【閑話2】
???
とある人物はクスリっと機嫌が良さそうに笑った。
「我が主、良いことでもありましたか?」
「ええスネーク、貴方が鉱山に行っている間に面白い者を見つけましたの」
「それはようございました。それよりこの【指輪】の効果は絶大ですな。上級魔族も簡単に倒せました」
ライラ王女は不敵に微笑んだ。
「ええ、お兄様が遺跡調査に力を入れるのもわかりますわね」
スネークが身に付けている指輪は魔導具である。
【身体強化】など様々な効果があり、魔力を込めることで発動する。
王太子が遺跡調査に全力を尽くしている反面、ライラは自分の手の者を入り込ませ、見つけた遺跡を報告せず、この【指輪型魔導具】を発見したのだ。
さらに、個人的に研究を極秘に行い、量産にも成功させたのだ。
「クククッ、本当に素晴らしい」
スネークの指には両手10本分の10個の指輪が填められていた。この魔導具の凄い所は重ね掛けができることである。無論、身体がついてこればの話だが。
通常の近衛には1個のみ。隊長クラスで2個までだが腹心の部下であるスネークのみ特別扱いされていた。
「わかっていると思うけど、この指輪の事は秘密を徹底させなさい」
「はっ!」
ライラは腕を組んで忌々しく窓の外を見つめた。
「お兄様も強力な兵器を発見したと連絡があったわ。それが隣国の目的だとも知らずに」
「王太子殿下は見つけた遺物を全て協力者を渡しているのでしょうか?」
「さぁ?目的の物以外は渡す契約でもしているんじゃないかしら?」
どうでも良さそうに言った。
「そろそろ私の王子様もやってくる様だし、城から出られなくなるから今のうちに民衆の支持集めをできるだけやっておかないとね」
「おお、遂にこの国にやってこられるのですね」
「ええ、表向きは両国の交流の為の使節団としてだけど。ここから詳しい話を煮詰めていくわよ」
「今の王太子殿下の評判はガタ落ちですからな。ある意味交渉は有利に進むでしょうな」
「そうだと良いのだけれどね。向こうも野心があってくるでしょうし、余りにも野心が強過ぎるのも考えものだし、バカは論外ね。組む相手は慎重に選ばないと」
どこまでも慎重に見定める予定だった。
ライラはこれからの展開を思い描きながら野心的に微笑むのだった。
・
・
・
・
・
・
・
・
辺境の街スローにて───
「なに?シオン達から手紙が届いた?」
カミーユさんに頼んで信頼できる冒険者にこの手紙を運んで貰ったのだ。ジークは早すぎる連絡と本人が報告に戻ってくると思っていたので、少し困惑していた。
しかし、手紙を読んで顔色が変わった。
「クソッ!やられた!?」
珍しく感情を露わにして悪態を付いた。
「どうなさいましたか?」
「ブライアンか、ちょうどシオン達から報告の手紙が届いたのだが………」
ブライアンにも手紙を見せた。
「これは!?なるほど。ライラ王女殿下にやられましたな」
「ああ、三大都市の連携で王都に圧力を掛ける計画に、楔を打ち込まれたよ」
「三大都市の1つがライラ様の陣営に加わりましたからな。これでライラ様は資金源も手に入れた事になる」
「そうだ。私とライラの違いは騎士団と言う戦力があるかないかと、領地経営で収入があるかないかに2つだったが、資金源と言う意味では鉱山の街を手に入れたライラが上になったな」
ジークは机に手を置き考える事になる。
「今の所、北と南で圧力を掛ける事はできるが、別の考え方をすると戦力が分散しているとも見える。兄上がどちらかに兵を向けた場合、援軍が間に合わない。厳しい状況だ」
「今は地道に、切り崩しの裏工作に力を入れるしかないでしょう。国内の貴族達もどの陣営に付くのが迷っている…いえ、見定めている時期ですので」
「その浮動票である貴族達を我が陣営に引き込む手柄が欲しかったな。これでライラ陣営に流れる貴族が多数いるだろう」
「それは確かに。何か王太子殿下の弱みか失態を見つけることができればいいのですが。ただこれで王太子殿下の注意が王女殿下に向きますので、潰し合ってくれると助かりますな」
「それにはまず情報が必要だな。ライラも完全に敵対表明したのだ。なにか仕掛けてくる可能性がある」
2人は今まで以上に王都や周辺の情報を集める為に人員を放つのだった。




