旅の始まり☆
シオン達は朝早く出発した。
「今さらですがこの馬車、驚かれませんか?」
「そだね~街の周辺は、知られていたから大丈夫だったけど、知らない街の人は驚くかも」
運転席でシオンが呑気に言った。
「そこで冒険者のAランクハンターの肩書きが効いてくるんだよ」
「冒険者でAランクは凄いんですの?」
「結構すごいよ。アヴァロン王国では10人もいないから。Aランクからは一代限りの貴族の席が与えられるし、カードを見せれば国境の通行税など免除されるんだ」
「なるほど。シオンとレイはその数少ない冒険者なんですのね~」
そう言ったエリザの言葉にアイリスが付け足した。
「でもシオンの両親はもっと凄いよ。『大陸』でも5人しかいないSランク冒険者だからね」
「まぁ!そこまで凄い方達だったのですね」
「この馬車が無駄に立派なのは、貴族の馬車だと思わせる為でもあるんだよ」
「なるほど。普通の平民なら貴族の馬車に近付こうとは思いませんわね」
普通ならね。
「最近では有名になって盗賊ホイホイになっているんだけどなぁ~」
「えっ、そうなんですの!?」
「厳密には違うけど、飼いならされたAランク魔物のグリフォンなら金貨千枚でも欲しい人はいるだろうね。最近では盗賊達にも情報が出回って、襲われなくなったけど」
「私達なら手加減できるけど、グーちゃんは手加減出来ないから」
アイリスの言葉にエリザは森の出来事を思い出した。
「あ、あぁ~そういう事ですのね」
手を出してグリフォンに殺された盗賊が多数いるということですか。
それからシオン達は何日か掛けて辺境の町スローに辿り着いた。
辺境の町と言っても、それなりに大きな街であり、騎士団向けの食事処や娼館など多くあった。
「いやー、まさか街の入口でトラブルとは思わなかったねー!」
「笑いごとじゃありませんわ!」
エリザはプンプンと怒っていた。
街の大門の所で衛兵に驚かれ、緊急時の笛を吹かれたのだ。
それから駐屯地に居た騎士団が出張ってきて囲まれたという訳である。
「落ち着いて~~!私はAランク冒険者のシオンです!この騎獣はしっかり手懐けてありますので武器を閉まって下さい~!流石に危害を加えると暴れますので!」
操縦席からシオンは騎士団に大声で叫んで事情を説明したのである。身分証のAランク冒険者のカードは思いの外に役にたった。
「これは失礼した!私はこの街の騎士団を預かる部隊長ブライアンだ」
「いえいえ、お騒がせして申し訳ありません」
ブライアンは頭を下げたが尋ねた。
「この街にはどのような要件で参られた?」
「二つあります。この近辺でしか取れない素材採取をしにきたのと、ここの騎士団の動向を探るためにきました」
ちょっとシオン!?
隠すって言葉知ってる!?
「ほう?我々が何か?確かに王太子殿下の命令で、街道の警備に手が回っていないのが現状で、申し訳なく思ってはいるが、我々にやましいことなどありはしないぞ」
長年に培われた覇気が目の前の部隊長から放たれた。
「・・・貴方、本当に地方の部隊長なの?こんなのがゴロゴロしていたら私も、逆に安心できるんだけどね」
シオンは軽くいなして続けた。
「一週間ほど前に南のレザーの街で王都の近衛騎士団がやってきて、特別徴収だと言って、街の共同倉庫から商品を根こそぎ持っていって、さらに近くの民家からも素材や売上金を強奪していったんだけど、それでもやましいことがないといえるの?」
!?
「な、なんだと!?それは本当か!」
「本当よ。嘘だと思うなら使いの者をやって調べてきなさいよ。ってか、知らなかったの?」
「・・・まさか、そんなことが。シオンとやら、貴殿はしばらくこの街に滞在されるのか?」
少し考えながら答えた。
「そうね。一週間ほどは滞在を考えているわよ」
「もし、その話が本当なら申し訳なかった!少し、事実確認の時間が欲しい。その時、改めて話がしたと思うのだが?」
「ええ、それで良いわよ。それじゃ、通らせてもらうわね」
こうして、シオン達は街の中に入ることができたのだった。




