遂に登場!そして対面。
港はいまだに混雑していた。
一時的に、ネクロス王国の港町に避難していた人々が、オオラン帝国を撃退した報告を聞いて戻って来ているのだ。
「公爵様のご配慮で、港の1番奥に停めてある船にお乗り下さい」
比較的空いている場所を選んでくれたようだ。
シオン達は船に乗ると出港まで時間を潰した。
船が出港すると、先日の戦闘が嘘のように穏やかな時間が流れていた。
「気持ちの良い風ね~」
「そうだね。シオンはこの前の戦闘、大丈夫だった?」
「うん、力とスピードはあったけど、なんか人形を相手にしている感じだったし、生身の人間よりはマシだったよ」
シオン達は冒険者であり、傭兵や騎士ではない。盗賊や他国の兵士とはいえ、人間は殺したくないのだ。
「頑張ったね」
「うん」
レイはシオンの頭を撫でた。
「えへへっ♪レイもソウルアーマーの本体を見つけて倒したじゃない。そっちの方が大変だったでしょ?」
「僕の方は棺桶に剣を刺すだけで、大変じゃなかったよ。正直、シオンが心配だった………」
「えっ?」
レイはシオンの目を見て真剣な顔で言った。
「どんなに強くても、シオンは女の子なんだ。何かの不運があって大怪我をすることもあるだろう?正直に言ってこの戦争に顔を突っ込んで欲しくなかったんだ」
「で、でもっ!」
「うん、わかっているよ。優しいシオンなら絶対に知り合ったエリザのことを見捨てないと知っているよ。でも、君を危険な目に合わせたくないって言う僕の気持ちも知っていて欲しい」
シオンの両手を握って力強い顔でシオンを見るレイの目を逸らす事が出来なかった。
そして、2人の顔近付いて…………
「はーい!そこまで!!!」
「「うわっ!??」」
2人は飛び跳ねる様に後ずさった。
「だ、誰だ!」
レイはキョロキョロと見渡すと、後ろの甲板でアイリスやエリーゼ、エリザが顔を赤めて、ワクワクしながら見ていた。
「いたのかよっ!?」
「いやいやいや………レイが人目を気にせずシオンに迫ったんだよ?」
うんうんとエリーゼも頷いた。
「ってか、それどころじゃないの!後ろ!後ろ!」
???
「「後ろ???」」
シオンとレイが海の方を見ると───
「あ、やっと気付いた。久しぶりね~~」
「えっ?えっ?えっ???ママーーーーーー!!!!?」
シオンのママは、海から顔を出している『海竜様』に乗っていた。それで他の仲間達は固まっていたのだ。
「何してんのよっ!この大変な時に!?」
「いえ、娘が傷ものにならないかと思って心配で見張っていたのよ♪」
シオンは真っ赤になりながら、口をパクパクして言葉を失った。
「さ、最悪だ……師匠に見られてた…………」
レイは両膝を着いて土下座のポーズで震えていた。
「そ、それよりパパは?」
「パパは少し別件で動いているの。ちょっとウザい魔族が動いているみたいだからね♪」
ま、まさかあの女の魔族の事?
何処まで知っているのよ!?
「それで今まで何をしていたのよ!こっちは大変だったのよ!オオラン帝国に行ってすぐ戻ってきたんでしょ!?」
???
「何を言っているのよ?あんな嘘の依頼書なんて最初からわかっていたわよ。だからちょっと新婚旅行に行っていただけよ♪きゃっ♪♪♪」
きゃっ♪じゃないわよ!
「でも、流石は私の娘ね。まさかエルフの国に行ってしかも救っちゃうなんて♪」
「………いったいどこまで知っているのよ」
「大切な娘の事は何でも知っているわよ♪いつまでおねショしてたりとか、いつから1人でえっ──」
「わっーーーー!!!!!!何言ってんの!?止めてよ!!!!」
「もう、いきなり大きな声を出して。びっくりするじゃない?」
「うるさい!それにその乗っている魔物は何よ!危険はないの!?」
ゼーハーと息を切らして話題を逸らせようとした。
「ここ子は海竜様ね。私達と友達なの♪」
「えっ!?Sランク魔物の海竜様!?」
この前、嵐を呼んだりするって言って無かったっけ?
「この前は大陸の方でよからぬ気を感じて嵐を呼んだらしいわよ?」
私の思考を読まないでよ!
混乱していたシオンだったが、ようやくシオンのママから本題に入った。
「まぁ、娘と親子の会話はこれくらいにして、本題に入りましょうか」
さっさと本題に入ってよっ!
すっかりとペースを持ってかれているシオンは何も言えずにママの話を待つのだった。




