逆襲!
ライラ王女が言った言葉はすぐに現実となった。
純粋に国のために参加した者ばかりではない。
利権を求めて参加した貴族も多い。
ジーク王子然り、ライラ王女然りである。
あっちこっちで言い争いが起きた。
「ふざけるな!ジーク王子が立ち上がられるというから参加したのに、このままで参加損ではないか!」
「王子や王女が全て王族ではないとしたらこの国はどうなるのだ!?」
「もうこの国は終わりなんじゃ・・・」
すでに大まかな戦闘は終了しているとはいえ、すでに戦える状態では無かった。
そんな時、さらに悲報が届いた。
「た、大変です!郊外からアンデットの軍勢が押しかけてきました!」
シオンの報告で後方に偵察隊を出していたのが功を奏した。
接近される前に気づけたのである。
「クソッ!どうすれば良いのだ!」
グランフォード公爵の軍は余り混乱も無かったが、他の部隊が足を引っ張りかねない状況だった。
「お父様、当初の目的通り、精鋭を王城に突入させて、他の兵士でアンデットの軍を押さえましょう」
「確かにそれが最善か・・・」
悩んだ挙句にそう決定した。
「仕方がないわね。スネーク騎士団長、あなたや近衛は最後まで私に付いてきてくれるかしら?」
「血筋は関係ございません。私はあなたの風格に惹かれたのですから」
側近の近衛も膝を付いて忠誠を誓った。
「なら、私も王城突入に参加します。この手でお兄様をぶん殴らないと気がすみません!」
ライラ王女は軽装の鎧を着て準備をした。それに感化されてかジーク王子も王城攻略に名を挙げた。
「正直、混乱しているが、自分の目で真実を確かめるよ」
少し口論はあったが自分が王族ではないと知って冷静になっている感じもあった。
「王太子はどこにいると思う?」
少し考えてから意見が出た。
「通常だと謁見の間にある玉座に座っているでしょうけど・・・」
「いや、あの大きな映像の背景が洞窟っぽかったから、恐らく地下だと思う」
首脳陣は念の為に、部隊を2つに分けて玉座と地下に向うことにした。
「いいか、どちらかが空振りの場合はすぐにもう一方に向かうこと」
一同は頷いて行動を開始した。
アンデットの軍が向かってきているので、急いで城門を閉めて、今度は連合軍が城壁に登って弓矢などでアンデット軍を迎撃することになった。浮ついていた兵士達も自分の身の危険を感じて、行動を開始することができた。
こうして、アヴァロン王国の内乱は大詰めを迎えたのである。
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一方その頃、ソウルアーマーの生身の入った棺桶に、剣を刺して止めを刺していたシオンとエリーゼは、みんな遅いなぁ~と、干し肉をもぐもぐしながら待っていたのであった。
「あ、妖精さん、みんなを呼んで来てもらえる?外の状況も知りたいし」
「うん、良いよ~」
シルフィは姿を消して外に向かった。
「本当に外は大丈夫でしょうか?」
「レイがいるし大丈夫だよ。それより王太子はどこにいるのかな?」
う~んとシオンは無い頭で考えた。
「普通は玉座なのですが、さっきの窓から見えた映像では地下では無いでしょうか?」
「地下?」
「エルフの国もそうでしたが、何かと城の地下には秘密の脱出通路など、秘密の部屋が多いので、大規模な魔道具の設置や魔法陣を描いたりできるのですよ」
「秘密の通路!?かっこいい!」
どこかズレているシオンだったが、行動力は人一倍あった。
「よし!行くよ!」
「ええっ!妖精を待たなくて良いんですか!?」
「王太子に逃げられたら大変じゃない。行くよ~」
「ま、待ってくださーい!」
シオンの後をエリーゼは慌てて追うのだった。
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少し遡って───
「クククッ、やはり戦争は良いのぅ♪大量の魂と死体が手に入るからのぅ」
上級魔族のモリガンがオオラン帝国と戦った戦場へ来ていた。
「フレイヤの奴に貸しを作っておくのも良いじゃろうて」
多くの兵士が死んだことで、遺品を取って死体はまとめて埋めてある地面から、次々にアンデットが出てきた。
「これで時間的に王都を攻めている時に背後から襲えるタイミングじゃろう。しかし、この戦の結末、危険じゃが見に行くか?」
シオンの母親に追われている事を知っているモリガンは思案した。
「このままと言う訳にもいかぬし、妾も参戦してみるか」
モリガンは不適な笑みを浮かべて空へと消えた。




