惨状と回復
シルフの案内で中央の広場に着くと想像以上に酷い有様だった。そこたら中に死体がそのまま放置されていた。
「私が出ていく前より酷いの………」
真っ青になっているシルフを叱った。
「こらっ!悲壮にくれないの!責任者の所に案内しなさい!」
!?
「わ、わかったの!」
シルフは1番奥の大きな木のお城へ向かった。
しかし、城の門は閉められており、入口には多くの倒れたエルフがいた。
「なんなのこれは!?」
シオンとアイリスはなんとなく事情を察した。
「シルフ、多分城には感染していないものだけ避難させて、感染者を締め出したんだわ」
「そんな酷いの!」
「シルフ、しかたないわ。
為政者として、疫病対策としては正しい判断よ。まぁ、見捨てられた者はたまったもんじゃないけどね」
シオン達は一度広場に戻るとシルフに頼んで妖精達を集めて貰った。
「みんな集めたの!」
妖精達は倒れたエルフの看病をしていたらしい。水を飲ませたり、排泄物の掃除をしたりしていたが、身体の小さい妖精ではできることが限られていた。
「皆さん!私はシルフに頼まれてやってきたシオンとアイリスです!この疫病の対応をお伝えします!」
ざわざわ
ざわざわ
「この謎の疫病を治せるのか?」
「人間でしょう?罠じゃないの?」
「信用できるのかな?」
妖精から様々な声が聞こえた。
すぅ~
シオンは大きく息を吸うと大声で言い放った!
「黙りなさい!今も、疫病に苦しんで死んでいく仲間のエルフが大勢いるのよ!苦しんでいる人を前に、人間とかエルフとか妖精とか関係ないでしょう!!!」
!?
「みんな、シオン達は外に出て魔物に捕まった私を助けてくれた恩人なの!信じて欲しいの!」
まぁ、シルフが言うならとシオンの指示に従うのだった。
シオンは死体は街の外に運んで並べるよう指示。そして生きているが動けないエルフを広場に順番に運んで並べさせた。妖精は身体が小さいが、十匹?ほど揃えば、1人を持ち上げて運ぶ事ができた。
「本当は柔らかい布団に寝かせて上げたいけど、排泄物で二次感染が危ないからね」
「そうだね。取り敢えず、私達はリンゴジュースを大量に作らないとね。私は抗生物質と特製ポーションを作るから、妖精ちゃん達は順番に飲ませていって!少しずつでね。吐き出しても、また飲ませて!」
「了解!!!」
「わかりました!」
それからは時間との勝負だった。少しでも体力のあるうちでなければ助からないからだ。
それと並行して各家の汚れたシーツや家具を焼却処分して、妖精達に消毒もお願いした。妖精は数が多く助かった。食事も普通の食べ物も食べれるが、主食は花の密とのことで、食料には困っていなかったらしい。
それから何日もリンゴジュースと薬を作り続けて、疫病に苦しむエルフに飲ませ続けた。
その間は1日置きに街で心配しているレイ達に、シルフに手紙を届けさせた。
それから1週間ほど過ぎた───
倒れたて息のあったエルフは約350人ほど。
そのうちの100人は亡くなったが、250人は助かった。その間、城の門は開かれることはなかった。
「ふぅ~だいたい落ち着いたかな?」
「そうだね。後は、家屋の消毒を再度しっかりして様子を見るしかないね」
軽症だったエルフはすでに動ける様になっており、シオンの手伝いを行なっていた。
「お二人には本当に感謝しております。家族を救って頂きありがとうございました!」
何度も御礼を言われた。
「そろそろ、レイも呼ぼうかな。疫病の原因を探さなきゃ」
「ええっ、そこまでするの~?」
「当たり前でしょう?私達の旅は急ぎじゃないしね」
シオンは真面目な顔でアイリスに尋ねた。
「それで原因は特定できそう?」
「まだわかっていないけど、多分、水に原因がある可能性が高いと思うわ。そうじゃないと、
いくら疫病と言っても、これだけ短期間に広まる訳ないもの」
「やっぱり………問題は川から流れる水か、井戸水か……」
シオンも薄々感じていた事だった。
「そろそろ、持ってきた食料と水も少ないし、レイに持ってきて貰おうかしら?」
「それがいいわね。いくつかリクエストお願いしようかしら?」
ようやく死んだ街に笑いが戻ってくるのだった。




