第3話「一緒に刻む鼓動」
午後の青い人工芝。
太陽が校舎の向こうに傾き始め、練習には絶好の時間帯だった
「よし、アップランニングから始めるぞ!」
キャプテン・誠の号令で、部員たちが人工芝の周りを走り始める。
緋色も列に加わった。
足裏に感じる人工芝の感触、小さく跳ね上がる水しぶき、汗を拭う背中を撫でる校舎の影――
すべてが心地よいリズムを刻んでいる。
「緋色、息切れしてない?」
隣を走る蒼が心配そうに声をかけてくれる。
「だ、大丈夫」
実際は少し息が上がっていたけれど、このリズムが気持ちよくて、もっと走っていたいと思った。
アップが終わると、ベンチ前のホワイトボードに「本日の練習メニュー」が書かれていた。
1.トラップ
2.プッシュパス
3.フォアドリブル
「今日はこの3つをマスターしましょう」
みち先生のデモンストレーションが始まった。
流れるような動きで、ボールが先生のスティックに吸い込まれるようにコントロールされていく。
「すげぇ…」
緋色は思わずつぶやいた。
あんな風に、自分もボールを操れるようになるのだろうか。
「最初はゆっくりでいいからね。リズムが大切よ」
みち先生の言葉を胸に、緋色は練習を始めた。
カツッ、シュッ、カツッ、シュッ――
最初は失敗が続いた。
昨日少しできたと思ったのに、今日はボールが明後日の方向に飛んで行ったり、スティックが空振りしたり。
やっぱりそんなに簡単じゃない。
でも、だんだんと音が変わってくる。
コツッ、シュッ。
気持ちの良い音が響いた時、緋色の胸に小さな達成感が生まれた。
「音が小さくなってきたがん。 上手になった証拠じゃー!」
照がドリブル練習の手を止めて、緋色を見ていた。
「音で分かるんじゃ。最初はカツッカツッって音がするけど、上手になるとコツッ、そして最後は音がしなくなるんじゃ。ボールが優しくスティックに当たっとる証拠じゃな!」
照の説明が分かりやすくて、緋色は思わず笑ってしまった。
30分後、緋色は3つの基本技術をなんとかこなせるようになっていた。
まだまだぎこちないし、10回中3回くらいしか成功しないけれど、確実に上達している手応えがある。
「よし、今度は動きながらやってみよう」
みち先生の次のステップ。
これまでは止まった状態での練習だったけれど、今度は歩きながらのボールコントロールだ。
緋色は深呼吸をして、ゆっくりと歩き始めた。
トラップ、プッシュパス、ドリブル――足を動かしながらだと、全然違う。
止まってる時はできたのに、また失敗ばかり。
でも、諦めたくない。
集中して、集中して――
その瞬間、緋色の視界の隅で、かすかな金色の光がちらりと見えたような気がした。
「えっ?」
振り返ってみたけれど、そこには何もない。でも確かに、何かが光ったような――
「緋色、どうした?」
蒼の声で我に返った。
「あ、…何でもない。」
きっと見間違いだろう。でも、今の感覚は忘れられそうにない。
練習が終わると、部員たちが後片付けを始めた。
緋色も一緒に手伝いながら、今日の練習を振り返る。
まだまだ下手くそだけれど、少しずつ前に進んでいる。
このリズムが続けば、きっといつかは――
「ひいろくん、お疲れさま」
例の少女が話しかけてくれた。
「どうだった? 今日の練習」
「楽しかったです。でも、難しくて。昨日少しできたと思ったのに、今日はまた失敗ばかりで」
「それが普通よ。私も最初はそうだったし」
少女の優しい言葉に、緋色の心が軽くなった。
――このリズムが告げる、緋色の未来とは?
夕日に照らされた青い人工芝に、新しい足跡がまた一つ刻まれた。
第3話、いかがでしたか?
みち先生の流れるような動き、照先輩の的確なアドバイス、
蒼との息の合った練習...
部活動って、こういう「一緒に頑張る楽しさ」が
何より魅力的ですよね。
一人では気づけないことも、仲間がいれば教えてもらえる。
基礎練習も、みんなでやれば楽しくなる。
そんな部活の良さを感じていただけたでしょうか?
緋色の成長を、これからも温かく見守ってください!




