討伐開始!
次の日になり鉱山の入口で集合となった。
すでに領主は牢に入っており、暫定的にカミーユさんが王女の代わりにここを統治する事になった。
入口の前には不良騎士団100人と近衛騎士団50人、シオン達メンバーという形となった。傭兵は王女の宣言でここでの仕事が禁止され、船で別の街や国へ移動する事になったのでいない。
「ねぇ?本当に大丈夫なの?使えない騎士の人なんて邪魔なだけなんだけど?」
シオンは領主が私兵として使っていたゴロツキのような騎士達を見てため息を付いていた。
「確かに逃げ出したら自分だけではなく家族も処刑ですから、ある程度は頑張ると思いますよ」
騎士になる時、一代限りの騎士爵位を授かる。故に身元もしっかり調べられているので、そうそう逃げる事はできないのだ。
「では、まず私達が先行して前を行きます。騎士の皆様は後ろから付いてきてください」
冒険者パーティのシオン達が先頭を歩く事になった。
不良騎士達は、先に魔物と戦わなくて良いと内心喜び、近衛騎士達は二十歳前の小娘で大丈夫なのか?と不満げな顔をした。しかしそれは良い意味で裏切られる事になる。
鉱山に入り、進んで行くと魔物と遭遇してからの戦いをその目で見て、自分より圧倒的に強いと認識したのだ。
「さて、そろそろだな」
巨大ガーゴイルのいた区画に入ったので後ろの騎士達に注意を呼びかけた。
「そろそろ強力な魔物や魔族が出てきてもおかしくない。注意してくれ!」
レイの呼び掛けに緊張が走った。
そして緊張感が高まりながら歩いていると、ついに魔族が現れた!
「数日前より上に出てきている!?」
「魔力がより濃くなった影響だろう」
武器を構える。
クスクスッと魔族は笑った。
「餌がやってきたわよ♪」
「本当だわ」
「美味しそう♪」
後ろから魔族と思われる人物が5体現れた。
「いきなり5体か・・・」
油断なく武器を構えるシオン達だったが、後ろの不良騎士達は震えていた。下級魔族とはいえ、魔力の大きさは常人の10倍近くあるからだ。肌でピリピリと感じるのである。
現れた魔族は女性の姿をしたサキュバスっぽい姿をしており、定番のコウモリの羽に猫の耳と尻尾があった。
「精気を吸い取るタイプの魔族かしら?見た感じだと魔法使いタイプで接近戦は弱いと見た!」
シオンは飛び出すと一気に切り掛かった。
しかしスカッとシオンの剣は空を斬った。
「避けた!?」
軽装な格好をしているが予想以上に素早く驚くシオンに魔族は連携して反撃してきた。
魔族は両手の爪を伸ばしてシオンに攻撃してきた。ガギンッと剣で防ぐが、数人がかりでの連携攻撃にかすり傷を負った。そこにレイがフォローに入り、体勢を立て直す!
「大丈夫か!」
「うん、なんとか!」
エリーゼの弓で牽制してなんとか距離を取る事に成功した。
その時、号令が掛かった。
「敵は魔族とは言え少数だ!取り囲んで殲滅せよ!」
不良騎士達は命が掛かっている為、近衛騎士の命令に従わなければならず、号令と共に抜刀して飛び出した。
「ま、待って!敵は強いから──」
余計な犠牲者を出さないようにと考えていた矢先の出来事であった。
しかし数十人で一斉に飛び掛かったのはある意味こうをそうした。10人に満たない犠牲者はでたものの、物量戦に押され、アイリスとエリーゼの援護もあり魔族は討伐された。
「・・・・犠牲者が」
シオンも全くのゼロで済むと思っていなかったが、目の前で何人も犠牲になったことで精神的にくるものがあった。
「シオン、余り深く考えないで。これは騎士団の問題であって僕たちには関係ないことだ」
「そうだよ。他の人の命まで責任なんて取れないんだから」
仲間の慰めもあってシオンはもう犠牲者を出さないように気合いを入れ直すのだった。
「A級冒険者よ、魔族は何体ほどいるのだ?」
「数日前に僕が目にしたのが約30体ほどは確認した。さらに増えているのかはわからない」
「なるほど。今ぐらいの魔族であれば十分に対抗できるが、もっとまとまった数で来られるとマズいな」
部隊長らしき騎士も少し考え込んだ。
「この先に大きく開けた場所がある。もしかしたらそこに魔族が多くいるかも知れない」
「ここで罠を張って釣る?」
「いや、陣形を組んでこのまま進軍する。冒険者達は一度下がってくれ」
シオンは何か言いたそうだったが飲み込んで大人しく下がった。
コソッ
「何かあった時のために退路に罠を仕掛けておくよ」
「ああ、わかった」
後ろに下がったシオン達はコッソリと罠を仕掛けるのであった。
「しかし妙ね。あれだけ私達をバカにしていた魔族が物量があったとはいえ、あっさり殺られたわ」
「確かに。妙だな。余裕があったように見えたが」
「まさかとは思うけど、私達に勝てると思わせて奥に誘いこんでいるのかも」
それでも自分の命を掛けるのかは疑問だけどね。
不安を抱えながらシオン達は進んでいった。




