怪鳥のスクランブルエッグ(カルシウム入り)5
「か、完成しました!」
長い長い道のりだった。
通常、五分とかからず完成するスクランブルエッグを約二日間にもかけて作成した超大作。
ハンスとしてはミルクや塩、チーズを入れたりなどもしたかったが、何か起こりそうなものは全て排除し、卵そのものの味を生かしたスクランブルエッグが出来上がった。
感動も一入といった様子で、皿に盛られた少し焦げ目のついたスクランブルエッグをフラウは目に涙を浮かべながら眺めた。
ハンスも疲れ切った顔に、目じりに涙を浮かべた。
何とか完成させることができた。
完成するまでに色々あったが、料理が完成したのだ。
ハンスはスプーンをフラウに渡すと食べるように促した。
「せっかく作ったんだ。料理は食べないとな」
「はい!」
フラウは浮かべた涙を拭いながら、スプーンでスクランブルエッグを掬い、口に運んだ。
「!」
美味しかったのか、フラウは顔を綻ばせると、両手で紅潮させた頬を押さえた。
その様子に達成感を覚えたハンスは満足そうに一つ頷くと、自分もスクランブルエッグを口に運んだ。
さすがは噂に名高いロックバード。何も入れてなくても、めちゃくちゃ美味しい!
高級卵に舌鼓を打ち、その味をハンスが噛み締めているとフラウから「ゴリッ」という鈍い音が響いた。
「あ、卵の殻が入ってたみたいです」
えへ、とちょっとした失敗にフラウは照れたように笑って見せが、ハンスはそれに笑い返すので精一杯だった。
「殻、出さなくて大丈夫?」
「噛み砕いちゃった時に、間違ってそのまま飲み込んじゃいました」
そう言ってフラウは恥ずかしそうに笑った。
ハンスは伸ばしかけていスプーンをスクランブルエッグから無言で遠ざけた。
特殊な道具で割るロックバードの卵。
一般人より鍛えている分だけ丈夫かな?レベルのハンスには、ロックバードの卵の殻を噛み砕くことは不可能で噛んだところで口が血だらけになるだろうし、飲み込んだところで消化できずに内臓から血を見る気が、非常にした。
ハンスは、そっとスプーンを置いた。
◇
「本当にありがとうございました」
玄関先。フラウは深々とハンスに頭を下げた。
「いや、お役に立てたようでよかったよ」
「ハンスさんのお陰で、自分で卵を割って、料理を作ることができました」
色々と思い描いていたものとは違ったが―――材料から違うし、最低限の工程で作ることしか教えられなかったし、疑問と不安も残るが―――確かに料理を完成させることができたのだ。何とかやりきることが出来たのだ。
「君が頑張ったからだよ。まあ、一時はどうなることかと思ったけどね」
「もう」
ハンスがそう言って笑うと、フラウは少し頬に色を付け、文句を言いつつも嬉しそうに笑った。
そして、フラウは握手を求めるように手を差し出した。
その手を見たハンスも握り返そうと手を伸ばして、止まった。
この手で卵を飛散させ、ロックバードの卵を割ったんだよな。
ハンスは一瞬考え、もう一瞬で覚悟を決め、彼女の手を握り返した。
思いの外、彼女の手は柔らかく、女性らしい小ささにハンスはドキリとした。
「また、お料理のこと、相談に乗ってくださいね」
やっぱり早まったかもしれない。
やっと完成しました!




