結末
その後、神官達が魔界の門を封じることに成功し。この通路を封鎖することが決まった。
鉱山は他にも多くの入口や通路があるため、ここを封鎖しても問題は無いとのことだった。
念のために仕掛けた通路の罠を解除してから戻るのであった。
「・・・なんかモヤモヤするなぁ~」
鉱山の入口から出てくると、周囲には多くの町の人々が集まっていた。
「先触れから聞いたよ。上級魔族を倒して魔界の門を封じたのね。凄いわ!」
カミーユさんが素直に喜んでくれた。
意外だったのは騎士団長のスネークが私達の活躍を民衆の前で評価してことだった。あの性格なら手柄を独り占めすると思っていたのだが意外だった。
「ここにいるAランク冒険者達が道中の道案内をして、上級魔族と戦い弱らせた所を我々が止めを刺した。民間の協力がなければ成し得なかったことだ。王女殿下に代わり、騎士団を代表して礼を言う!」
スネークがそう言うと多くの歓声と拍手が巻き起こった。
「皆様、お疲れ様でした。私には祈ることしか出来ませんでしたが、我が近衛騎士団であれば必ず成し遂げてくれると信じておりました。本当にありがとうございます。そして協力してくれた冒険者の皆様もお疲れ様でした」
流石にこんな大勢の前で褒められて頭を描いた。
コソッ
「どうです?私に仕える気になりませんか?お兄様より厚遇で迎えますわよ?」
ドキっとしたが、顔には出さずに言った。
「それは勘違いですよ。スローで依頼は受けたけど、王子の配下になったつもりはないですよ。何より冒険者は自由なので」
「あら?それは残念ですわ。スネークも高く評価していたので」
ええ、あの嫌味ったらしい団長が?
またまた意外そうな顔をして笑われた。
「顔に出ていますわよ。確かに性格は悪いですが、王家の忠義と実力は本物ですから」
ライラ王女はそう言ってシオンの側を離れた。
しばらくは歓声の中、色々と声を掛けられシオン達はカミーユの家に戻るのだった。
「さて、ここでの仕事も終わったし、これからどうしよう?」
部屋でシオン達はミーティングを開いていた。
「ジーク王子に失敗したと報告に行かないといけないのでは?」
「それは手紙でもいいんじゃない?」
確かにね。
どっちでもいいかな?
「私達はジーク王子にお願いされたけど部下になった訳じゃないしね」
今回、家に居残りさせられたエリザが手を上げた。
「では王子には手紙を送って、私達はお父様の領地に向かいませんか?」
「別にいいけど王太子が見張っているんじゃなかった?」
「今回の件でここに注目が集まると思うので南の監視が緩むのではと思いまして」
なるほど。
「OK!それじゃエリザの実家に向かいましょうか。今回の件で、性格の悪い近衛騎士を囲っている王女殿下も油断できないとわかったし、収穫はあったかな?」
「今の所、正直誰が国をまとめても、よくなるヴィジョンが浮かばないんだよね。ジークの王子の案は話は面白いけど、反発も大きいと思うし、その時隣国が攻めてきたら対処できないのもあるから難しいよね」
「でもお父様はそのように動いている様ですし、話を擦り合わせる必要がありますわね。それとシオンさん」
「うん?なに?」
エリザは言いにくそうに口を開いた。
「ライラ王女殿下は私の存在に気づいた様です」
!?
「えっ!どうして!?大丈夫だったの?」
「シオンさん達が鉱山に入っている時、ここにライラ王女がお忍びで来られたのです。先日、フードを被っていたのですが、よくライラ王女殿下とお茶を一緒にしていたので、歩き方などから気づいたそうです」
「それにしてもライラ王女も只者じゃなさそうね。ローブを纏っているエリザのことに気付くなんて、観察力がハンパないわ」
「王宮では誰が敵で味方か分かりませんから、洞察眼は鍛えられますので」
「嬉しくないよね!それって?」
「はいはい、少しシオンは静かにしてね。それで何を言われたの?」
レイはエリザを見ながら尋ねた。
「自分の派閥に入らないかと言われました。お兄様に、王太子殿下に復讐したくないのかと」
「うわぁ、やっぱり王女様も腹黒だね」
それでどう答えたの?
「今はどこ派閥にも入るつもりはありませんと答えました。ライラ様はすぐに引き下がってくれましたが………」
「まだ諦めてないってことね。エリザが生きている事も弱みになっているし」
「ええ、しばらくは秘密にしてくれそうですが、恐らくは」
「王太子殿下を追い詰める時の、切札に使うでしょうね」
はぁ~とため息を付いた。
「まぁ取り敢えずはエリザのお父さんの話を聞いてから今後の行動方針を決めましょうか」
「今の所、それしかないね」
こうしてシオン達は、今度は南に向かう事になった。そこでふと思い出した。
「そう言えば魔界の門ってどうしてあそこに現れたか聞いてなかった!」
「まったく、僕がカミーユさんから聞いたよ。どうやら元々あそこにあったらしいよ。鉱山を掘っている時、偶然あの空間を掘り当ててしまったらしい」
「なるほど。昔あそこで封印して鉱山を崩したのかも知れないのね」
シオンは腕を組んで頷いた。
今回は運がなかっただけで人為的ではなかったのだ。これで街が正常に戻ればいいなと思うシオンであった。




