パーティに潜入2
少し距離をとってバルコニーにでた。
「レイ、どう思います?」
「大昔、エルフと戦っていた時代があったとエリーゼが話していたな。恐らくその時の捕虜の末裔だろう」
「ですわよね。もしかしたら当時の生き残りがそのままいるかも知れませんが」
エルフは長寿だ。
まだそのまま生きている可能性もある。
「まさか僕達がエルフの国に行って救ってきたなんて誰も思わないよね」
「私はしっかりといけてませんが、エリーゼさんがいますからねぇ~」
エリーゼにこの事を伝えるのか悩む所だ。
「まだわかりませんが末端の貴族ではアヴァロン王国を狙っている風には見せませんでした。ならば王族が秘密裏に動いているのか、その第一王女様の独断なのかで対応が変わってきますわ」
「なるほど。王女の独断であればそこまで騒ぎを大きくしなくて終わらせる事ができそうだな。王女を捕まえて交渉すればいい。ただ国王が秘密裏にアヴァロン王国を虎視眈々と狙っていた場合は難しい対応を迫られるな」
「そうなんですの。いずれにしてもこの情報をお父様に伝えて、今後のことを話し合いませんといけませんわ」
2人は急用が入ったと言ってパーティ会場を後にしたのだった。
宿に戻ると、すでに眠っていたシオンを叩き起こして会議を開いた。
「───と、いうお話が聞けましたの」
「まさか、こんな海を越えた国でエルフの末裔がいたなんて」
エリーゼは驚きを隠せなかった。
「ただ、今すぐ王宮にいるエルフの末裔に会うのは無理ですわ」
「それはわかっています。我が国もハーフを受け入れるべきか議論が必要ですし、我が国も場所が知られるのも問題があります。シオン達の旅が終わってからゆっくりとこの問題に取り組みたいと思います」
エリザはホッと息を吐いてから続けた。
「明日の朝一番で王都を立ちます。急いで交易都市スランに戻ってお父様にこれからのことを話さないといけません」
「そうだね。敵は古代兵器をすでに復元している可能性もあるし、王女様の婚姻もどうなるのか見定めないといけないしね」
エリザはふと考えた。
「オオラン帝国・・・・動くかしら?」
「すでにオオラン帝国の兵士がスランに来ているって言ってなかった?」
エリザの呟きにアイリスが尋ねた。
「あ、いえ、本気で動くのかしら?と思ったのよ。オオラン帝国もお家騒動で、上の方は内乱に近い状態と聞いていたので」
「そうなの?」
「兄弟が10人以上いてね。誰が次の皇帝になるのか、昔から暗殺が絶えなかったと聞くわ。それを嫌って一部の子供達は国を捨て逃げ出したとも聞いているわ」
「・・・そんな事も噂になっているのか」
レイが呟くように言った。
「ええ、一般には知られてない情報ですがアヴァロン王国も、しっかりと情報収集はしておりますので」
現在のネクロス王国のサイレント侵攻には遅れを取ったが、何もしていないわけではないのだ。
『他国の情報網にも引っ掛かっているなら、オオラン帝国の本国にも僕の居場所が知られている可能性が高いな。あえて居場所がわかっているから放置されていると見るべきか?何にしても、アヴァロンと戦争になったらコンタクトしてくる可能性がある。十分に気をつけなければ』
レイは気を引き締めて誓うのだった。
「アーロン商会には迷惑かけちゃったね」
「まぁ、ドラゴンの牙を置いてきたのでチャラですわよ」
迷惑料込みでのドラゴンの牙であった。
「静かだと思ったら、シオンさん寝てますわね………」
「この子はよく寝るのよね~」
アイリスはお母さんのような口調で言った。
「取り敢えず今日は早く寝て、明日もう一度シオンさんに説明しますわ」
エリザは軽くため息を着いて首を振った。
次の日になり、馬車で移動中にシオンはようやく目を覚ました。
「はぇ?ここはどこ?」
「もう昼過ぎだよ?いつまで寝ているんだ?」
レイの声にようやくシオンは意識がはっきりしてきた。
「あれ?昨日エリザ達が帰ってきて………なんの話をしていたんだったけ?」
「やっぱり昨日の話を覚えて無かったですわね。このポンコツ娘は」
「誰がポンコツよ!失敬なっ!」
「「シオンのことだよ!(ですわ)」」
ガーン!
シオンはショックを受けた。
「みんな酷い………」
シクシクッと落ち込むシオンを慰めながら昨日の話を伝えた。ようやくシオンも理解して馬車は進んで行くのだった。




