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婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜  作者: naturalsoft


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見えざる敵の影

後方に戻るとほとんどの戦闘は完了していた。眠っていた大猿を倒した30名の騎士も合流して、幅広い陣形で対応したからだ。


「お前達、無事か!?」

「我々は大丈夫です!ブライアン隊長もご無事で何よりです!」


騎士の1人が敬礼しながら報告した。


「緊急事態である!森の奥で魔道具を発見した!これは魔物寄せの魔道具らしく、今回の大猿の襲来は人為的な物の可能性が高くなった!」


!?


「騎士団を二手に分ける!30名の騎士達は倒した大猿の処理を頼む。万が一、再度大猿が群れで襲ってきた場合は速やかに撤退せよ!残りはすぐに街へ戻るぞ!手薄になった街が襲われる可能性があるからだ!」


よく訓練されている騎士達はすぐに隊列を組み直して二手に分かれた。


「これだけの大猿の群れを相手に、1人の犠牲者もなく倒せるとはハンターの力が大きかった。感謝する!」

「あれ?私達も戻るよ?置いていくつもり?」


「もし街が襲われていたら対人戦になる。冒険者である君たちの手を借りるわけにはいかない。ゆっくり素材採取でもしてから戻ってきてくれ。戦争は騎士団の仕事だ!」


ギランッとブライアンの目が鋭くなった。


「了解!まだ襲われたと決まった訳じゃないしね」

「感謝する!倒した大猿の素材の何割かは報酬とは別に譲ろう。良い金になるはずだ」


「感謝します♪」


そう言ってブライアンは先に戻って行った。


「レイ、まだ周囲に生き残りの大猿がいるわ。安全のために狩ってきてくれる?」

「了解だよ。素材の剥ぎ取りに時間がかかりそうだね」


苦笑いしながらレイは走っていった。


「すみません、騎士の皆さんは素材の剥ぎ取りはできるんですか~?」

「はい、辺境にいる我々も魔物を狩ったとき素材の剥ぎ取りをするようにしていますので、大丈夫です」

「よし!数が多いから順番にやっていこう!もし、日が落ちてきたら勿体無いけど焼却処理にしましょう」


こうしてシオンと30名の騎士達は淡々と80匹前後いる大猿の解体をしていくのであった。


一方その頃ーーーーー


森を抜けて見晴らしが良くなった所で、街から狼煙が出ているのが見えた。


「本当にシオン君の予想通りになったな。こちらも狼煙を上げろ!今から戻ると味方を安心させるのだ!」


唯一の失敗は森に入るので馬を連れてこなかったことだ。


「急ぎつつ、早足で向かうぞ!」


走ったりして疲れ切っていては、現地について戦えない。故に、体力を残しておく必要があるのだ。

ブライアンが街に到着したのは30分ほど経ってからだった。街の南門が襲撃され、すでに門は開かれ市街戦になっていた。


「待たせたな!大丈夫か!?」


上手い具合にブライアンの部隊と在留していた騎士団で襲撃者を挟み撃ちにすることができたのだ。


「隊長!よく戻られました。賊は300人ほどの規模の盗賊なのですが、すでに街に入り込んでいた仲間に門を開かれ、数で押されて防御陣形を敷いていた所です!」


「よし!よく踏ん張ってくれた。一気に賊を叩くぞ!」


ブライアンを筆頭に精鋭20名の騎士達が陣形を組んで前にでた。相手は数が多いが烏合の衆・・・いや、もしかしたら他国の?ブライアンは相手を舐めず、本気で戦うと決めた。

挟み撃ちにした所で敵に混乱が見られた。


「殺せ!俺たちの方が数は多い!押していけ!!!」

「後ろから援軍が来ました!」

「数はたいしたことはない!このままヤレ!!!」


どうやら統率が取れておらず、複数のリーダー格が命令しているようだった。

ブライアンの圧倒的な強さもあり、すぐに敵の動きが鈍くなった。

入口から入ってきたブライアン達だったが、数的に逃げ道を完全に防ぐことはできず、旗色が悪くなった賊は早期に撤退をしていった。


いや、正確には散り散りに逃げていったと言うのが正しかった。


「ふぅ、思ったよりたいしたことがなくて助かったな」


ブライアンは安堵の息を吐いた。


「生き残った賊から情報を聞き出せ。自害させるなよ?」

「はっ!」


部下に指示を出してから1人で考える時間ができた。

確かに今回は何とかなったが、もし、大猿の対処を誤っていたら?援軍に戻って来れなかったら?


何か一つでもミスっていたらこの街はどうなっていたことか。

すでにブライアンの中ではシオン達の疑いは無かった。


今回の騒動の一件には何者かの影があった。

左遷されたことに恨みはない。だが、街の人々を巻き込むことは許せなかった。


「市民に被害は出たか?」

「それが・・・10名にも満たないですが、守り切れず・・・」


ブライアンは拳を強く握り、部下を労ったあとシオン達を待つのだった。





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