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婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜  作者: naturalsoft


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情報収集!

出発前に色々とあったが、ようやく出発したシオン達一行は、グリフォンのグーちゃんに引かれて馬車の旅を順調に進んでいた。


「島国ってこともあるけど、道が舗装されて整備されているね」

「そうですわね。王都と港町を繋ぐ街道とはいえ、これだけ長い道を石畳で整備するなんてたいした物ですわ」

「それだけじゃないよ。定期的にヒカリゴケを入れた天然の街灯が道にあるから、夜でも迷わないようになっているね」


これだけでアヴァロン王国より民に寄り添った政策を打ち出しているとわかった。


「少し悔しいですわね。戻ったら我が国でも取り入れましょう。貧困対策にもなりますわ」


吹っ切れたのかエリザは真面目にメモをしてアヴァロン王国に理のあることを取り入れようと外を見ていた。


「それに人の往来も多いよ~」


馬車の操縦はシオンがしており、馬車の外から会話に参加した。

流石にグリフォンと言うAランクの魔物が馬車を引いているので、周囲の旅人や商人は立ち止まってシオン達を見ていた。


「あ、ちょっとすまない!」


呼び止められてシオンが答えた。


「うん?何の用?」


声を掛けたのは街道脇に、5台もの荷馬車を停めていた商人だった。シオンも馬車を停めて話を聞いた。


「いや、ここいらでは見かけないから声を掛けたんだ。凄い騎獣を連れているね」

「あははっ、よく言われるよ。私たちはアヴァロン王国から旅してきたんだ」


商人は少し考える素振りをして尋ねた。


「ちなみにその騎獣を売るとしたらいくらで売ってくれるかい?」

「いつも言われるけど、売る気はないよ。ってか、私以外に懐いていないから無理やり奪おうとすると、暴れて殺されるから。もう何十人も犠牲になっているよ」


「そ、それは恐ろしいな。じゃ、その魔物はお嬢ちゃんが手懐けたのかい?」

「そう!こう見えてもAランクの冒険者なんだ」


伝家の宝刀であるAランクカードを見せた。


「それは凄い!若いのにたいしたもんだ」

「あ、そうだおっちゃん。商人だよね。少し聞きたいことがあるんだけど」


シオンは馬車から降りると商人の所へ歩いて行った。


「何が聞きたいんだい?」


シオンは自己紹介をすると商人の手に金貨を渡した。


「最近の食料などの物価について何か急に変わった物があったら教えて」


!?


シオンの言葉に商人の目つきが変わった。


「ほぅ?冒険者は自由な職業だと聞いたが、何かの依頼で来たのかな?」

「違うよ。ただ港町と海を挟んだ交易都市が何かときな臭いから、その確認だよ」

「ふむ、なるほど。若いのにAランク冒険者になっただけはあるようだ」


商人は手招きして街道から見えない馬車の裏に移動した。


「あくまで噂の段階で、確証はない話でも良いかな?」

「うん、いいよ。私達はこの国は初めてでツテもないから助かるよ」

「私はアーロンと言う。よろしく」


商人の話では食料の物価は高くなってないとのこと。戦争の準備で国が食料を買い漁れば物価が上がるのだが、まだそれはないみたい。

ただ、アヴァロン王国での遺跡発掘は知られており、何やら兵器の開発をしていると言う噂がある。


「なるほど。警戒はしておいた方が良いかも知れないわね」

「国全体の物価は上がっていないが、交易都市には多くの傭兵が集まっているようでね。武具や食料が高く売れているよ」

「あ、それは知ってる。鉱山の街から船で来たから」

「おや、どうしてこの国に?」

「本当に偶然なんだよ。海にSランクの魔物が現れて、遭遇を回避するためにこの国の港町に寄ったの」


驚いた商人が言った。


「海竜様が現れたのか。確かに数日は船は出せないな」

「そうなのよ。だから空いた時間を使ってこの国の王都を観光しようと来たのよ」


商人はシオンの言葉に笑った。


「そうかい。海竜様の情報は助かったよ。腐る食材は仕入れない方が良さそうだし感謝する」

「こっちこそありがとうね~」


商人は戻ろうとしたシオンに声をかけた。


「あ、待ちなさい。最後に一つ聞いても良いかな?どうして私に情報を聞いたんだい?」


万が一、変な商人や王家と繋がりのある人物に尋ねると密告されたり、兵を向けられたりするからだ。


「それは勿論、おっちゃんが真っ当な商人だからだよ。悪徳商人だと雇っている護衛のガラが悪かったり、使用人達の目が死んでたりするけど、ここの人たちは生き生きしてたからね!」


商人はシオンの言葉に大いに頷くと、小さなメダルを渡してきた。


「なるほど。よく見ておられる。王都に行くならこのメダルを門番に見せなさい。こう見えてもそこそこ大きいな商会を運営しているんだ。シオン君の力になろう」


アーロンは、シオンの後ろ盾になっていると言う証明に、商会のメダルを渡したのだ。


「お互いに、信用できそうな相手でよかったよ」

「そうだね。これからは『信用』を積み重ねて『信頼』できる関係を希望するよ」


2人は握手をするとその場を別れるのだった。


「お待たせ。面白い話も聞けたし行くよ~」

「相変わらずシオンのコミュニュケーションの強さは凄いな。引きこもりのアイリスだと無理だったよ」


レイの言葉にアイリスは不満げに言い返した。


「そんなんだからレイはモテないのよ」


グサッと打たれ弱いレイだった。

しかしこのアーロンとの出会いが後でとても意味を持ってくる事に今は気付くことは無かった。






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