暴露と真実
ソウルアーマーとの激戦の中、急に戦局が動いた。
戦っていたソウルアーマーたちが急に苦しみ出し、次々に倒れていったのだ。
「な、何が起きているの!」
1番取り乱したのはライラ王女だった。
この現象を説明しようとグランフォード公爵がジーク王子を連れてやってきた。
「失礼する。これで戦局が変わる。一度話をしにきた」
「これはどういうことですの?」
公爵はソウルアーマーの構造を説明した。
「・・・なるほど。生身の本体の場所を探して、本人を倒していったと?」
「前回の防衛戦でもそれで倒せましたのでね」
ライラは表情には出さなかったが歯ぎしりをした。
これで戦功がグランフォード公爵に奪われたからだ。
「王城の突入は各部隊の精鋭を混成して突入しようと提案しにきた」
「・・・どういう事です?」
「各部隊の混成部隊なら後から揉めることは少ないのでは判断した」
なるほど。
お兄様を捕まえるのが誰なのか言い訳もできるという訳ね。
ライラは素早く計算するとその案を承諾した。
しかし連合軍が部隊を編成している時にそれは起きた。
『あーあー、聞こえているか?見えているだろうか?』
王城の上空に現代でいう所の大きな立体映像が現れた。
『私はこの国の王太子だったアベル・アヴァロンだ。みなに今こそ真実を伝える。その真実を聞きた上で私の首を取るがいい』
ざわざわ
ざわざわ
王太子の幻の映像に連合軍は取り乱した。
それでもアベル王太子は話し続ける。
『まず、国王である父と現王妃であった母は死んだ。父は毒で、母は私が処刑した』
騒ぎはより大きくなった。
『まず勘違いしないで欲しいのは国王に毒を盛っていたのは母である王妃であった。精力剤と偽り、中毒性のある魔法薬を飲ませ続けて、父の正常な意識を奪い毒殺した。だから私は罪人として王妃を処刑した』
連合軍も殆どの兵士が立体映像に釘付けになっていた。
『さて、ここからがもっと重要なことがある。ここ最近の私の愚行に、多くの民や命令を聞いていた騎士団の不満が出ており、今回の内乱になったのは弁解の余地もない。ただどうしても見付けなければならない遺跡があったのだ。謝罪はこの後しよう。どうか最後まで聞いて欲しい』
アベル王太子は一区切り間をおいてから話した。
『私が見付けたかった遺跡はアヴァロン王家の者しか入れない秘密の遺跡があると、王太子教育の時に聞いていたのだが、父はすでに話せる状態ではなく、いや、話せるが正気を保っていなく、手探りで探すしか無かったのだ。そして、その遺跡は王家の血を台座に捧げないと入口が開かないのだ』
ここまでは何を言っているんだ?と多くの者が首を傾げた。
しかしライラとジークは思い当たることがあるのか真っ青になった。
「まずいは!早くお兄様を止めないと!?」
「ライラ王女殿下、無理です。間に合いません」
王太子は王城のどこかにいるだろうが今から向かっても会話を止めることができない。
『結論から言おう。私、アベル、ジーク、ライラは国王の血を引いていない』
!?
爆弾発言だった。
『我々は1年に一度、身体検査を行なっている。毒など盛られていないか確認するためだ。その時、血液検査のため血も少し抜くのだが、その保管してあった血液を使い遺跡に入ろうとしたが扉は開かなかった。故に、王妃を拷問したら吐いたよ。父と似た容姿の騎士の1人と関係を結んで子を成したと。父は薬で正常な判断ができなくなっていたので、目の色が金色でなくとも気にしなかったらしい。王妃の白状した音声も魔道具で録音して保存してある』
アベルは王妃の声らしきものを再生して、今いったことが事実だと促した。喋っている王妃は涙目で死にたくないと必死で喋っていたことが真実味を見せた。
『私は薄々と王家の血が入っていないのではと思い、秘密裏に証明できる方法を探していたのだ。父が死んだことで王家の血は絶えた。いや、我々の王子や王女みたいに、まったく王家の血が入っていない者より、薄くとも王家の血筋が入っているグランフォード公爵家が、統治するのが正当であろう』
ライラは震えていた。
そうライラも知っていたのだ。自分が国王の血を引いてない事を。だからこの国をメチャクチャにしてやろうと思ったのだが、その要因の一つが暴露された。これでは誰も自分に付いてきてくれない。認めてくれない!
完全にやられた!?
真っ青になって震えた。
ジークはまったくの予想外のことに呆然としていた。
『──私からの話は以上だ。現時点を持って王家の血を引いていない私は王太子を降りることになる。国を混乱させた罪で私を殺したいのなら王城に攻め込むかが良い。私は逃げも隠れもしない。ただし、抵抗はさせてもらう。まだやるべきことがあるのでな』
アベル王太子、いや元王太子の映像は消えた。
ざわざわと連合軍は大騒ぎになった。
「はぁ、まさかお兄様が暴露するとはね」
ライラの呟きにジークは驚いた顔をした。
「ライラは気づいていたのか?」
「ええ、女には女の情報網がありますので」
ジークは頭を抱えた。
「よくそれで王位を求めたな」
「そもそも。この国が建国されて100年も経っていないわ。元は代表の貴族が王位についただけじゃない。少なくとも貴族の血さえ引いていれば誰でも王様になれる権利はあるわよ」
吹っ切れたライラの言葉に唖然とした。
「でも、この時に暴露されたのはやられたわ。連合軍が崩壊するわよ」
ライラの言葉が現実になるのは数刻後であった。




