対面!
すでに王城には守りの兵士がおらず、シオンを止めるものはいなかったのだが───
「地下の入口ってどこよ~」
「はぁはぁ、待ってください。闇雲に探しても見つかりませんよ。ここは私に任せてください」
シオンは周囲を走り回って探していた。
ようやく追いついたエリーゼが呼び止めたのだ。
呼吸を整えてからエリーゼは魔力探知を行った。
「魔力の流れを感じます。着いてきて下さい」
「うう、先にお願いしとけばよかった」
いつも先走るシオンの悪い癖である。
エリーゼに着いていくと、まず地下牢に入った。
「ここは牢屋?」
「そうですね。脱走できないように地下に作ったようですね」
周囲を警戒しながら進んでいくと、地下牢の廊下の地面にさらに下に降りる階段があった。
「まだ下がある?」
「そうですね。このまま進みますか?それとも援軍を待ちますか?」
「ここまで来たんだし進むよ!」
「はぁ、そういうと思いました。ただし、2人では無理と思ったらすぐに逃げる事。良いですね!」
「はい!エリーゼ姉様の言う通りに!」
と、ノリの良い返事をしながら2人は進んで行った。
階段はかなり深くまで続いており、10階分ほど降りたところで到着した。
「こんなに大きなお城の下にこんな大きな洞窟があるので崩れないのかな?」
「所々に補強の跡がありましたので問題無いかと。ただ、洞窟というよりは遺跡でしょうか?」
大きな鍾乳洞の空間に遺跡と思われる人工物の建物が目の前に存在していた。
ピクッとシオンの気配察知に反応した。
「・・・確かにあの遺跡にはヤバい気配がするね」
「私にも感じますわ。膨大な魔力が集まっています」
「いかにもラスボスがいる感じだけど、流石に2人で突入は止めた方がいいよね?」
「シオンが死にたいならいいですよ?私はここで援軍を待ちますが?」
エリーゼの笑顔が怖かったのでシオンはここで待機することになった。
ただシオンが道草を食っていたおかげで、連合軍の突入部隊もそんなに待たずに到着できたのは行幸だった。
「まさか2人でここまで来ているとは思ってなかったよ」
「レイ、お疲れ様~」
他の人がいるので妖精は姿を消していたが、シオンがいなかったので探していたのだ。ちゃっかりシオンからオヤツをもらっていたりした。
「ここからでもヤバい感じがするから警戒しながら進もう」
ライラ王女やジーク王子を後方にして、シオン達冒険者が先を進んでいく。
遺跡の中に入ると罠もなく一本道ですぐに中核に辿り着いた。
大きな部屋の奥には階段があり高いところに祭壇があった。
「何かの儀式をしているの?」
シオンの呟きに誰も答えなかったが、少しして声が聞こえてきた。
「ついにきたのか・・・」
ゆったりと立ち上がるようにアベル王太子が祭壇から降りてきた。
「お兄様・・?」
「兄上、いったい何をしていたのですか!?」
先ほどの映像と比べ物ならないぐらいに気配が違っていた。
「もうどうでもいい。私を殺すがいい。もう私の願いは叶わないのだから」
目も虚でどこも映して無い状態だった。
「失礼します。僕はAランクハンターのレイと申します。『とあるお方』から貴方の目的を聞きました。貴方はセシリア・アヴァロン王女殿下を蘇らせようとしていたで間違いないですか?」
!?
シオンの仲間達以外知らない情報に、ライラもジークも動揺した。
「嘘でしょ?そんな不可能な事で今まで動いていたの?」
ライラの言葉はまっとうな意見でもあったが、シオン達は不可能でないことを知っていた。
「ライラ王女殿下、それが不可能ではないのですよ。ソウルアーマーの技術を使えばね」
「ど、どういうことよ」
「古代遺跡には人間そっくりのゴーレムが眠っていたそうです。昔は兵器や自分の身代わりにしたのか、容姿を自由に変更できるゴーレムの技術があったそうです。それにソウルアーマーの技術を組み合わせれば、死んだ人間の魂を入れて擬似的に復活できるかもしれないのです」
!?
レイの説明にアベルの目に光が戻った。
「そうだ。魔道技術の優れたネクロス王国の技術提供を受けて、アヴァロン王国中を探しまくって、お目当ての遺跡を見つけて、ようやく全ての準備が整ったというのに・・・セシリア姉さんの魂が戻ってこないんだ。やはり時間が経ち過ぎていたのだろうか?」
自分に言い聞かせるようにアベルは呟いた。
「今となってはこの身に腐った王族の血が流れていないのだ。セシリア姉さんと結婚だってできたというのに・・・」
アベルはガックリと膝を着いて項垂れた。
「拗らせていますわね。このシスコンが!」
エリザは毒舌を吐いた。元婚約者とはいえ命を狙われて、同情の心も尽きたのだろうか?
なんとも言えない空気に、シオンが声を出した。
「はいはい!暗い話はここまでだよ。王太子さん、私を見て下さい」
????
アベルは顔を上げると目をこれでもかと開いて驚愕した。
「う、嘘だ・・・セシリア姉さん?」
ようやくシオンの顔をよく見て認識したのだった。




