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さよなら休暇、許さない

作者: 八百坂藍

俺は激怒した。

かの邪智暴虐な家族(仲はいい)に休暇を潰されたのだ。

まぁ、久々の帰省で身体が赴くまま私はずんずんと部屋に入ることも出来ず「手洗いうがい」の一言で憲兵(母)に止められた俺は凶行なんて行なってなどいないのだが。

ちなみに元気そうだが8時から11時までの3時間かけて運転して帰っているので、初心者マークがまだついている身には応えた。

ゆっくりするつもりだった。

俺は4月に都会に出たばかりで疲れていたのもある。

ベッドダイブしたはずなのだが。

気付けば運転席である。

ドライブの練習だぁ?なんならもうすぐ免許取ってから半年が経とうとしてるのにそんなことするか普通?

3時間乗ったばかりですが?

俺の車の助手席と後部座席を占領した邪智暴虐な家族(仲はいい)は楽しそうである。

うん、諦めて運転しよう。

向かう先は祖母の家。

練習するにしたって田舎の道なので右左折が少ないんですけどね。

普段人を乗せないので少し緊張するのを「ぎこちない」とか評価するんじゃないよ…。

そんなこんなで走れ車。

メロスと違って法定速度があるので守りながらな。

そうして、たまたま前になった気持ちが良さそうなライダーの後ろを走って祖母の家へ向かうのだった。





祖母の家に着くと、祖母は開口一番。

「冷蔵庫にあるのはなんでも飲んでね」

祖母や、俺は酒豪でもカツアゲでもない。

祖母の作る料理が…いや違う、墓へ参りにきたのだ。

違う。断じて料理の為ではない。

既にバケツに入っているサザエに気を取られてなどいないのである。

おはかへまいりにきたのだ。

自制心を働かせていると、邪智暴虐な家族(仲はいい)は買い出しに行くと、車へ乗り込んだ。

次の俺の席は後部座席である。

どうして…?

どうしてドライブさせてくれない…?

しまった。本音が出てしまった。

まぁ邪智暴虐な家族(仲はいい)はスルーしてエンジンをかけはじめたのだが。

練習とは…?

1人疑問符を抱えたまま、次は買い出しだ。





困った。

「夕飯何がいい?」

贅沢な悩みである。

しかしスーパーで聞かないでくれまいか。

俺の食べたいのは惣菜よりバケツに入っていたサザエだ。

考えろ考えろ。

でも正直サザエだけでいいのだが…?

悩みながらスーパーの中をあれでもないこれでもないと捜索した結果、別に何も食べたくならなかった。

そんなにサザエが楽しみなのか、俺は。

家族の所に戻るとショッピングカートにはもう山ほど食材が入ってたから問題なかった。

そのままレジを通して車にまた乗り込む。

また後部座席である。

朝めんどくさかったから運転させたな、と察しつつまた祖母の家に帰る。

家族は談笑してたがなんか眠かったので車内では寝て過ごした。

純粋に疲れた。




夕飯前に墓所を両親と尋ねた。

3人な理由は簡単。

俺が明朝帰るからである。

うちの墓所の辺りは浜を囲む形で山があるので墓所の高さまで上がった時には絶景だった。

大自然と海、絵に描いたような絶景に、一瞬参りに来たのを忘れていた。

今回の帰省の目的は墓参りだったのでこれで用は終わりだ。

水で墓掃除をして花、線香を替える。

線香の火は付けなかった。忘れただけだが。

手を合わせて目を閉じ、しばしの間の後開く。

何を考えていたかとか書くと重くなるので言うまい。まぁ、ご冥福を祈るばかり、だ。

そして下山し、夕食を食べた。

サザエはもうなんか細切れにされていたので泣いた。

くり抜く手間がない…。

泣いて食べた。

これで私の休暇はゆっくりも出来ず終わった。

もう次の日仕事なことに愕然としながら眠った。

さよなら休暇、許さねえ。

でも来年も来やがれ。

楽しかったからよ。






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