話し合い!
シオン達が戻ってきたのはかなり遅くなってからだ。大猿の数が多すぎたのと、体格が大きかったので素材の剥ぎ取りに時間が掛かったのだ。
「悪い予感はしていたけど、ゆっくり剥ぎ取りしている場合じゃ無かった!?」
街に戻ったシオンは入口の惨状を見て憤りを感じていた。
「戻ったか。まったくシオン君の言う通りだったよ。本当に感謝している」
ブライアンはシオンに頭を下げた。
「それは良いけど被害は?大丈夫なの?」
「まったくのゼロと言うわけにはいかなかった。騎士団を初め、市民にも被害がでた」
!?
「だが君たちが気に病むことはない。これは我々の落ち度であり、シオン君達には助けられたのだから」
ブライアンはシオンに提案した。
「君たちの街が襲われたことなど含めて、この国で何が起こっているのか話し合いたい。明日の昼頃でいいので騎士団の駐屯基地にまたきてもらえるだろうか?その時に謝礼も支払おう」
「わかりました。今日のところは失礼しますね」
「ああ、本当にありがとう」
シオン達はブライアンと別れて宿屋に戻った。
「お疲れ様。みんな怪我とかない?」
「かすり傷程度だよ」
「私も騎士団の皆さんに囲まれていたので無事でした」
「私も大丈夫でしたわ」
レイとアイリス、エリザは元気そうだった。
流石のシオンも久しぶりに命の危険のある敵との戦いで緊張していたのか、どっと疲れが出て宿に着くと、食事と風呂に入ってすぐに眠ったのだった。
そして翌日
「ふわぁ~よく寝た」
たっぷり昼頃まで寝たシオンに他のメンバーはすでに起きて集まっていた。
「あ、ようやく起きたね。すぐ出発する?」
「ごめん、たっぷり寝ちゃった。顔も洗ったし、大丈夫。エリザの件も話したいしみんなで行きましょう」
騎士団の駐屯地に向かうと顔パスですぐに入れてくれた。
「ねぇ?ちょっと気になるんだけど、騎士の皆さん、アイリスとエリザになんで敬礼したりしているの?」
「僕も気になった。なんか変な名前で呼ばれているし」
2人は少し赤くなって俯いた。
「あ、アイリス様!昨日は治療をありがとうございました!」
「聖女様!昨日は助かりました!」
「エリザの姉さん!昨日の魔法はすごかったです!」
「エリザの姉貴!今度、一緒に訓練に参加しませんか?」
シオンとレイは再度、2人を見た。
「聖女様?」
「姉さん?」
2人は目を逸らした。
「なんか騎士の人達が勝手に言っているだけだから!」
「そうですわ!昨日、一緒に戦っただけですから!」
なるほど。
それで懐かれたと言う訳ですか?
「アイリスが聖女ねぇ~?どっちかって言うと魔女の方がイメージあるけどね」
「それならエリザさんは姉さんより女王様かな?」
アハハハハッと、シオンとレイはツボにハマったのか一緒に笑い出した。
「・・・・ねぇ、アイリスさん?」
「ええ、わかっているわエリザさん」
笑っている2人に無言で近づきゲンコツを落とすのだった。
コンコンッ
「入りたまえ」
応接室に入るとブライアンが待っていた。
「2人ともどうした?大丈夫かね?」
頭を抑えているシオンとレイに少し引き気味で尋ねた。
「だ、大丈夫です」
「問題ないです」
涙目のシオン達はソファーに座るとブライアンはまずはと、ぎっしり金貨の入った袋をテーブルに置いた。
「昨日は助かったよ。まずは謝礼から受け取って欲しい」
「ありがたく頂戴いたします」
ここは素直に受け取った。
「それと昨日の大猿の素材だが、どれだけ欲しい?かなりの高級素材だぞ」
「かなりの数がいましたからね。可能なら1割ほど頂ければありがたいです」
ブライアンは驚いた顔をした。
「君達が倒したんだ。眠らせた大猿もいるし、こちらとしては3割ほど渡してもいいと思っているのだが?」
シオンは首を振った。
「この報酬で十分です。これも色を付けてくれているでしょう?素材は1割でいいです。ただ、残りの取り分の金額を亡くなった騎士や市民の遺族に渡してあげてください」
!?
「それはっ!?い、いや、シオン殿の好意に感謝する」
ブライアンは立ち上がって深く頭を下げた。
そして本題へと入った。
「それで本題へ入りましょうか」
「ああ、わかった。正直、まだレザーに人をやったばかりで、確認が取れてはいない」
「まぁ、まだ数日ですからね」
往復で6日ぐらいはかかるよね。
「だが、シオン君は、君達は信用できると確信した。だから君達の聞きたいことにはできる限り答えるつもりだ」
ブライアンはフードを被ったエリザの方を見て言った。
「せめて、名前は偽名を使った方が良かったのでは?エリザ・グランフォード様」
「やっぱりバレてましたわね。あなたがここに左遷されていたなんて、元騎士団長ブライアン」
シオンは予想していたが余り興味の無かったアイリスは驚きの声を上げるのだった。




