パーティに潜入!
アーロン商会に行ってから1日経って、パーティの日になった。
あれからシオンは泣いて喜びながら着替えて食事をしたという。
(まっ、どうでもいい話である)
「しかし、こうやって着飾るとレイさんもカッコいいですわね」
「お世辞は辞めてくれ。場違いだよ」
タキシードを着たレイは美少年と言った風に見えた。
「大丈夫ですわ。ちゃんと男性に見えましてよ?」
「・・・それのどこが大丈夫だと?」
女の子に間違えられる容姿にコンプレックスを抱いているレイは伏せ腐れた表情で言い返した。
「みんなの前で聞けなかったのですが、レイさんはネクロス王国の情報は持ってないのかしら?」
「ここは海を挟んだ孤島だからな。最低限の情報しか持ってないんだ」
まぁそうですわよね。
エリザもわかっていたのか、それ以上は聞かなかった。
パーティー会場は、とある伯爵家の屋敷で行われた。
「ようこそ!紹介状の提示をお願い致します」
エリザは慣れた手つきで受付にアーロン商会のメダルを見せた。
「これが紹介状の代わりになるとお伺いしたのですが?」
受付のスタッフは一瞬驚いた顔をしたが、手慣れた手つきで本物か確認すると丁寧にお辞儀をしてどうぞと言った。
「ありがとう」
エリザはレイを腕を組みながら堂々と会場に足を踏み入れるのだった。
すでに半分以上の貴族が来客しているようで、大いに賑わっていた。
「これからどうする?」
「しばらくは一緒に行動しますわよ。挨拶周りはペアでと決まっているので」
そうなのか?
レイは貴族の作法にそこまで詳しくないためエリザの手を取りながら歩いて行った。
エリザは、さも当然のように振る舞って、初めて会う貴族達に挨拶回りをしていった。
「まぁ、最近こちらに?」
「ええ、アーロン商会と懇意にさせて頂いてまして、信頼の証としてこのメダルを渡されたのです」
ざわっと周囲の貴族が驚いた声を上げた。
「それはすごい!アーロン会長が認めた人物にしか渡さないと有名なメダルではないですか!」
「私もアーロン商会でよくお買い物をするのにいまだに貰っていないのよ?」
ザワザワと予想以上の効果にエリザもミスったかもと後悔した。印象に残らないように情報収集しようと思っていたからだ。
「・・・それで、アーロン会長もですが、交易都市スランで何か大きな儲け話があるとかで向かわれたそうなのですが、皆様は何か知っておられますか?」
「ああ、交易都市が何やら独立しようと傭兵を集めている話かな?」
「武具や食料品が高値で売れているそうで、いつも以上に商人が集まっているようですわよ?」
「私も聞いたな。まったく野蛮なことだ」
上手く話題を逸せてニヤリとするエリザ。
「せっかくネクロス王国から使節団を向かわせたのに、友好を結ぶべき相手が内乱とは、時期が悪かったのかしら?」
「いや、丁度よかったのではないか?これを口実に挙兵できるな」
「そうよね。我が、国の魔道技術なら他国を圧勝できますものね!」
「ただ補給の問題のせいでなかなかなぁ~」
海を挟むから船を使わないといけないから、天候が悪く船の到着が遅れるとそれだけで現地の補給が大変になる。魔導技術で一歩先を行くネクロス王国が戦争をしない理由がこれだ。
「上の方々も狙ってはいると思うけれど、静観を決めてますからね」
「えっ?そうなのですか?前々からアヴァロン王国を植民地化しようと聞いていたのですが?」
「それは失策から民の意識を逸らすための嘘よ。今の国王様になってからネクロス王国は安定しているし、無理してアヴァロン王国を手に入れるメリットがないですから」
「そうだな。オオラン帝国と陸続きになるのは避けたいし、統治が面倒だしな」
どういう事?
こちらに伝わっている話と全然違うわ。
「あ、でも国王様の第一王女様は違うかもしれませんわね」
「第一王女様ですか?それはどうして?」
その貴族は声を小さくして言った。
「実は王宮にはエルフの方々が住んでいまして、無論、ハーフなのですが、その1人からお生まれになったのが、第一王女様で、ネクロス王国の筆頭魔術師様でもあるのです」
!?
「確か、使節団にも参加されていましわよね。名前はフレイヤ様だったと」
「ええ、あまり褒められたことではありませんが、長寿のエルフは魔力も高いので、昔から、その・・・色々な研究をなされていましたので」
言い淀むということは非合法な研究であったのだろう。
「でも、ハーフとはいえ混血種である方が第一王女として認められているのは凄いですわね」
普通なら認知しないところも珍しくはない。
「ええ、勤勉でとても真面目な方でしたから。魔術の腕は王国一は伊達ではありません。国王様もその実力は認めていらっしましたしね」
「最近は使節団に同行して、我が国との架け橋になっていると聞くが、王宮ではこんな噂が鳴かれているんだ」
!?
コソッ
「ど、どんな噂なのですか?」
「エルフの国を探しているのでは?と」
!!!?
「ハーフと言っても混血種。心無い者から酷いことを言われてきたし、故郷に帰りたいのではと思っている者達がいるんだよ。アヴァロン王国のどこかにエルフの国があると言われているのでね」
「もしかして、それでアヴァロンの国王、もしくは王太子殿下に取り入っていると?」
「まぁ噂ですよ。アヴァロンの民もエルフを見たことなどないと言っているしね。古代の遺跡でも見つかれば満足するんではないのかな?」
エリザとレイは冷や汗が止まらなかった。
「そ、そうですわ。お会い出来た縁でこちらをプレゼントいたしますわ」
エリザはグリフォンの羽で出来た装飾品を周囲の貴族に渡した。
「今後はアーロン商会でも取り扱う『かも』知れません商品ですわ」
「綺麗な羽ですわね♪なんの羽ですの?」
エリザは扇子で口元を隠しながら、勿体ぶるように言った。
「これはAランク魔物、グリフォンの羽を加工したものですの」
「おお!それは凄い!」
「Aランクの魔物だなんて凄いですわ!」
「よく討伐できましたな!」
周囲の貴族の反応は上々だった。
「いえいえ、貴重なお話を聞けただけで有意義な時間でしたわ」
エリザは挨拶をしてその場を離れた。




