王都包囲!
鉱山の街で一泊したシオン達はカミーユさんに挨拶をして、王都に向けて出発した。
「久々にグーちゃんに馬車引いてもらえるね」
『マスター飛ばしてもいいの?』
グーちゃんの手綱を握りながらそこそこの速度で街道を走った。
オオラン帝国を退けたが、混乱を招いた王太子の廃嫡の話は国中に広まっていた。おそらく、ライラ王女やグランフォード公爵が広めたのだろう。王都から逃げ出す人が多いみたいだ。街道でも王都から荷物を持って逃げてくる人が多かった。スピードが出せなかったのも通行人が多いからもあった。
数日かけて移動して、王都が見渡せる丘の上に着いた。
「すでにライラ王女が簡易の陣を作っているね」
軍の駐屯する場所を、木材で作った城壁の様な壁がくられていた。
「準備がいいな。すでに木材を切って準備していたのか・・・」
「今後の展開を読んでいたかもね」
馬車を止めて相談した。
「ねぇ、みんなで連合軍の所に行くんじゃなくて二手に分かれない?王都から脱出している民間人に紛れば、簡単に入れると思うけど?」
「シオンにしてはいい案だね。僕も賛成だよ。最悪、内部に入った仲間がソウルアーマーを無力化すれば被害を最小限に抑えられる」
「でも生身の寝ている棺桶の場所はどうやって探す?」
「それは姿を消せる妖精さんにお願いすればいいよ。お願いできる?」
『うん!頑張るの!』
妖精のシルフがやる気満々だった。
「エリザは連合軍に居てもらわないとライラ王女が怪しむから、エリザと僕は連合軍に行くよ」
「それなら私も連合軍に行くよ。自慢の兵器で撹乱するから」
レイとアイリス、エリザが連合軍へ行くらしい。
「なら私がシオンさんを魔法で援護しますね」
エリーゼがシオンと一緒に行くことになった。
「よろしくね」
「こちらこそ。頑張りますわ!」
ようやくシオンに国を救ってくれた借りを返せるとエリーゼもやる気に満ちていた。
こうしてシオン達は二手に分かれることになった。
シオンの方は拍子抜けするほど簡単に潜入できた。門番はいたが、王都から出て行く民が多く、敵の軍しか見てない様だった。
「どうして民が逃げるのを止めないんだろう?」
「人が少なくなれば食料の消費も抑えられますから」
「あ、なるほど!」
「それにシオンのお母様のお話ですと王太子は目的を達成したら後はどうでもいい様ですからね。為政者としては失格ですわ」
同じ王族として、為政者としてエリーゼは民を蔑ろにした王太子を許せなかった。
「各都市の軍が集まるまで数日は掛かるでしょう。適当に宿を取って様子を見ようか」
「はい、わかりましたわ」
シオンとエリーゼは身を潜めるのだった。
一方、連合軍の方は忙しかった。
「ライラ王女殿下、数日ぶりですわね」
「エリザさん、到着お待ちしておりましたわ。簡易テントで申し訳ないのですが座ってください」
エリザ達は椅子に座ると話を聞いた。
「随分と準備がよろしいのですね。短期間でこれほどの陣を築くなんて」
「備えあればなんとやらですわ。あらかじめお兄様の動向は探っておりましたので」
バチバチと息の詰まる話し合いが始まった。
「質問を失礼致します。王都からの敵襲はあったのでしょうか?」
レイが横から質問した。
「・・・そうですわね。一度、ありましたわ。でも我が軍の精鋭が倒せないまでも被害ゼロで追い払うことができました」
!?
『あのソウルアーマーを被害ゼロで?ブラフか?』
「よく、あの『フルアーマー』の部隊を撃退できましたね。オオラン帝国は数百だけで壊滅的損害を受けたのに」
「うふふ、私どもも切り札を持っているのですわ。詳しくは言えませんが」
含みのある言い方で発言権を取らせない様に言ってくる。
「先に言っておきましょう。お兄様の持っている古代兵器、ソウルアーマーと呼ばれる鎧のアーティファクトは我々の部隊が引き付けます。並の兵では被害が増えるだけですので」
「ソウルアーマーですか。確かにあの魔道兵器を抑えれるなら凄いですが・・・」
ソウルアーマーという言葉を初めて聞いたように聞き返す。
「聞き取りされてもよくってよ?それに再度攻めてきたらお見せしますわ。我が精鋭部隊の強さをね」
ライラ王女は絶対的な自信がありそうだった。
「それは心強いですわ。でも、こちらにもソウルアーマーを倒せるAランク冒険者がいることをお忘れなく」
「「うふふふ♪」」
レイとアイリスは思った。向こうに行っておけばよかったと。
『『このやりとりいつまで続くんだ!?』』
冷や汗をかきながらすでに帰りたいと思う2人なのであった。




