邪魔ばかり
シオンの言葉に仲間達は呆然としたが、エリザはまさかと思い出した。
「まさか、王太子殿下は姉である王女殿下を生き返らせようとしているのですか?」
自分に言い聞かせるように呟いた。
「王女殿下って10歳ほど年上の、王妃様から生まれた直系の家族だったよな。暗殺されて、その後王妃様も亡くなったが・・・」
「ええ、優秀な方で女王になる器を持った方でした。私も幼い頃、よく遊んでもらった記憶があります。殿下がシスコンになるのもわかる気がしますが、それだけ素晴らしい方でした」
「そういえばシスコンって何?」
いや、問題はそこなのか?
シオンはまた違うところに驚いていたが、前に聞いても無視されていたので再度聞いてみた。
コソッ
「シオン、シスコンっていうのはね・・・」
アイリスが個別でシオンに教えている間に、レイがエルザに尋ねた。
「暗殺が横行して、王宮はかなり血塗れの状態になったんだったね」
「ええ、流石に私も落ち着くまでは実家に返されましたが、殿下は異母姉弟である王女殿下をいつも気にしていましたし、亡くなった時の取り乱し様は酷かったですから」
「それを隣国に付け込まれたのか・・・」
「眉唾物の話でも、不可能ではないと示唆すれば行動に移すかも知れませんね。それが国の王族で実行できる力があるのでしたら」
重たい沈黙が流れた。
そしてシオンだけが目がダバーと涙を流していた。
「・・・一応聞いておくけど、シオンはどうして号泣しているんだ?」
「ううぅ、王太子って人は好きだった人の為に動いているって聞いて感動したんだよぅ~」
レイは何度目かのため息を吐くとシオンに言った。
「まだ推測の段階だから。まだ決まってないからな?それに、そのせいで民に負担を強いるのは間違っているだろう?」
「あ、それもそうだね」
シオンはあっさり納得した。
「シオンは感情豊かだね~」
「それが良いところでもあり、悪いところでもあるんだけどね」
エリーゼの言葉にアイリスが頷いた。
「こほんっ、とりあえずネクロス王国の王都に行って、可能なら戦争の準備の確認と、経済や技術力のチェックもするってことで良いかな?」
「「異議なし!」」
こうしてシオン達は敵国の王都へ向かうことになった。
次の日ーーー
シオンは乗り合いの馬車を考えたが、グーちゃんがいるので自前の馬車で行くことにした。
「いやー、エルフの国でマジックバックを貰えてよかったよ。流石に馬車は船に乗せられないからね」
「シオンさんの高級馬車に乗ると他の馬車に乗るのが躊躇われますので助かりましたわ♪」
エリザが1番、この馬車を気に入っていた。
「エルフの国は森の中にあるので余り馬車を使わないのですが、この馬車は別格ですわ!」
エリーゼも大絶賛だった。
「なんか、当たり前に乗っていたから、ありがたみがないんだけど?」
「それは僕もだよ」
シオンとレンは昔から乗っているので実感が湧かなかった。
街の入口で馬車を出すと、グーちゃんを手綱で繋いで出発です!
ただこれから出発と言うところで邪魔が入った。
「まてぃーい!!!!」
うん何よ?
振り返ると昨日のクズデブがいた。
いや、なんでいるのよ?
「報告にあった通りだ!貴様らを捕縛する!」
????
いや、何でそうなるのよ???
「意味わかんないんだけど?」
「五月蝿い!貴様のせいで親父にも昨日の話が伝わって、俺は勘当させられたんだぞ!いくら何でも市民を殺したヤツを跡取りにできないって言われてな」
「あら?親子でのホームドラマで『感動』したのね。よかったじゃない?」
「ちがーう!!!!親子の縁を切る勘当だ!!!!」
ちっ、知っているわよ。
「パチパチ!バカなのによく知っていました~」
シオンはメチャクチャに煽ってバカにしていた。
「もう許さん!昨日の騒ぎはお前達が起こしたことにするのだ!さっさと捕まれ!」
クズデブが命令をしようとした時、シオンが手で制した。
「本当にやるの?私はAランク冒険者だよ?」
「この数を相手にできるかっ!」
こいつの雇ったゴロツキは30人ほどいたが、どれもガラが悪いだけで強そうには見えなかった。
「手はいるかい?」
レイの言葉にシオンは首を振った。
いや、あんな雑魚達相手にいらないでしょう。
「やっちまえーーー!!!!!!」
「「ヒャッハー!!!!」
モヒカンやら世紀末ファッションのゴロツキが襲ってきた。
「よし、やりまーーーー」
ドッカーーーーン!!!!!!
シオンが出る前にエルザの魔法が炸裂した。




