相談
あれから、近隣にはない珍しい薬草など採取して宿屋に帰ったシオン達は、まず宿屋のおじさんに話を聞いた。
「これっ森で見つけたんだけど知ってる?」
タマゴを見せるとおじさんは知っていると驚いた顔をした。
「よく見つけたな。ウッドエッグというタマゴの形をした木の実なんだ」
「食べられるのですか?」
「ああ、高級食材だよ。ただこの実を主食とする魔物がいてな。この実を見つけたらすぐに逃げるよう街の人は言われているんだよ。最近は騎士団の皆さんが巡回して、魔物を間引いてくれているから安全になったけどね」
あれ?っとシオンは思った。
「この実、街からすぐの森に成っていましたけど?」
「なんだって!?」
おじさんは驚きの声をあげた。
「森に入ってすぐの所に多く実っていましたよ」
「それはまずい!この実を主食としている魔物が街の近くに現れる!?お嬢ちゃんたち、すまないが騎士団の駐屯地に行って、この事を伝えてもらえないか?詳しい場所も聞かれるだろうから」
「うん、別にいいよ」
「ありがとよ。うまい飯用意しておくからな!」
「それは楽しみです」
もう夕暮れではあったが騎士団の駐屯地も気になったので行ってみることにした。
「街外れの・・・あそこか」
街の城壁の外にあったが、トンネルのようなレンガの通路で繋がっており、無骨なデザインだが堅実的なデザインの基地であった。
「失礼!本日はどんな御用でしょうか?」
門番の騎士に事情を話した。
「このタマゴの実が森の入口近くに実っていたので、ご報告に来ました」
「まさか、ウッドエッグ!?これは大変だ!すぐに知らせてきますので、ここでお待ちください!」
騎士は急ぎ基地の中へ入ろうとしたがーーーー
「それにはおよばん!そのまま通していい」
「あれ?ブライアンさん?」
「まさかすぐに会うとは思わなかった。ウッドエッグが近くで実っていたと聞こえた。すぐに来て欲しい」
シオンとレイは頷くとそのまま中に入った。
応接室に通されるとさっそく本題を切り出された。
「君たちはその実がどんな物か知っているのかな?」
「いえ、初めてみる物だったので、現場で毒がないかなど確認して持ち帰り、街の人に聞いて初めて知りました」
「うむ、そうだろうな。ワシもここに赴任するまで知らなかったからな」
ワハハハッと笑うと急に真面目な顔になった。
「この実自体は珍しいというだけで問題はない。店に売ればそれなりのお金にはなる。ただ、この実を主食にしている魔物が厄介なのだ」
「どんな魔物なんですか?」
木の実を食べる魔物なんて草食動物じゃないの?
「人の2~3倍の大きさのある大猿なんだ」
ズルッとシオンは滑った。
「たかー「たかだか大猿と侮るよ?近隣の魔物の最上位に位置している魔物だ」
マジか!?
「毎年、何人もの仲間が大猿に殺されている」
「何か特殊な能力でも持っているんですか?」
たかが猿だよね?
「能力はただ一つ、近くにいる同じ仲間にテレパシーで会話ができることだ」
「それは・・・やばいわね」
「えっと、そんなに大したことない能力に思えるけど?
シオンは真面目な顔になったがレイは、いまいちピンときてなかった。
「もしかして知能が高いの?」
「その通りだ。気付いたか?」
???
レイだけ理解できず尋ねた。
「ごめん、話が見えない。説明して欲しいんだけど?」
「人に近い大猿は知能が高いみたいなの。つまり私達の得意な罠を仕掛けると、罠に掛かった大猿は仲間にそれ伝える訳よ。そしたら次からかからなくなるでしょ?」
!?
「もし戦争で使えたら便利だよね。伝令が一瞬で伝わるから」
「あまり考えたくない能力だな」
そこまで聞いてレイは自分の考えの甘さを恥じた。
「それに強い人間がいるとか、ここに好物の果物があると知れば、仲間を呼んで集まるって訳ね。その厄介な大猿が」
「そうだ。すぐに街の近くに生えている木を切るか、燃やさなければ多くの大猿が街の側にやってくる。大猿は雑食なので肉も食うのだ」
重い沈黙が流れた。
それは人間も喰うという訳で──
「すぐに動きますか?」
「いや、もうすぐ日が落ちる。明日の日の出と共に向かう。出来れば君達にも協力をお願いしたいのだが?」
「タダ働きはしないよ?」
「わかっている。この街の冒険者ギルドに指名依頼を出す。騎士団からきちんと依頼料を支払うつもりだ」
「それなら全力で手伝うよ♪」
シオンは現金なヤツなのだ。
それから一度宿屋に戻ってアイリスとエリザにも説明するのだった。




