激戦!
激しい爆発音の後、煙が晴れると多くの者が倒れたり膝を着いていたりした。
「現状の把握を急いで!」
ライラ王女とエリザはすぐに動き出した。フレイヤの乗ったタマゴ型のソウル・ガレージは少し高い所に浮いていた。
「エリザ!怪我人の待避を!私とレイが注意を引くわ!」
シオンは柱を駆け登り、ソウル・ガレージのもっと上から斬り付けた。
大きな金属音が響き渡る。
『ちっ!?あれでも死なないなんて!?』
「あいにくと、あの程度のスピードじゃ当たらないのよ」
シオンは懐からアイリスに貰った『とある物』を取り出して、飛び降りると同時に上から叩き付けた。
ベチャッンとタマゴの上側全体に、トリモチがへばり付いた。
「よし!やったわ!」
『な、なによ!これは!?』
ソウル・ガレージは空中で行ったり戻ったり動き回った。
「今のうちに負傷を外に!」
時間を稼いでいる間にフレイヤはまた上部からミサイルを発射しようとしたが、トリモチのせいで発射口が開かなかった。
「狙い通りだね」
レイは隙を見て剣で何度も斬り付けていた。小さな傷しか付けられていない。
しかし───
「エリーゼ!今だ!!!」
「はい!」
エリーゼは水の魔法を放った。
ソウル・ガレージ全体に水が掛かった。
「よし!今はこれでいい。次だ!」
順番に攻撃を仕掛けるが、フレイヤも黙って見ている訳では無かった。まだ下部からワイヤーの腕が出せたので、無作為に暴れまくった。そして、最初に放ったビームの様な攻撃も出してきた。
「あれは溜め動作が長い!みんな避けるんだ!」
2度目のビーム攻撃は結界を張らずに全員が避ける事に成功した。しかし、無作為に振りまくるワイヤーの腕に、避け切れず小さな傷が増えていった。
「ちっ、軌道が読めない」
ソウル・ガレージは空中から攻撃を仕掛けてくる為に、こちらからの攻撃が限定されてしまっていた。
「このっ!」
シオンはまた柱を駆け登り攻撃を仕掛けた。
「ダメだ!シオン!やめ───」
ベチャッ
上部にはトリモチが付いていた為、シオンもそのままくっついた。
「あれ?」
「バカ過ぎるーーーー!!!!!」
頭を抱えたレイに、シオンは逆に冷静だった。
「餅をつく時、水で濡らしてくっつかないようにしてたよね?ヌルっと行くと思ったんだけど?」
「このお馬鹿!トリモチは素材も違うから!」
仲間達から、ばか、バカ、馬鹿と言われるシオン。
「みんなバカ、バカ言い過ぎ!バカっていう方がバカなんだからね!」
シオンはムキーと怒ったが、仲間達はシオンを心配して言っているのだ。
『動けないならこれでも喰らいなさい!』
ほらきた!
ワイヤーの腕がシオンに襲いかかる!?
キランッ!
シオンは向かってきたワイヤーの腕を一閃で切り裂いた。
『えっ?』
これにはフレイヤだけではなく仲間達も驚いた。
「よし!下の下部から生えている腕なら、上に向かって来る時、軌道が読みやすいんだよ」
あっけらかんと言うシオンに仲間達は、それでも唖然とした様子だった。
「そろそろ、決着をつけようか!足が固定されたから必殺技が使えるしね♪」
『ハッタリを言うな!ただの剣にソウル・ガレージを切る事なんてできないわよ!』
シオンは目を瞑り精神を統一した。足元が不安定では放つことのできなかった秘奥義。
エルフの国でドラゴンを一刀両断した技だ。
「秘奥義!刹那の一刀」
シオンが足元に放った。
中にいるフレイヤを気にしてか、タマゴ型の先っぽの切り裂いた。
『ば、バカな!?』
中にはフレイヤの生身の姿が見えた。
するとソウル・ガレージはバチバチと放電を始め墜落した。
「あいたっ!・・・壊れたかな?」
「壊れた隙間から水が入って故障したんだろうね。僕じゃ小さな傷をつけるのが精一杯だったけど」
側にきたレイが水で濡らしながらシオンをトリモチから引っ張り上げた。
フレイヤの生身が目を覚ました。
「・・・まさか、かつての最終兵器がこんな奴らに負けるなんて」
ぐったりと項垂れるフレイヤにレイは言った。
「いや、かなりの兵器だったと思うよ?でも、初めて起動して動かし方がわかってなかっただろう?君が練習して使いこなしていたらヤバかったよ」
そう、今回初めての起動で、ろくなマニュアルもないままで動かしていたのだ。
「だよねー、あのタマゴを高速で動かしたり、もっと高い所から、光線を出されたら倒せなかったよ」
フレイヤは小さく口を動かすとそのまま座り込んで呆然としたままだった。
「エリザ、被害報告は?」
「死者はいません。あの爆発する攻撃に、ジーク王子とライラ王女の騎士達の多くが負傷しましたが、致命傷の者はいませんわ」
「それは良かった」
「後は──」
シオンはフレイヤの前に行くと、ペンダントを見せた。
「あなたを救ったのこの人じゃない?」
シオンの言葉にようやく視点が定まり、ペンダントを見たフレイヤは目を大きく開けて叫んだ。
「こ、この人よ!私達を救ってくれたのは!?」
ペンダントを凝視してずっと見ていた。
「私のママなんだ。最初にそれを言いたかったんだよ~」
!?
「わ、わたし、命の恩人の娘さんに何てことを・・・」
フレイヤは涙を流して地面に頭をつけて泣いた。昔に連れ去られ、何代も渡って奴隷として飼われてきたハーフエルフの呪縛を解いて誇りを取り戻してくれた恩人だ。その感謝の想いは想像以上に大きかったのだ。
「王太子と言い、ネクロス王国の王女様と言い、諸悪の根源って・・・」
「待て、みなまで言うな。あの人が来たらまたカオスになる」
名前を言うと現れるかも知れないから言わないでおこうね。それにあの王太子の様子から現れたら安易に想像がついた。
「取り敢えず、外に出よっか?」
「そうだね。ようやく終わったか」
「でもこれからどうなっていくのかしら?」
まだこの国がどうなっていくのかわからない。
でも、それはここから出てからの話だ。
「レイ、フレイヤさんを背負ってくれる?あの様子じゃ逃げないでしょう」
「わかったよ。って、シオン、何しているの?」
何故かシオンは準備体操をしていた。
「みんなも、急がないと置いていくよ~」
「シオンさんどうしたの?」
「また何かやらかしたの?」
みんなが首を捻った。
「だって、そのタマゴ爆発しそうだもん」
指をさして言った。
一同が振り返るとソウル・ガレージがバチバチと激しく輝いていた。
「「それを早く言え(言いなさい)ーーーーー!!!!!!!バカシオーーーーン!!!!!!」」
全員が全力で走り出すのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
もうすぐ完結なのですが、最後のエンディングで煮詰まっており、次の更新まで少しお待ち下さい。
・ハッピーエンド
・黒幕エンド
・ノーマルエンド(国の建て直し)
どれにするか、ちょっと迷い中。




