探索
貴族街に来たことでAランク冒険者のシオンとレイが同行していないと門の外には出られるが、戻ってこれないという問題が生じた。
「こればかりは仕方がないね。シオンはエリザ達と一緒に貴族街の探索を。僕とアイリスは裕福層を探索。商業街や市民街は人が多く危険もあるから、明日みんなで探索でどうかな?」
「別に急いでないし私は良いよ~」
「私も異論ありませんわ」
「了解~」
レイの提案にみんながOKを出すと、ほどほどに休んですぐに行動を開始した。
「じゃ、また夜にね~」
こうしてシオン達は二手に別れて行動を開始するのだった。
シオンチーム?は、シオンとエリザ、エリーゼが。
レイチーム?は、レイとアイリス、妖精のシルフが同行した。
シオンの方は貴族のエリザとエルフの王族であるエリーゼが、他国の貴族に会った時の対応ができると言う理由と、上級階級の何か情報が得られればと言う思惑があったからだ。
「綺麗な街並みだね。街中が全て石畳なんてびっくりだよ」
「あら?アヴァロン王国の王都も同じですわよ?そこは余り差はないと思いますわ」
「へぇ~そうなんだ。行く機会があれば楽しみだよ♪」
流石の貴族街であり、ゴミなど落ちてなく、景観は素晴らしかった。所何処に騎士が巡回しており、治安も良かった。
「少しお店を除いて見ましょう」
まずは───あれ?
「…………ねぇ?お店が無くない???」
周囲を見てみるとまったくない訳ではないが、あるのは宝石屋や洋服屋ばかりで、市民でいる雑貨屋や八百屋みたいな食料品の店が無かった。
流石にレストランはあったけど。
「ああ、貴族は自分の屋敷に食料品を直接運んで貰うので、貴族街にそういうお店はありませんの。雑貨の類も大抵、商人が屋敷にきて売りにくるので、外で買物と言うと洋服や宝石、食事をするぐらいですわね」
!?
シオンはカルチャーショックを受けるのだった。
エリーゼも少し驚いていた。エルフは人口が少なくそういった文化は無かったからだ。
「と、言う訳でまずはネクロス王国の流行のファッションを抑えますわよ♪」
はい???
政治的思惑はどうした?
エリザに手を引かれて洋服の店に入った。
「いらっしゃいませ」
店に入るとしっかりと指導されているスタッフが出迎えた。
「すみません。ここは一見さんでも大丈夫かしら?」
「本日は御来店ありがとうございます。当店は問題ございません。王都は初めてでございますか?」
「ええ、ちょっとした旅行で。知人に会いにきたのもありますが」
「そうでしたか。当店は問題ございませんが、ここから更に奥の門の近くのお店は紹介がないと入れませんのでご注意下さいませ」
「そうなのね。ありがとう。では、最近の王都での流行りのドレスを見せて貰えるかしら?」
「かしこました」
スタッフはエリザにドレスを紹介しながら説明を始めた。シオンとエリーゼは少し後ろで感心しながら見ていた。
コソッ
「エリザって凄いね。サラッと嘘を言えるのって」
「そうですね。嘘と言うか、スラスラッと言葉がでる所が凄いですね」
しばらくドレスを見ながら、何故かシオンとエリーゼもドレスを買う話になり、着せ替え人形の気分を味わったシオン。エリーゼは流石に慣れていたが。
「サイズ合わせは何日ほど掛かります?」
「はい、この数ですと5日ほどでできます」
エリザは少し考えて、目の前にお金を積んだ。
「滞在期間が限られるので3日でお願いできないかしら?その分は上乗せするわ。それと───」
スタッフは一瞬驚いたが、すぐにかしこまりましたと頭を下げた。
ようやく洋服屋が出るとシオンはエリザに尋ねた。
「ねぇ、最後のはどういう意味があったの?」
「貴族って言うのは何処でも無茶な要求をするやからがいるのですよ。だから貴族相手の商人やお店も、対応策を持っているものなのです」
「どういうこと?」
「私達は既製品を買ってサイズ合わせをお願いしました。布を折り曲げて長さを調整するだけで5日も掛かりません。故に、もっと早く仕上げろっと言う貴族の為に、いつも余裕を持って日にちを伝えているのです」
「な、なるほど。あれ?それなら金額の上積みはしなくてもよかったんじゃ………?」
エリザは指を立てて説明した。
「ウフフ、あれば情報料ですわ。スタッフさんに近日中にどこかパーティーを開く所がないか伺ったのです」
「パーティー?」
「そう、例えば大きなパーティーがあれば、洋服屋に新しいドレスの注文が殺到するでしょう。貴族のパーティーでは上位貴族のドレスと同じデザインや色など被らないようにするのが暗黙の了解です。だから一般的に流行と言うのは下級貴族で上位貴族に被らないものが流行るのです。まぁ、前回の上級貴族や王族が着ていた物が次のパーティーで流行ることも多いですが」
「なるほど。上級貴族や王族は色はともかく、同じデザインのドレスなど連続では着ませんものね」
えっ?そうなの?
シオンはエリザとエリーゼの会話に何度もカルチャーショックを受けるのであった。




