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女子力(物理)のクッキー5

 途中、斜め上のトラブルはあったものの、大きな問題も無く、スクランブルエッグに二日かけたとは思えないほどスムーズに終わった。

 出来上がった生地を見て、感動したようにフラウはボールの中を見つめた。


 「わあ、前回と全然生地の感じが違います」

 「前はどうだったの?」

 「こう、もっとドロドロしたような、色も少し青みがかってました」

 

 すでにクッキーの色じゃ無い。そこで気付いて!

 悲鳴の方が衝撃的で、どんなクッキーだったか見てなかったけど、そんな見た目だったんだな。


 「えーと、あとは、スプーンですくって、鉄板に落として焼くだけだよ」

 「はい!終わりが見えてきましたね」

 「そうだね」


 ハンスは鉄板に並べられるクッキーを見て、やっと終わることに安心した。

 ここまで来れば、あとはオーブン任せだし、取り出すだけ。

 前回が前回だけにホッとせずにはいられなかった。

 二人でスプーンでクッキーを並べ、いざオーブンへ入れようとドアを開けた。


 ギョアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!


 そして、無言で閉じた。


 「昨日のクッキー、片付けなかったんだ」

 「わ、忘れてました」

 「俺、耐性ないからさ、申し訳ないけど、どうにかしてもらってまいいだろうか?」

 「あ、そうなんですね。分かりました。では、離れてください」


 フラウに言われた通り、ハンスは部屋の端まで移動した。そして耳を塞ぎ、準備が整ったことを頷いてフラウに伝えた。

 それを見たフラウも頷き返し、オーブンに手を掛けた。

 フラウはオーブンを開けると共にマンドラゴラの悲鳴が聞こえる前に魔法を繰り出した。

 その魔法は炎の魔法で、一瞬でクッキーらしき物を燃えかすも残らない火力で焼き払った。

 

凄い。これが上位級冒険者の実力。


 素早い判断力と動き、圧巻の魔法力にハンスは素直に感動した。そして、圧倒的な強さに憧れを抱いた。

 中の物が消えてなくなったオーブンを見て、ふと、ハンスは思った。


 このオーブン、耐火熱、高くない?










 皿の上には今し方焼き上がったクッキーが乗っていた。

 紆余曲折を得て、完成させることができた。


 「おお〜。クッキーです!見たことのあるクッキーです!」

 「悲鳴も上げない、ちゃんとしたクッキーだ」

 「うっ」

 「じゃあ、早速、食べようか」

 「はいっ!」


 各々クッキーを手に取ると、フラウは嬉しそうにクッキーを口に入れた。


 「・・・・・・どう?」

 「少し焦げちゃいましたけど、ちゃんと美味しいです」


 ぽりぽりとクッキーを食べるフラウの様子を真剣に見て、ハンスはホッと息を吐いた。


 今回は食べて大丈夫そうだ。


 前回、スクランブルエッグにロックバードの卵の殻が入っていたことを受けて、ハンスは内容物に注意するようになった。

 今回は市場で買える普通の材料しか入れてないし、作るところをずっと見ていたから可笑しな物は入っていない。

 それでもハンスは慎重に、クッキーを少しだけ齧った。


 「うん。美味しいね」


 ハンスがそう言うと、フラウは嬉しそうに笑った。


 「今日も、ありがとうございました」

 「俺もお菓子は作らないから心配だったけど、上手くいって良かったよ」


 ハンスは安堵の笑みを浮かべた。

 焦げ目がついたクッキーは完璧とは言えないが、料理の出来なさが天才的なフラウと日々の食事くらいしか作らないハンスが、初めて作ったにしては上出来だった。

 せっかくだからとお紅茶を入れ、落ち着いて美味しくクッキーを二人で食べながら、ハンスはふと思った。


 そう言えば、何であのクッキーは火を吹いたんだろう?


 ハンスはクッキーを暫し噛み締め、そしてゆっくり飲み込み、抱いた疑問も飲み込むことにした。

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