到着!あれ?
それから更に3日ほど経って、船は無事に陸地へと辿り着いた。
「う~ん!体が鈍ったなぁ~」
シオンは船から降りると体を伸ばした。
「ようやく着いたねスランに」
シオンの言葉に仲間を残念な人を見る目になった。
「どうしたの???」
意味がわからず首を傾げるシオンに、レイが肩を叩いた。
「まったくこのポンコツが!」
「なんだとー!」
ムキーといつものようになるシオンだが、今回はシオンの味方がいなかった。
「船で話たろう?シオンが寝ている間に、大型のSランク魔物が出たって」
「だから航路を変更して遠回りになったんじゃなかった?」
レイは深いため息をついた。
「また中途半端に話を聞いていたな?その後、魔物が近くにいると海が荒れるということで、距離的に近かったネクロス王国に来たんだよ」
!?
「えっ!嘘!?マジで!!!?」
シオンは心底驚いた。
私達、隣国に来ちゃったの!?
「………うん?それって何か問題あるの?」
レイはズコッとなった。
「僕達の国にちょっかいかけている国に来たんだよ?少しは緊張感を持って欲しいな?」
「まぁ、私達は一般人だから問題ないでしょ」
また深いため息をついた。
「まぁ、危ないのはエルザくらいだよ。それで船はいつ出発するの?」
「取り合えず3~4日は様子を見てから出発だってさ」
「この港は?」
「ネクロス王国の西にある貿易都市アルスだよ」
シオンは少し考えて拳を握った。
「よし!観光だぁー!!!」
デスヨネー!
シオンがそう言うだろうと思ってたよ?
「ま、まぁ、時間もあるし、いいんじゃない?」
「海を挟んだネクロス王国の文化って気になってたんだ」
「確かに、私も次期王妃として、隣国の情勢や文化に興味がありました。丁度良かったですわ」
仲間達の許可も出たことだし、シオン達は少しの旅行を骨休めとして、旅行を楽しむ事にしたのだった。
1日目は宿を取って、念のためにみんなで行動する事になった。
「建物も独特で変わっているね」
「そうだね。この国の天候も考慮して建てられてるようだ」
王国でも余りに見ない独特なデザインの建物が多かった。
「ねぇ、見て!貿易の町と言っても魔法関係の物が多くない?」
「そう言えばそうですわね」
ここで物知り博士のレイの説明が始まりました。
「ネクロス王国は他国よりも魔法技術が発達した国なんだ。魔法使いも多いし、それに伴って魔導具も多いんだ」
「なるほど。魔導具系はネクロス産って事なのね」
露店の道具屋でも良質のアクセサリが売られていた。
「なかなか質が良いですわね♪」
「あっ、これ僅かだけどバフの効果付いてる!」
キャッキャッと女性陣はショッピングを楽しんだ。
特にエルフのエリーゼは珍しいデザインの装飾品に興味があり、真剣に眺めていた。
町中を見て周ると中々治安がよく平和な町だと言うことがわかった。
「ここは衛兵も見回りがしっかりしているし、治安も良い、良い町じゃない」
「本当に、市民にはアヴァロン王国にちょっかい出しているなんて知らされてなさそうね」
どう見ても平時の様子だった。
「ネクロス王国の上層部が諦めないとダメそうな感じね」
「表向きは平穏で同盟国を貫いているからね。国同士の関係は本当に複雑だよ」
港町を一通り見て回ると夕方になり、空が赤くなる時間になっていた。
シオン達はみんなで食事をするために、そこそこ大きなレストランに入った。
「いらっしゃいませ」
変わった衣服をきたスタッフが出迎えてくれた。
シオン、エルザ、エリーゼ、アイリス、レイの人数を伝えるとスタッフさんがコソッと言ってきた。
「すみません。現在、少し厄介なお客様が来てまして、個室を用意するのでそちらでの食事でも大丈夫でしょうか?料金は変わりませんので」
「食事中、個室から出なければ良いのね?」
「はい・・・」
スタッフの気持ちを汲み取り、シオン達は、シオンはラッキー程度に考えてお願いした。
各自料理を注文し少し待っていると料理が運ばれてきた。
「美味しいね!」
「ここは当たりですわ」
「うん、少し変わった味だけど美味しいよ」
一般の料理屋より少し高いが、美味しい料理だった。
美味しい料理に舌を打っていると、隣の部屋から怒鳴り声が聞こえてきた。それと同時に皿の割れる音もした。
「・・・例の厄介なお客かしら?」
「多分ね。何を揉めているのやら」
せっかくの美味しい料理なのに水を刺された感じだ。
シオンは残りの料理に集中しようとしたが、壁をドンッとされる音が聞こえてついに席を立った。
「シオン、行くのか?」
「今の音、誰か壁に打ち付けられた音だしね」
楽しい食事に不快な思いをしたことでシオンは少し不機嫌だった。




