疫病………
妖精の爆弾発言に、1番驚いたのはレイとエルザだった。
「う、嘘でしょ!?この近くにエルフの国があるの?」
人が移住して約100年。
極稀に目撃の報告はあるが、近隣にエルフと妖精の国があるなんて知らなかったからだ。
「森の奥は危険な魔物が多いし、騎士団も街の近隣の森しか巡回しないからね。今までよく見つからなかったね」
「エルフの国は目眩しの結界で隠されているからなの。エルフや妖精は人間から狙われるから交流を絶っていたの」
なるほど。これが知られれば大騒ぎになるね。
「それで、どんな症状の病が蔓延しているの?」
シルフは病気の症状を伝えた。
「昨日まで健康だった人が、急に腹痛が酷くて下痢が続いて、干からびたような状態で死んじゃうの!」
「下痢ねぇ~熱は高いの?」
「ううん、熱はなくて低いくらいなの。排泄物も白く濁った色をしたりして、食べ物もすぐ吐いちゃうし、水分補給もままならないの」
それって、パパが昔言っていた疫病かな?
「アイリス、それってもしかしたらアレかな?
「うん、確かシオンのお父さんが『コレラ』って言っていた疫病に似ているね」
シオンはアイリスに対処方法を確認した。
「確か専用の薬はなくて、栄養のあるジュースを飲ませるんじゃなかったけ?」
「そうそう。確か、りんごをすり潰した水に砂糖と塩を混ぜるんだったと思うわ。普通の水だと胃が吸収しないとか。それで脱水症状を防いで自然治癒に任せる感じね。ただシオンのお父さんの記憶から作った私の【抗生物質】なら、治療時間を短縮できるし、合わせて特製ポーション(エナドリっぽいヤツ)なら落ちた体力を多少は補えるはず。問題は感染力が強くて、流れた便などからも感染したはずね」
シルフはエルフの知識でもわからなかった対策がシオン達が知っていた事に驚いていた。
長く生きるエルフの方が知識があると思っていたからだ。動けるエルフが少なくなり、なんとか生活に必要な救援物資だけでも運んでもらえないかと思って、お願いしにきたのだ。
「人助けだし、すぐに動きたいけど、薬の知識のある私とアイリスの2人で行くわ。レイとエリザは街で待機していて」
「シオンどうして!?」
シオンは諭すように言った。
「まずエリザは論外。公爵家の令嬢を疫病が蔓延している場所に連れて行けない。レイはエリザの護衛と、私達に万が一のことがあったらシルフに伝えてもらうから、予備のスタッフとして待機して欲しいの。エルフと妖精の国のことは秘密だから他人には教えることができないしね」
レイは渋々と頷いた。
「この疫病は口から入ると感染するから、マスクを着けていれば、ある程度予防できるし大丈夫よ。すぐに必要な物資を集めて向かいましょう」
「了解!店の果物を買い占めちゃいますか♪」
アイリスの言葉にシルフは良いものがあるよと何か取り出した。
「じゃじゃーーーん!マジックバックなの~~!」
「なんだってーーーー!!!!!!」
シオンは驚いた声を上げたが………
「それでマジックバックってなに?」
ズコッと一同がずっこけた。
「おい、どうして驚いた!」
「いやー、ノリで?」
頭が痛くなる仲間達だったが、シルフが説明してくれた。
「これは魔法の袋なの。こんな小さなバックだけど中が亜空間になっていて、たくさんの物が入るの!」
「おお~それは便利だね。重たい荷物を背負いながら戦わなくてもよくなるよ♪」
予想外にも良いものを手に入れたシオン達は早速、物資を調達して森へと旅立った。
「いや~本当に便利だね、このマジックバックは」
「ふっふっふっ、エルフの国でも数の少ない特別な物なの♪」
かなりの物資を入れたが、まだまだ入りそうだった。
「これで素材の採取も楽になるなぁ~」
丸1日かけてシオンとアイリスは北西の森に足を踏み入れた。
「空気が変わった?」
アイリスは首を傾げたが。
「私はなにも感じないけど?」
シルフが前に出た。
「ようやく着いたの。ここが入口なの!」
シルフは何やら呪文をを唱えると、目の前の風景が変わった。
「おおっ!凄いね!」
「急に目の前に木のお城が現れました!」
森の奥深くに、大きな木を利用した、国というより集落に近いイメージの建物が現れた。
「マスクはいいね?」
「大丈夫。妖精は疫病に掛かってないんですよね?」
「うん。エルフだけなの」
シルフの案内で街の中央広場へ向かった。




