虐殺………
日が落ちて次の日になった。
先日と同じ流れになったが、敵も警戒したのか昨日ほど戦果を上げられなかった。
そしてまた1日が終わり、3日目に入った時だった。敵に援軍が来たのだ。
「オオラン帝国、敵1万5千が合流しました!」
城壁の上からでも大軍勢だとわかる。
「結構、削ったと思ったけど、回復しちゃったね」
「何を呑気に言っているんだ。前以上だよ。さらに隊列を見れば練度も違うのがわかるよ」
帝国の王位継承権の上位が来たと見て間違いないだろう。
「あ、そういえばレイは継承権何番目なの?」
レイは言いにくそうにしたが諦めて答えた。
「・・・多分、1位だよ。上の兄達が死んだから」
「マジか!?」
シオンはびっくりしてレイを見た。
「失礼致します。レイ様は現在の皇帝陛下が愛した女性の子供であり、ずっと気に掛けておられました」
「ツクヨミさん・・・」
「そしてシオン様の母君の庇護していると言うことで誰も手が出せなくなったのです」
シオンは首を傾げた。
「なんで?Sランク冒険者と言っても平民で、軍隊とか持ってないよ?」
「・・・シオン様の母君と父君が皇帝の寝室にやってきてレイ様のことをどうするのかと問い詰めたそうなのです」
うんうん、だから????
「あ、これは理解していない顔だよ。良いかいシオン、国で1番厳重な皇帝の寝室に忍び込めるってことは、下手に手を出したら自分が危なくなるだろう?師匠達が知らないうちに睨みを利かせてくれていたんだよ」
シオンがポンっと手を叩いて納得した。
「そう言えば、レイがこちら側にいることは知られているの?」
「ツクヨミが居ることから、知られているだろうね」
「ああ、それでこの戦争で勝てば継承権1位のレイも始末できるから向こうも本気で殺ってくるんだ」
「いい迷惑だよ。まったく」
ため息を付くとまた緊急の伝令が届いた。
「き、緊急伝達!新たな敵兵確認!」
!?
「オオラン帝国ってどれだけ兵力持っているのよっ!」
「流石に民兵じゃないかな?大国でもこれ以上の遠征は国庫に響き過ぎる……」
「いえ!新たな敵兵は北からです!王都からの新生近衛騎士団と思われます!」
ソウルアーマー部隊か!
「まさか両方で協力して攻めて来られると持たないんだけど………」
「今は少し様子を見るしかないな」
「今気付いたけど、王太子は強力なソウルアーマーを手に入れたけど、王女様はどうしたの?」
オオラン帝国の乗っ取りの時にどうなったの?
「確か、手勢を連れて鉱山の街に逃げたそうだよ」
「無事だったんだね。よかったよ」
でも、今は私達がヤバいかな。
シオン達は敵の動きを注視する事になった。
しかし、王都から来たソウルアーマー部隊は足を止める事もなく、オオラン帝国に向かって行った。
「あれ?オオラン帝国と戦ってくれるの?」
「そう来たか。それぞれで僕達を協力して潰した後に戦うか、今のうちにオオラン帝国の戦力を減らしておくのか半々だったけど、僕達に取っては助かったね」
なるほど。
取り敢えず敵同士で潰し合ってくれるようだ。
「ソウルアーマーの実力をしっかり見ておく事にしよう」
シオンの仲間達も城壁に登り、敵の動向を見守った。そして目にしてしまった。
圧倒的な力の虐殺を───
「………これほどの力なのか」
城壁の上にいたシオンやスランの兵士達は言葉を失っていた。
「アイリス、ソウルアーマーの大きさってわかる?」
「そうだね。距離と角度を計算すると、3メートルぐらいだよ」
「それだけの大きさの『鎧』が、あのスピードで動けるのか」
王都のソウルアーマー部隊は、約300体ほど。
話では500体いるから残りは王都の守りに残っているのだろう。
ソウルアーマーの強さは別格だった。
オオラン帝国の兵士の剣はほぼ弾かれて効かない。弓はまったく無意味。
唯一、魔法が効果があるようだが、鎧に傷を付ける程度で、動きを止めるほどは無かった。
そして、軽装備並みの早い動きで駆け回り、力も通常より数倍はある様に見えた。
武器は大剣のみで遠距離攻撃はないようだ。
だが─────
「なるほど。先にオオラン帝国を攻撃したのは圧倒的な強さを見せることで、スランの降伏を狙ったんだね」
「そうだな。遠距離攻撃がないようだが、あの運動能力なら、城壁を登ったり、城門も大剣で壊せそうだ」
スランのほとんどの兵士が真っ青になっている中、ソウルアーマーの弱点を知るシオン達はエリザの父親が『本体』を見つけるのを待つのだった。




