の3年生FW・篠原 翔馬が動いた。


華麗なドリブルで2人を抜き去り、冷静にゴールを決める。


1-0


「え、はやっ!」


焔が驚きの声を上げる。


「あれがこのチームのエース……」


緋色も衝撃を受けた。


第1クォーター終了時、すでに2-0。


篠原の1点と、2年生FW・桜 虎徹のゴール。


「あいつ、僕と同い年……」


緋色が虎徹の動きに驚愕する。



第2クォーター


3年生DF・堀田 鉄平を中心とした守備陣が、火宇根中の攻撃を完全にシャットアウト。


「全然前に通らない……」


塁斗が呟く。


そしてカウンターから虎徹が2点目。


3-0


「やべぇなこりゃ……」


照も珍しく不安そうな顔をしている。



第3クォーター


2年生の織田 翼がMFとして試合をコントロールする。


最後は篠原への完璧なアシストから4点目。


4-0


完封勝利。


「思った以上に強いチームだ……」


蒼が驚きの声を上げた。



ーーー



観客席を立つ時、緋色は岐阜日夕館中の選手たちと目が合った。


篠原が軽く頷き、虎徹は挑戦的な笑みを浮かべた。


「緋色先輩……」


焔が心配そうに声をかける。


「大丈夫。でも、相当強いね気を引き締めていかなきゃ。」


チームテントに戻り、みち先生が話し始める。


「見ての通り、相当な強豪です。でも―」


「でも、僕たちにもチャンスはある」


緋色が言葉を継ぐ。


「僕たちは颯真とも戦った。中国大会準優勝チームだ」


「そうじゃ!ビビってたまるか!」


照の言葉で、みんなが気合を入れ直す。


午後4時半。


グラウンドに向かう途中、虎徹とすれ違った。


「楽しみにしてたよ、8番」


「……僕も!」


緋色は覚悟を決めて答えた。


コートに立つ両チーム。


審判がコイントスを行い、岐阜日夕館中のボールに決まった。


(東海1位 岐阜日夕館中……でも、負けるなんて決まってない!僕たちが勝つ!)


審判がホイッスルを口に当てる。


全国大会グループリーグ最大の山場が、今始まろうとしていた。



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