敵の敵は味方?
シオンはふと気づいた。
「もしかして、あの領主の側近てカミーユさん側だったりする?」
「ふふっ、よく気付いたね。その通りだよ。私の弟なんだ。外部と内部からあの領主をある程度コントロールしようと買って出てくれたんだ。本当に気苦労が多くて申し訳ないと思っているんだがね」
あの領主の側近だなんて私なら1日でも無理だなぁ~とシオンは思った。
「そ、それで如何いたしましょうか?」
「そんなもの決まっておるだろう!さっさと従業員を呼び出して仕事をさせろ!」
「それは無理でございます!魔族がいるんですよ!騎士団や傭兵に倒して貰わなければ死体の山ができるだけです!」
側近の必死の説明にも、言っている意味がわかっていないのか、さっさと作業を再開させろ!と繰り返すだけだった。そんな時だった、鉱山の入口から魔物が飛び出してきたのは!
出てきた魔物はミノタウロス。中級ダンジョンか、初級ダンジョンではボスクラスの魔物だ。
それが二体も出てきて目についた領主の連れてきた騎士団に襲い掛かって行った。
「嘘でしょ!?昨日の今日でミノタウロスなんてありえないよ!」
流石のシオンも予想外の展開に隠れていることも忘れた驚きの声を上げた。
隙を突かれた騎士団は戦うこともせず、蜘蛛の子散らすように全員が逃げ出した。
不幸にも急に襲われてミノタウロスの斧の餌食になった騎士の死体を目の当たりにして、ようやく頭の悪い領主も魔物の恐ろしさを理解したのだったが・・・
遅かった。
すでに逃げ遅れてミノタウロスの斧が頭に迫っている所だ。
このまま殺される!?
そう思った瞬間に、何者かが間に割り込みミノタウロスの腕を切り落とした。
「えっ?だれ???」
それはシオン達もさらに予想外だった。
気付けば後ろから別の王国騎士団の一行が近づいてきていたのだ。
「あ、あれは・・・ライラ・アヴァロン王女殿下の近衛兵だわ!」
エリザが1番驚きの声を上げた。
「王女様の騎士団ってこと?」
「そう、数は少ないですが、王女殿下のみ忠誠を使った側近の騎士団、近衛兵ですわ」
少ないと言っても50名ほどは隊列を組んで進軍していた。
「ま、まさかライラ王女もきているのですか?」
白い綺麗な馬車が隊列の中央にあった。
「不思議だな。ここは王太子殿下の派閥の街だろう?」
「対立している派閥の街にきて大丈夫なの?」
レイとアイリスが不安に思ったが、その理由はすぐに解明された。
「・・・あの騎士強い」
シオンはミノタウロスと戦っている騎士を見ていた。腕を斬り飛ばした後、すぐに痛みに悶えているミノタウロスの首を飛ばし、もう一体のミノタウロスも早々に屠った。
魔物が倒されると、進軍が止まり、馬車から王女ライラが降りてきた。
「危ない所でしたね。マイニ領主ドークズ・ダーティ伯爵」
「は、はひ、助けて頂きありがとうございまふ」
領主は死ぬ寸前で失禁状態の酷い有様であった。
「貴方に生きててもらってよかったわ」
「え、そ、それほどまでにワシを買って頂いていると!?命の恩人である王女様の為ならなんでも致します!」
領主は地面に膝を付いて救世主を見るようなポーズで王女を見た。
「あら♪ではお伝えいたしますね。騎士団長スネーク!魔物討伐ご苦労様でした。続いてこの者の罪状を述べよ」
「はっ!聞け!ドークズ・ダーティ伯爵!鉱山に強力な魔物が現れても討伐せず放置した罪!さらに犠牲になった鉱夫をそのままの状態で鉱夫達を働かせ様とした罪!王国法以上の税金を取っていた罪!まだまだ罪状があるが、以上の罪を持って貴様の貴族籍を剥奪し、禁固刑に処す!」
「・・・はい???」
頭の悪い領主は何を言われたのか理解できていなかった。
「さらに余罪があるので貴様の屋敷を調べさせてもらう!貴様に同行していた騎士団も同罪だ!まぁ傭兵は罪には問えないがこの街での営業は禁止となる」
「えっ???」
まだ理解が追いつかないようだ。
王女一行を見ようと民衆が集まってきていたので、その口上を聞いた民衆は大いに喜び歓声が上がった。
「やった!!!!王女様、バンザーイ!!!!!」
「これで生活が楽になる!」
「王女様!バンザーイ!バンザーイ!!!!」
民衆の歓声を聞きながらシオンはモヤモヤした感じをしていた。
「良いところを持ってかれた・・・シクシク」
「まぁまぁ、こんな時もありますわよ」
ガックリしているシオンを慰めながらエリザはカミーユに言った。
「カミーユさん、王女殿下のところへ行って、これまでのことを話してきてください」
「ええ、わかったわ」
カミーユは弟の様子も気になったため、事情を話に王女の所へ向かった。
「これでこの街はライラ王女の派閥になりますね」
すでに第二王子の派閥の話は誰も聞かなくなった事にエリザだけが表情を曇らせるのだった。




