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2話 鬼瓦一、出勤

 翌朝


 AM3:00


「ふぅ……」


 はじめは、日課の早朝鍛錬を終える


「そろそろ準備するか……」


 時計を見て、時間を確認したはじめは、風呂に入り汗を流し、身嗜みを整えてから荷物を纏めて、屋敷を出た


「車は……いらないな」


 屋敷から基地までの送迎は不要と判断したはじめ

 荷物を持って基地に向かう

 基地までの道のりは、車で送迎された時に覚えている


 車では数分だったが、徒歩では30分はかかってしまった



「早めに出て正解だったな」


 腕時計を確認して呟くはじめ

 時刻はAM4:30

 早すぎる時刻である


「門はやっぱり開いてたな」


 夜勤もあるので、基地の門は基本閉まらない

 当然、基地に入る扉も鍵は開いている

 はじめは、基地に入る


「えっと……こっちだったな」


 はじめは昇降機に向かう

 そして5階に上がり、廊下を歩く

 撫子隊の執務室の前に着く

 当然、執務室の電気は消えてて真っ暗だ


「ここが隊の執務室だから……こっちだな」


 はじめは1つ左の扉に移動する


「鍵は……どれだ?」


 事前に渡された鍵、3つある

 1つははじめの執務室の鍵

 1つは撫子隊の執務室の鍵

 1つは屋敷の鍵である


「これは違うか……おっ、これか」


 カチャンと鍵が開く音

 扉が開く


「電気は……あった」


 はじめは壁にあるスイッチを押して、執務室の灯りを付けた


「さて……」


 はじめは仮眠室に荷物を運ぶ

 着替えとタオルなどの日用品

 風呂場には身体を洗う為のボディタオルと洗面台に歯ブラシや髭剃りなどを用意する


「こんなところか……ふむ」


 時計を見る、時刻はAM5:00である


「食堂に行ってみるか」


 基地の食堂は24時間開いている

 様々な時間に活動している軍人に対応するためだ



 はじめは電気を消して、鍵を掛け、食堂に向かった


 ············


「ほぉ……」


 はじめは品揃えの豊富さに感心する

 数種類の定食だけだと思っていたら、色んな種類の料理が選べるようだった


「そのうち制覇してみるか……」


 そう呟いて、料理人のもとに向かう


「あんた新人かい?」


 中年の女性がキッチン側から声をかけてきた


「ええ、今日から配属されます」

「そうかい、頑張りな! 何食べるんだい?」

「大盛りご飯と味噌汁、それと胡瓜の漬物と沢庵を」

「……それだけかい?」

「はい?」

「あんたもっと食べな!! 若いんだから!! 身体も細いし!! 肉つけな!!」

「!?」


 女性はそう言うと、丼に山盛りにご飯をよそい


「味噌汁は白と赤と合わせどれが良いんだい?」

「し、白で……」


 丼に味噌汁を大量に入れる


「ほい漬物!!」


 胡瓜2本分の漬物と大根1本分の沢庵を盆に乗せる


「そして肉!!」

「うわ……うわ……」


 流石にはじめは戸惑った……大皿に山盛りの豚の生姜焼きである


「これだけ食えばデカくなれるよ!!」


 女性は笑う……完全なる善意である


「……」


 女性の善意を無下にするわけにはいかない


「ありがたくいただきます!!」


 はじめは微笑み、空いてる席に料理を運んだ


 そして椅子に座り……


 パン!!


 両手を合わせ


「いただきます!!」


 はじめの激闘が始まった


 ·········


 パン!!


「ごちそうさまでした!!」


 はじめは食べ切った

 米粒1つ残さず食べ切った


「ふぅ……」


 はじめは水を飲み、一息つく

 そして空になった盆を運んだ


「良い食べっぷりだったよ!!」


 女性が笑う


「とても美味しかったです、昼もよろしくお願いします」


 はじめはそう答えて食堂を後にした


 後に、食堂に居た他の軍人(2人)が其々の部隊の者に話す

『ヤバい大食いの新人が入隊してる』



「…………」


 はじめは腕時計を確認する

 時刻はAM6:30である


「確か大佐に会うのは8時……7時30分まで執務室で引き継ぎの資料でも確認するか」


 はじめは自分の執務室に向かう

 昇降機に乗り、廊下を歩き


「んっ?」


 執務室の灯りが付いているのが、扉の小窓からわかる


「……」


 はじめは気配を殺し、足音を消して、扉の前に行く

 一気に扉を開けて、執務室に入る

 侵入者の姿を確認して……


「きゃあ!?」

「……ハイリ伍長?」

「鬼瓦少尉!?」


 そこには、机を布巾で拭いていた伍長の姿があった


「……掃除してくれていたのか?」

「は、はい……これも秘書の仕事ですので」

「そうか、ありがとう……驚かしてすまない」


 掃除は別に秘書の仕事ではないだろ?って言いたかったが……本人が自らやってる事をとやかく言うのは気が引けた……

 機会を見つけて、無理しなくていいって伝えておこう

 はじめはそう考えながら、自分の執務用の椅子に座る


「引き継ぎの資料は……これか」


 はじめはファイルを取り出し、開く


 ···········


 AM7:30


「そろそろか」


 はじめは、丁度読み終えたファイルを仕舞うと、椅子から立ち上がる


「鬼瓦少尉、あっ、気付かれてましたか」


 同じ時、隣の部屋に待機していたハイリ伍長が扉を開けて来た


「これから柴田大佐の所に行ってくる、戻る頃には隊員は全員出勤してるかな?」

「8時には全員揃っています」

「じゃあ、そうだな……俺がここに戻ったら、昨日みたいに皆を集めて貰えるかな?」

「はい!」


 はじめはハイリ伍長に見送られて、執務室を出た


「基地長室は8階だったな」


 ············


 はじめは基地長室に向かう

 真っ直ぐ向かったら、数分で到着する距離


(流石に早すぎるか……)


 はじめは腕時計を確認する


(道中に何の部屋があるのか見ながら行くか)


 はじめは周りを見渡しながら歩く


(といっても、資料室ばかりだな……たまに管理室1とか2とかがあるくらいか)


「あっ」


 足を止める、そして扉を見上げる


「第6陸軍……陸軍の執務室の1つかな?」

(恐らく、大佐の護衛をしてるのは、この部屋の軍人達かな?)


「おっと、50分か、そろそろ真っ直ぐ向かってもいいか」


 はじめは歩く


 そして基地長室の前に着く

 扉の前には2人の軍人が立っていた


「55分、ちょうどいいかな」

「君は?」


 左側に立つ軍人が口を開く


「本日から配属される、撫子隊隊長鬼瓦一少尉です」

「失礼しました少尉殿、自分は村上春樹(むらかみはるき)上等兵です」

「私は森川尚道(もりかわひさみち)上等兵と申します」


 右側に立つ軍人も挨拶をする


「基地長に挨拶ですか?」

「ええ、赴任の挨拶に」


 はじめは村上上等兵と話す

 時計を見ると58分を指していた


「そろそろですね」


 はじめは扉をノックする


「どうぞ」


 部屋から朝島大尉の返答が返ってくる


「失礼します」


 はじめは基地長室に入室した


(……あれ? この人は……)


 はじめは部屋に入って、前の椅子に座っている男を見る

 彼が基地長である柴田大佐なのは間違いない、そして、はじめは彼に1度会ってることを思い出した



 ··········


 はじめが基地長室に入ってた頃

 撫子隊の隊員それぞれの席に着いて軽く雑談をしていた


「この後、例の隊長殿が来るんだよな?」


 防人上等兵がハイリ伍長に言う


「はい、柴田大佐への挨拶が済み次第、執務室に戻られますので、それから撫子隊へ着任の挨拶をするそうですよ」


「ふーん、正直さぁ、どうなんだ? 見た目はまだガキだが、戦えんの?」


「防人上等兵、上官に対してそう言うのは不敬ですよ」


 ハイリ伍長が眉をしかめる


「そう言うがなぁ、この間まで学生だったんだろ? 皆はどう思ってんだ?」


「こうして……隊長として……赴任してきた以上……実力は……あるかと」


 時頼上等兵が答える


「私はよくわかんないっす!!」


 小早川二等兵が答える


「私はどうでもいいかな〜? それよりも、少尉が隊長になるって事は〜あれでしょ? 撫子隊も中隊になるって事だよね〜? 予算増やしてくれたらいいなぁ〜装備の改造とかしたいし〜」


 鈴木軍曹は答える

 はじめへの隊員の評価は微妙なようだ


「隊長……じゃねえや、副隊長はどうなの? 何も思わねえの?」


 防人上等兵は華岡曹長を見る


「……普通の学生なら、私もあまり期待はしないさ……そうだな、先に言っておくか」


 華岡曹長は隊員を見渡す


「彼は『瀬戸内』の生き残りだ」

『!?』

「?」

 小早川二等兵以外が驚いた


「瀬戸内って、5年前の?」


 防人上等兵が聞く


「あぁ、柴田大佐から聞かされて、当時の資料を見せられた、間違いない」


「瀬戸内ってなんすか?」


 小早川二等兵がハイリ伍長に聞く


「今から5年前に、訓練生と学生計50人と、教官として少尉3人、中尉1人で鬼人の訓練合宿を瀬戸内海で行っていたの……そこに中隊規模の敵鬼人の襲撃があって……」

「中隊規模……ってことは少なくとも15機は鬼人が襲撃してきたって事っすか!?」

「ええ、たいして訓練生側は訓練用の鬼人5機しか無かったの、教官の鬼人はすぐに破壊されてね」

「ええ!? じゃあ全滅したんじゃないっすか!? 訓練用のなんて玩具みたいなもんじゃないっすか!」

「そうね、実際多くの犠牲は出たわ」

「教官として参加した少尉と中尉は死亡、学生と訓練生も多くが死亡した、生き残りは10人、そのうち5人は重傷で今もマトモに動くことも出来てない」

「…………」


 華岡曹長が説明を変わって答えた


「だがな、襲ってきた中隊は1機だけ逃げたが、他の鬼人は破壊された」

「ふぇ!?」

「生き残りは10人っと言ったろ? 5人は重傷だが、残りの5人は軽傷で済んだ」

「な、なんでっすか?」

「訓練用の鬼人に乗り込んだんだ、そして敵の鬼人の装備を奪い、応戦した、そして敵を撃退したんだ、その5人は『瀬戸内の生き残り』として当時の軍内で話題になったんだ」

「う、うへぇ……」

「鬼瓦少尉はその瀬戸内の生き残りだ、実力は間違いないだろう」

「へぇ、じゃあ期待させてもらうか」


 防人上等兵はニヤリと笑った


 ··········


 はじめは部屋の真ん中に進む、そして柴田大佐に礼、朝島大尉に礼、柴田大佐に向き直し


「鬼瓦一少尉! 本日より中国第3基地に着任致しました!!」


 敬礼をしながら言う


「うむ、よく来た鬼瓦少尉」


 柴田大佐はそう言って吸ってたタバコを消す


「さて、説明の前に、俺の事は覚えているか?」

「はい、瀬戸内の時に1度お会いしました!」


 瀬戸内の出来事、その事情聴取の為に色んな人が訪れた

 生き残ったはじめへの事情聴取を担当したのは当時中佐だった柴田が行ったのだった


「そうか、覚えていたか、あの子供が随分と立派になったものだな、お前のその後の活躍は耳に入っていた」

「はっ! ありがとうございます!」

「撫子隊の隊長に任命したのも、お前の活躍を評価したからだ、期待しているぞ」

「はっ!!」

「では……鬼瓦少尉、本日より貴官を撫子隊の隊長への着任を認める、これより、撫子隊を小隊から中隊扱いとする」


 ポンッと書類に柴田大佐は判を押す

 書類を朝島大尉が受け取り、ファイルに仕舞う


「朝島、あいつらを」

「はい、お二人共、お呼びですよ」


 朝島大尉が隣接してる扉に呼びかける、扉が開き、2人の軍人が入ってくる


「はじめまして、桔梗隊の隊長の前川燕理(まえかわえんり)中尉です」


 女性の前川中尉が挨拶し


「はじめまして、牡丹隊の隊長を務めてる轟々轟(ごうごうとどろき)大尉です」


 老婆の軍人が挨拶する


「はじめまして! 撫子隊の隊長を務める、鬼瓦一少尉であります!」


「桔梗隊、牡丹隊、撫子隊、中国第3基地ではこの3隊が鬼人を扱う部隊となります、あとは陸軍と空軍と海軍もありますが……そちらの紹介は会議か合同演習の時で良いでしょう、既に隊長達には資料を渡してますので、あちらは把握しております」


 朝島大尉はそう言うと、数枚の書類をはじめに渡す


「陸軍6部隊、空軍3部隊、海軍4部隊の隊長と副隊長の詳細です、目を通しておいて下さい」


「はい!」


「諸君、中国第3基地は主に中つ国や露からの襲撃を防ぐ、防衛戦が主な戦いになる、活躍に期待しているぞ」


『はっ!!』


 こうして、はじめの挨拶は終わった












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