表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋色のスティック  作者: ぱっち8
第6章
56/78

第55話「それぞれの初戦」


朝11時半



第1試合。


成磐中学校の選手たちは円陣を組んでいた。


「よし、いよいよ全国大会初戦だ!」


みち先生が穏やかに、しかし力強く言った。


「相手は近畿4位の火宇根中。堅実な守備と速攻が売りのチームです」


「任せとけーー!俺が点取っちゃるけん!」


照がいつもの調子で胸を叩く。


「僕、緊張してきました……」


焔が正直に言うと、緋色が肩に手を置いた。


「大丈夫、焔はいつも通りやれば必ず通用するから」



ーーー



試合開始


ピーッ!


試合開始のホイッスルが鳴った。


火宇根中のボールでスタート。


「落ち着いていこう!」


緋色が声をかけるが、全国大会の雰囲気に飲まれているのか、成磐中の動きが硬い。



開始3分、火宇根中の速攻。


素早いパス回しから、FWがシュート。


「くっ!」


蒼が反応するも、ボールはポストに当たり運悪くゴールに吸い込まれた。


0-1


「しまった……」


焔が悔しそうにつぶやく。




観客席には、岐阜日夕館中学校の選手たちの姿があった。


「篠原先輩、成磐中ってどんなチームですか?」


2年生FWの桜 虎徹 (さくら こてつ)が、3年生エースの篠原 翔馬 (しのはら しょうま)に聞く。


「中国大会準優勝のチームだな。パンフレットには8番と9番に注目って書いてあるな」


篠原は冷静に答える。


隣で、同じく3年生DFの堀田 鉄平 (ほった てっぺい)がコートを見つめていた。


「守備陣も悪くなさそうだ。あの3番の選手、けっこう動きがいいな」


2年生MFの織田 翼 (おだ つばさ)も真剣な表情で観戦している。


「8番は同じ2年生か…負けられないね」



第1クォーター中盤


「みんな、落ち着いて!練習してきたことをやれば大丈夫よ!」


みち先生が声をかける。


「そうじゃ!みんなびびってどうする!せっかくの全国じゃ、楽しもうで――!」


照の言葉で、チームの表情が変わった。


緋色のパスが正確に通り始める。


「よっしゃー!ナイスパス!」


照が受けて、強烈なシュート!


GKが弾いたところを焔が詰める。


1-1


「ナイッシューー!」


第2クォーターに入ると、成磐中が完全にペースを掴んだ。


焔の3Dドリブルが火宇根中の守備を翻弄する。


「すごい、1年生であのテクニック……やばいな」


観客席で虎徹が驚く。


焔がDFを抜き去り、サイドに広がっていた緋色へパス。


緋色は冷静に照にスルーパス。


「もらったでー!」


照が豪快にゴール!


2-1



ーーー




同じ時刻、隣のコートではCグループの注目の一戦が行われていた。


海衛学園 vs 涌陽中


北村凜太郎と藍・ウォール・功多。


二人のDFが激突していた。


「行くぞ!」


涌陽中のFWが突破を試みる。


凜太郎は相手の動きを完璧に読み、的確なポジショニングでコースを塞ぐ。


「読まれてる……」


ボールを奪った凜太郎は、素早く前線へパス。


「ナイス、凜太郎!」


海衛学園が攻め込む。


しかし、中央には功多が構えていた。


一人で中央全域をカバーする圧倒的な守備範囲。


「通さない」


功多の冷静な声。


FWが仕掛けるも、功多の長い手が伸び簡単にインターセプト。


第3クォーター、涌陽中がPCペナルティコーナーを獲得。


功多がフリッカーとして構える。


「止めるぞ!」「おう!」


凜太郎が1番騎*としてゴールの中に立つ。

*PC時は守備側は3人(6人制)+GKがゴールの中から守備。ボールが攻撃側のパサーから出された瞬間から守備ができる。必ず顔面をメットで保護しないといけない。


功多の強烈なフリック!


しかし、凜太郎がスティックで弾きシュートを防いだ。


「ナイス凜太朗!!」


試合終了。


海衛学園 0-0 涌陽中


両チーム無得点だが、内容は濃密な守備の応酬だった。


「聞いていた通りのとても良い守備だった」


功多が握手を求める。


「君もね。一人であれだけのエリアを守れるなんて…すごいよ」


「でも、チームで守る君たちのスタイルも厄介だったよ。参考になる!」


「また戦ってみたいな、今度こそ勝つ!」


「ああ、俺の方こそ!」


凜太郎の言葉に、功多はうなずきお互いを認め合っていた。



ーーー


場面は戻って成磐中の試合。


第3クォーター、緋色が一瞬の隙を突き焔へのパス。


完璧なタイミングでのスルーパスになり焔が冷静に流し込む。


3-1


ブーーッ!


試合終了のホーンが鳴った。


「よっしゃー!全国初勝利じゃー!」


照が叫ぶ。


観客席の岐阜日夕館中の4人が立ち上がる。


「へぇ…面白いチームだな」


篠原が言う。


「8番が司令塔かな。こいつらとの試合は楽しみだ」


虎徹が緋色を見つめていた。




昼食後、成磐中のメンバーは午後の試合に向けて準備をしていた。


「次は岐阜日夕館中か」


蒼が資料を見ながら言う。


「東海1位……去年のベスト8」


「まず相手の試合を見に行こう」


緋色の提案で、みんなで観戦に向かった。




午後2時


岐阜日夕館中 vs 火宇根中の試合が始まった。


開始30秒。


岐阜日夕館中の3年生FW・篠原 翔馬が動いた。


華麗なドリブルで2人を抜き去り、冷静にゴールを決める。


1-0


「え、はやっ!」


焔が驚きの声を上げる。


「あれがこのチームのエース……」


緋色も衝撃を受けた。


第1クォーター終了時、すでに2-0。


篠原の1点と、2年生FW・桜 虎徹のゴール。


「あいつ、僕と同い年……」


緋色が虎徹の動きに驚愕する。



第2クォーター


3年生DF・堀田 鉄平を中心とした守備陣が、火宇根中の攻撃を完全にシャットアウト。


「全然前に通らない……」


塁斗が呟く。


そしてカウンターから虎徹が2点目。


3-0


「やべぇなこりゃ……」


照も珍しく不安そうな顔をしている。



第3クォーター


2年生の織田 翼がMFとして試合をコントロールする。


最後は篠原への完璧なアシストから4点目。


4-0


完封勝利。


「思った以上に強いチームだ……」


蒼が驚きの声を上げた。



ーーー



観客席を立つ時、緋色は岐阜日夕館中の選手たちと目が合った。


篠原が軽く頷き、虎徹は挑戦的な笑みを浮かべた。


「緋色先輩……」


焔が心配そうに声をかける。


「大丈夫。でも、相当強いね気を引き締めていかなきゃ。」


チームテントに戻り、みち先生が話し始める。


「見ての通り、相当な強豪です。でも―」


「でも、僕たちにもチャンスはある」


緋色が言葉を継ぐ。


「僕たちは颯真とも戦った。中国大会準優勝チームだ」


「そうじゃ!ビビってたまるか!」


照の言葉で、みんなが気合を入れ直す。


午後4時半。


グラウンドに向かう途中、虎徹とすれ違った。


「楽しみにしてたよ、8番」


「……僕も!」


緋色は覚悟を決めて答えた。


コートに立つ両チーム。


審判がコイントスを行い、岐阜日夕館中のボールに決まった。


(東海1位 岐阜日夕館中……でも、負けるなんて決まってない!僕たちが勝つ!)


審判がホイッスルを口に当てる。


全国大会グループリーグ最大の山場が、今始まろうとしていた。



ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


全国大会、始まりました。


勝てた初戦、圧倒的な強さを見せつけてきた次戦の相手。

緋色たちはひとつ扉を開けて、また新しい壁の前に立っています。


でも彼らは、立ち止まりません。

照が叫び、焔が突破し、緋色が仲間を見て進む――

そんな、ひとりじゃない戦いが始まっています。


そして、今日までこの物語を書き続けて来られたのは、

読んでくださる皆さんのおかげです。


いま、この物語を「本という形で届けたい」と考え、

クラウドファンディングに挑戦中です。


【クラウドファンディングページはこちら】

https://camp-fire.jp/projects/884214/view?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_projects_show


もし、緋色たちの物語が

少しでも「ああ、応援したいな」「見届けたいな」と思えるものだったら──


その想いが、彼らの次の一歩になります。


物語の続き、ますます加速していきます。

そして、君の中にもきっとある「1点を決めたい気持ち」。

そのままにせず、一緒に次・次・次へと進んでいけたら嬉しいです。


いつも、ありがとうございます。


──ぱっち8

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ