原因の判明!
シオン達は門から外に出ると街へ流れてくる小川の一つを辿った。
森の中ではあったが、北に向かうにつれて坂になっていた。
「流石に、このような獣道すらない森の坂を登って行くことはエルフの我々でもありませんね」
「そうだよね。高い所から水が流れてきているみたいね」
結構な急坂から小川が流れていた。
はぁはぁと息を切らしながら登っていくと突き当たりにたどり着いた。
「あれ?行き止まり?」
山脈の断崖絶壁にたどり着き、川は岩山の小さな穴から流れてきていた。
「あちゃー、ここからどうしよう?」
原因はもっと山頂なのかな?
腕を組んでどうしようかと相談すると、エリーゼが言ってきた。
「確か、ここを少し迂回すると山脈に入る洞窟があったはずです」
「確かにそうですね!ここから近いです。普段は入ることはありませんが、少し鉱石が取れるので採掘していた場所がありました」
「今は採掘していないの?」
「元々、余り取れませんでしたし、もっと採掘できる場所が見つかって破棄されたんです」
なるほど。
もしかしたら───
「レイ、もしかしたら………」
「余り考えたくないけど可能性はあるね」
ハンターとしての勘が働いていた。
「何か気付かれましたか?」
エリーゼが尋ねたが、シオンは首を振った。
「まだ可能性の話なので、実際に洞窟に着いてから話します。予想で話すと間違ったとき面倒なので」
シオンとレイは集中力を上げて、周囲の変化に気を配った。
エルフの案内で迂回していくと、滑らかな坂が現れ、土の地面から岩山の硬い地面に変わった。
「本当にすぐだったねぇ~」
「ここを上がった先に洞窟があります」
「破棄されてから魔物など住み着かなかった?」
「その危険性があるので、女王様が定期的に結界を張ってくれてたはずです」
また女王様………
「女王様って定期的にここまできて結界を張るの?」
「いえ、結界の水晶があり、城にあるのと連動しているので、お城から魔力を送って結界を維持しています」
…………めっちゃ嫌な予感がするんだけど?
ここまでで女王様の良い感情ないんだよね。
「レイ、少し先に偵察お願いしても良い?」
「了解!僕も嫌な予感が確信に変わってきているからね」
タタタッッとレイは走って先に向かった。
「歩きながら説明するけど見て、かすかに足跡があるわ。恐らくゴブリンのものね」
「ゴブリン!?」
過剰な反応にシオンはびっくりした。
「どうしたの?」
「いえ、エルフとゴブリンは不倶戴天の敵でして、ゴブリンは見つけ次第、滅殺が我が国のもっとうでして」
そうなの?
「ゴブリンは我々を見ると性的に襲ってきますので、必ず殲滅するようにしております」
「なるほどね。エルフさんは美人さんが多いから人間からも狙われているしね」
シオンは頷きながら納得した様子で歩いた。
歩いているとすぐにレイが戻ってきた。
「最悪の予想が当たったよ。ゴブリンが見張りをしている。多分、中で繁殖しているだろうね」
「やっぱりか。なら疫病の原因も『アレ』だね」
「はぁ~だよなぁ~」
レイとシオンは深いため息を付いた。
「あ、あの我々にもわかる様にお話下さい」
エリーゼと他のエルフも心配そうな顔で聞いてきた。
「まず、洞窟に結界は張られていませんでした。見張りのゴブリンが居ることから、中でかなりの数が繁殖していると予想されます」
「そんな!女王は結界に魔力を送って居なかったと言うのですか?」
「まぁ、結界が張られていないのでそうなのでしょう」
エリーゼはショックを受けていた。
国の結界などは魔力の強い女王の仕事だからだ。
「それでね。言い辛いんだけど……」
シオンはエリーゼに申し訳なさそうに言った。
「なんでしょうか?」
「えっと、余りショックを受けないで欲しいのだけど………」
「もう何でも言って下さい!」
もうヤケだと言わんばかりに言い放った。
シオンとレイはお互いの顔を見ながら遠慮がちに説明した。
「今回の疫病なんだけど、多分………ゴブリンが原因なんだよ」
!?
「こんな離れている場所にいるゴブリンがですか?」
「うん、洞窟でかなりのゴブリンが繁殖して数が増えているから……その……ほらっ、生物って食べたら……でるでしょ?」
エリーゼ達もシオンが何を言いたいのか理解した。
「少数なら自然浄化するけど、数が多いと量も増えて浄化が追いつかないから……ねっ?」
そう、疫病の原因はゴブリンが川に流していた排泄物だった。




