1話 撫子隊
読みにくいので一の名前表記を『はじめ』にします
迎えの車に乗ったはじめ
車内では運転席に運転手の男性
後部座席の右側、運転席の後ろにはじめ
その隣にハイリ伍長が座っている
はじめはハイリから書類を受け取る
「こちらが基地の地図になります」
「ありがとう」
はじめは地図に目を通す
(正門から入って、左側が居住区、右側は工場系、中央が執務室がある建物か……基本は中央で仕事を進めて、たまに工場で装備の点検とかかな?)
「……訓練用の敷地は描かれてないようだが?」
「こちらになります」
「2枚目か……」
訓練用の敷地は2箇所、基地の敷地の奥に1つ
地下にもう1つか……
(両方広いな……)
「地上が主な訓練用で、地下は射撃用って所かな」
「その通りです」
(基地の周りには何もないようになってるが、撃った弾が遠くまで飛んで、街に被害が出たとか、通りすがりの車両に当たったとかあったら困るからな)
「今日は部隊の皆は集まっているのかな?」
「はい、全員執務室にて待機しております」
なら、今日でも顔合わせが出来そうだな
そんな事を考えながら、基地に着くのを待った
··········
ーーーはじめ視点ーーー
駅から車で20分
車が停車する
そして、ギギギと外から音が響いてくる
門が開く音か?
車が再び走り出し、2分後に駐車した
「少尉、基地に到着しました」
伍長はそう言うと、車から降りて、車のドアを開いた状態で支える
「ありがとう伍長」
俺は車から降りる、伍長が運転手と話してから、ドアを閉める
走り出す車
「それでは行きましょう、こちらです」
伍長が先を歩くのでついていく
撫子隊の執務室に向かう道中
「おや? ハイリ伍長」
「!」
女性に呼び止められ、伍長は女性に敬礼する
「そちらの少年は?」
「はい! 彼は明日から撫子隊の隊長として配属される、鬼瓦少尉殿であります!」
女性が俺を見る
俺も敬礼する
「鬼瓦少尉であります!」
「君が例の……こほん、『朝島ユリカ』、階級は大尉で、柴田大佐の秘書を勤めています」
朝島大尉が敬礼する
「ちょうど良かった、明日の8時は大佐も基地長室に居ますので、その時間に挨拶に来て下さい」
「了解しました!!」
「それでは」
大尉はそのまま去っていった
「それでは少尉、こちらです」
伍長が案内を再開する
···········
道中で食堂や、他の部門の紹介をしてもらいながら、昇降機に乗る
「撫子隊の執務室は5階にあります」
「5階ね……伍長、基地は全何階だ?」
「地上8階、地下に3階の全11階になります」
「全11階ね……成る程」
多分9階があるなこれ
外から見た時と、実際に中に入って、1つ1つの階の高さを見たけど、僅かに合わない
もう1階分のスペースはあるぞ
まあ、伍長は知らないみたいだし、機密なのかもしれない
いつかわかればいいかな
「少尉、到着しました」
「おっと、すまない、考え事してた」
俺達は昇降機から降りる
そして、廊下を進むと……
「少尉、こちらが撫子隊の執務室になります、左のもう1つの扉は、少尉の執務室になります」
「別室なんだな」
「中で繋がっていますけどね、どうぞ」
伍長は俺の執務室の扉を開く
俺は執務室に入る
「それでは、私は隊の皆に声をかけて呼んできます、少尉は寛いでお待ち下さい」
「わかった、案内ありがとう伍長」
伍長は礼をしてから、廊下から隣の執務室に入っていった
「ふむ」
俺は執務室を見る
目の前には四角のテーブル、それを囲むようにソファーが置かれている
来客の対応用かな?
奥には執務用の机がある……横に長いな
右側には1つの扉
これが隣の執務室と繋がってる扉だな、明かりが付いてるし、話し声が微かに聞こえる
左側には3つの扉
「何の扉だ?」
左側の扉を見る
先ずは1番左の扉を開く
「ここは、仮眠室か」
4畳くらいの部屋にベッドと机が置いてある
壁には服を掛ける為のフックがつけられていた
「寝るだけならこの広さで充分かな、広いくらいだな」
扉を閉めて、隣の真ん中の扉を開く
「トイレか、用はここで足せって事だな」
扉を閉めて、隣の1番右の扉を開く
「洗面台と、浴槽とシャワーか……浴槽っていうかシャワー用の空間だなこれ」
ベイコク式のシャワールームって、こんな感じだったよな?
浴槽とカーテンで、シャワーが飛び散らないようにするやつ
洗面台は歯磨きとか、身嗜みを整えるのに使えるな
「ふむ……寝る場所があってトイレがあってシャワーもある……」
ここ人住めるな……
「随分と高待遇だな……」
隊長の扱いってこんなに優遇されてるものなのか?
なんか裏がある気がして、不安なんだが……
俺は扉を閉めて、机に向かう
「既に俺の札があるのか」
撫子隊隊長 鬼瓦 一
「誰か掃除してるのか?」
机を指でなぞる、埃などは無かった
仮眠室とか見ても思ったが、誰かが定期的に掃除してる様だ
清掃の人間が雇われているのか、もしくは隊の誰かが掃除したのか
「まぁ、これからは自分でやるけどな」
掃除用具の場所を確認しておくかな……
コンコン
廊下の扉をノックされた
伍長だろうな、隣の扉からでも構わなかったのだが……
「ハイリ伍長です、撫子隊の隊員と挨拶に参りました」
俺は窓に写る自分におかしなところはないか確認する
鏡、用意しとこう
「どうぞ」
俺は机の前に立つ
座って迎え入れるかとも考えたが……偉そうだし、相手に失礼だからやめた
「失礼します」
ハイリ伍長が扉をあける
そして、どうぞっと隊員達を中に招く
「失礼します」
「お邪魔しま〜す」
「失礼いたします」
「邪魔するぜ」
「失礼しまっす!!」
隊員達が入ってきた
写真で顔を知っていた、俺の記憶通りなら、階級が上の者から入ってきたな
ハイリ伍長が最後に入って扉を閉める
そして、ハイリ伍長は俺の左隣に、隊員達は俺の前に移動した
全員の移動が終わり、姿勢を正す
…………
えっと……こういう時は俺から発言するんだよな?
「コホン、撫子隊の諸君、正式には明日からだが、撫子隊の隊長として配属される、鬼瓦一少尉です、まだ若いですが隊長となる以上、誠心誠意、国の為、軍の為に尽くす所存であります、以後よろしくお願いします!」
こ、こんな感じで大丈夫か?
初めての配属でいきなり隊長だから、勝手がわからん
俺が不安を感じたが……
「はい! よろしくお願いいたします!!」
華岡曹長がそう言って敬礼する
隊員達がそれに合わせて敬礼した
よかった、変な空気にはならなかった
「それでは、隊員の紹介を……華岡曹長、お願いします」
ハイリ伍長が進行する
「華岡鈴蘭です! 階級は曹長! これからは隊の副隊長として、隊長を支えて参ります!!」
凛とした女性って印象だ
今まで隊長をしてたからか、人を纏めるのはうまそうだ
眼を見るに、俺の事を邪険にする気はなさそうだ
一先ず安心だな……
「よろしく頼む! 華岡曹長!!」
副隊長って呼んだほうが良かったか?
「次は鈴木軍曹、お願いします」
「はいは〜い、鈴木幻菜で~す。 階級は軍曹、機械関係を主に扱いま〜す」
……気が抜けるというか、間の抜けた話し方というか
これ誰も怒らないのか?
まぁ、軍曹までなってるし、問題を起こしたわけじゃないから、俺がとやかく言うのは止めとくか
問題が起きたら怒るけどな
「よろしく頼む、鈴木軍曹!」
「次は時頼上等兵」
「はい、時頼楓と……申します……階級は上等兵になります……戦場では……狙撃を……しております」
この人も特徴的な話し方をするな……
でも、訓練の成績を見たら、銃の命中率が高いんだよな……
常に冷静でいられるって難しいことだ、彼女はそれを熟せるって事だな
「その狙撃の腕、期待してるぞ! 時頼上等兵!」
「次は防人上等兵」
「おう! オレは防人裕香だ! 階級は上等兵! 戦場では前線で暴れるぜ!」
「防人上等兵、その口調は直すように言いましたよね?」
「睨むなよハイリ伍長!」
ふむ、良く言えば元気、悪く言えば無礼って感じだな
だが、彼女も優秀な兵士なのは間違いない
……暴力沙汰起こしてるんだよな
不快にさせないように気をつけるか
「まあ、いきなり年下に敬語を使えと言われても、すぐに対応出来ない事もある、俺は気にしないぞ?」
そう言って、防人上等兵の眼を見上げる
……背、高いな……俺が175センチだが、防人上等兵は185くらいはあるか?
「よろしく頼む、防人上等兵!」
「おう!!」
「で、では最後に小早川二等兵」
「はいっす!! 小早川氷雨っす! 隊じゃ下っ端っすけど! 戦場では活躍できるっす!! ドンドン前に出させてほしいっす!!」
そうっすか、自信満々っすね!!
って、口調の影響受けてしまったな……
ふむ、二等兵にしては自信家だな……戦場で生き残って自信がついたって感じか
……釘刺しとくか
「自信があるのは結構だが、前に出すかは状況で判断する、小早川二等兵、そういう時ほど、慎重になるべきだぞ」
じゃないと……早死するからな
「それでは、紹介は以上となります、撫子隊の皆さんは執務室に戻ってください、私は少尉を屋敷まで案内してから戻ります」
……屋敷?
········
基地から車で数分
割りと大きな屋敷に到着した
「伍長……こ、これは?」
「少尉がこれから暮らす屋敷です」
「複数人で暮らすのか?」
「? 少尉は独身ですよね? 書類には少尉が1人で暮らすと記入されてますが」
「大きすぎないか?」
10人くらいは暮らせそうだぞ?
「隊長に、なりますとこれぐらいは普通かと……他の隊の隊長の屋敷を見たことがありますが、もっと大きい所もありましたよ?」
「これ小さい方なの?」
「恐らく小さい方です、少尉が未成年なのと、単身者って事で決めたのかと……」
「…………」
「狭かったですか?」
「今の会話で、そんな風に本当に思ったのかい?」
「いえ、全く」
伍長って、結構いい性格してる?
「こちらが鍵です、荷物は既に運ばれてます、家財道具は既に用意されてるので、それを使って下さい、もし不備があれば事務課の方に連絡をして下さい」
伍長から書類の束を渡される
屋敷関係の書類が1番多いってどういうこと?
「案内はこれで終わり?」
「はい、以上となります」
「そうか、お疲れ様」
「少尉もお疲れ様でした」
「お茶でも淹れようか?」
「いえ、大丈夫です」
「わかった……じゃあ、明日からよろしく」
「はい! よろしくお願いします!」
伍長は敬礼してから、屋敷の前に停車してた車に乗って、基地に戻っていった
「……とりあえず、入るか」
俺は屋敷に入る
少し、中を調べて……自室で座り込む
「いや広すぎだろ……なになに?」
俺は屋敷の書類を読む
屋敷の説明と、基地に出動する時の車の連絡先、あとは使用人を雇う時の連絡先などなど
「……よし、平日は基地に泊まろう!!」
こんな広い屋敷に1人で暮らせるか!!
休日の時だけ屋敷に戻ればいいだろ!
「そうと決めれば、荷物を纏めておくか……」
日用品と着替えの軍服数着と……
洗濯は基地内でも出来るな? おっ、洗濯室ある!
食事は基地内の食堂で済ませるか!
俺は荷物を纏めて、1度出掛けて、食事を済ませて帰宅し、歯磨きや入浴を済ませてから就寝した