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婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜  作者: naturalsoft


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船旅につきもなイベント

その夜は揺れる船での睡眠に慣れずなかなか寝付けなかった仲間達だったが二日目からは慣れたのか、眠れるようになった。シオンだけは初日からぐっすりと寝ていたが。


「はぁ、流石に海の景色も飽きてきましたわね」

「そうですね。陸が恋しくなってきました」


エルザとエリーゼは甲板で談笑していた。お互いに地位のある立場な者同士で話が合ったのだ。

エルフの国の政治に興味があり、エリーゼも大きな人間の国の政策に興味があり、狭い船の中で一日中、話し合いを重ねていた。


「それにしてもシオンさんに会えたのは不幸中の幸いでしたわ」

「それは私もです。妖精のシルフが連れてきたことに最大限の感謝をしたいです」


妖精のシルフは現在エリーゼの方に座っていた。無論、姿を消してである。シルフも初めての海に最初は飛び回っていたが、飽きてしまったらしい。


「でも許せません!エリザさんを婚約破棄した挙句、命まで狙うなんて」

「もう吹っ切れましたわ。殿下の心を繋ぎ止めれなかった私にも責任がありますので」


そういうエリザの顔は哀愁に満ちていた。


「いつか会ったら思いっきりぶん殴りましょう!」

クスッ

「そうですわね。そうすればスッキリしますわ!」


こうして親睦を深めて言った。

船旅三日目の午前中である。


急に船員達が騒がしくなった。


「何かしら?」


船員達が甲板にいた乗客に中に入るよう指示を出し始めた。


「何かあったのですか?」

「航路の進行途中に、大型の魔物がいることを確認しました。危険なため少し遠回りすることになります」


!?


「まぁ、大変だわ。シオンさんに伝えましょう」


2人は急いで船室に戻ろうとした所、レイが甲板に出てきた。


「これはどんな騒ぎなんだ?」

「進路の途中に大型の魔物がいるらしく、乗客は船室に避難してくださいとの事です。船は迂回するそうですが」

「なるほど。海の中じゃ、魔法もろくに届かないし僕たちの出番はなさそうかな?」


その時、大きく船が揺れた。


「きゃっ!?」

「危ない!」


レイは2人を抱き締めるとすぐに扉の前に移動した。


「ここなら壁に手が付けるから」

「あ、ありがとう」

「助かりましたわ」


室内に入ろうとした時、アイリスも甲板に出てきた。


「なんか大きな魔物がいるって聞いたけど?」


レイは首を振って船員の方を向いた。


「なるほど、ちょっと聞いてくるね~」


シオンのように好奇心旺盛なアイリスは船員に話を聞くと、確定はしていないが、大きな蛇のような魔物だと教えてくれた。


「よし、グーちゃんちょっと良い?」


なんとアイリスはグリフォンに乗って航路の先を飛んで行ってしまった。


「アイツは何をしようとしているんだ?」


流石のレイ達も船の中に戻る事も忘れて空を見上げていた。

少しするとアイリスはすぐに戻ってきた。


「本当に大きな蛇のような魔物だったよ~この船より大きいかも!」


アイリスの声に船長達が驚いた。


「お嬢ちゃん!教えてくれ。その魔物の色は何色だった?」


あらかじめAランク冒険者のペットとしてグリフォンのことを聞いていた船員は驚かなかったが、魔物の色を気にしていた。


「水面下から出ていた肌は真っ白だったよ」


!?


「間違いないんだな?」

「うん。気になるならグーちゃんに乗って見てくる?」


アイリスの言葉に嘘がないとわかると、船長の判断は早かった。


「面舵いっぱーい!すぐに航路を変えるぞ!」


船ができる限りの速度で向きを変えた。


「船長、説明してくれ。あの魔物はなんなんだ?」


急に進路変更されてはこれからの日程に影響が出る。

レイは詳しい話を聞いた。


「大きな蛇の魔物は数種類いるのだが、肌が黒ければAランク指定魔物のシーサーペントと呼ばれる奴だ。あれは意外と臆病でな。こっちから手を出さなければ危険は少ない。だが、肌が白いヤツはダメだ。姿が似ているが、全く別の魔物で、Sランク魔物『近海のヌシ』や『海竜様』と呼ばれているんだ」


「Sランクの魔物・・・」


「ああ、シーサーペントとは違って好戦的で、さらに天候を操るとも言われているんだ。ヤツに遭遇したらすぐに嵐になるのが所以だな」


「天候を操るってマジで海竜様と呼ぶに相応しいな」


「だから、すぐに距離を取らないといけない。陸地ならともかく、海の上の嵐は生死に直結するからな」


船長はそう言うと船員を集めて、これからのことについて緊急の会議を開くことになった。レイは今の話をエリザ達に伝えるのに戻るのだった。



そして我らの主人公であるシオンは、もうすぐ昼になろうとしているのに、まだ夢の中であった。


「スヤスヤ………ぐぅ~」


どこまでも幸せそうな寝顔で爆睡中でした。







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