次の作戦は・・・・
ようやく戦後処理に入った所で1日経ちシオンやレイ達はエリザの屋敷にある執務室に呼び出されていた。
「まずはよくやってくれた。オオラン帝国は国境の砦も放棄して完全撤退をしたようだ。うちから3千の兵を送って、再度守備についた」
「また攻めて来ますかね?」
「恐らく大丈夫だと思うが、しばらくは油断せず守備に付かせる。それより今は王都の方だ。確認されているソウルアーマーは5百体。そのうち残りの200体が王都の守備に着いている。生身の本体も王城の中だろう。正直、厳しい戦いになる」
レイは地図を見ながら否定した。
「いえ、たった二百体では王都全体の警備はできません。少数なら警備を潜って王都に入るのは容易だと思います」
「なるほど。王都の外で注意を引いて、少数精鋭が王都、さらには王城に忍び込んで生身の人間の方を倒す訳だね」
ふむふむ?
「問題は王太子殿下とその裏で糸を引くネクロス王国だよね?」
「それなんだがネクロス王国の密偵からは、動きないと連絡が来ている。どうやら使節団にきていた者の独断の可能性が高いのだ」
「これだけの事を独断で?どんな人物なの?」
「うむ、ネクロス王国の筆頭魔術師フレイヤというエルフのハーフでかなりの魔力を持っているらしい」
エルフのハーフ!?
シオンはエリーゼの方を見たがエリーゼは首を振って何も言わないようにという仕草をした。
「しかし、ソウルアーマーを二百体は我々の戦力だけで抑えるのは厳しい。ここは辺境の街にいる騎士団にも協力を仰ごうと思うのだが?」
「それは良いと思います。それと鉱山の街に逃げたライラ王女にも協力をお願いしてはどうでしょうか?」
公爵は少し考えてから頷いた。
「うむ、それが良いだろう。誰が敵で誰と協力したかで戦後の政治的有利が変わるからな」
「私の生まれ育ったレザーには戦力はないけど、物資の提供はできると思うよ」
奪われた物資はダンジョンに潜って補充したしね。
あの頼りない領主も頑張ってくれるでしょう。
「あ、そういえば私の両親ってここに寄ってないよね?」
「シオン君の両親だと?」
レザーの領主が騙されてオオラン帝国にSランク冒険者を派遣したという話を少しぼかして伝えた。
「いや、すまないがそういう連絡は来てなかったと思う。ただSランクの冒険者として身分を隠して国境を越えた場合はわからないな」
「そうですか。いったいどこにいるんだろう?」
少し悲しい顔をしたシオンの手をレイが握って励ました。
「師匠達なら大丈夫だよ。きっと裏で動いてくれてるよ」
「うんそうだね」
気持ちを切り替えて前を見た。
「まずは足並みを揃える必要がある。各街に伝令を送り一斉に王都を囲む日時を決めようと思うのだが?」
「距離がありますから最低でも1ヶ月後ぐらいですわね」
結構かかるね。
でもその間に準備はできるよね。
「これ以上、王太子を自由にさせては、いつ自国を滅ぼすかわからないからな。ジーク第二王子かライラ王女に立ってもらうのか、各都市が独立するのかは、王都を制圧してからの話し合いになるだろう」
いよいよ大詰めって感じだね。
「そこでだ、エリザにはシオン君と一緒に鉱山の街に行ってもらいたい」
「ライラ王女のお考えを伺うためですわね」
「うむ、ライラ王女も王位を狙っているのは明らかだ。しかもオオラン帝国の王子を引き込むほどに野心家だとわかった。王太子を排除してからどのようにお考えか確認して欲しい」
エリザはため息を付いて聞き返した。
「次の相手はライラ王女になる可能性があると言うことですわね」
「ああ、真っ当な統治であれば文句はないのだが、ライラ王女も遺跡から何かアーティファクトを手に入れて研究していると言う情報もあるからな。人気取りのためとはいえ、鉱山の街を救ったこともある。真意を聞き出してきて欲しい」
エリザは深く頭を下げてわかりましたと言った。
こうしてシオン達は数日の休憩の後、船で鉱山の街マイニにまた向かうことになった。
「また船での旅か~」
退屈そうな声でシオンは呟いたが、
「僕は楽しかったけど、シオンは動き回れないから退屈そうだね」
「でも船の揺れの中でアレだけ熟睡できるのは才能だよ~」
レイとアイリスは楽しそうにシオンを茶化した。
「むぅ!今度は釣りでもしながら楽しむもん!」
顔を膨らませてプイッと顔を背けるシオンであった。




