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怪鳥のスクランブルエッグ(カルシウム入り)1

 鬱蒼と木々が生い茂る森深く。魔素の濃さから異常な生態系の植物と魔物が生息するその場所で、一頭のドラゴンが一人の冒険者の手により討伐された。

 彼女はドラゴンの巨体に上ると、深く突き刺した己の剣を引き抜き、そして、麗しい顔に付いた返り血を拭いながら溜息を吐いた。


 「はあ、結婚したい」











 今日の稼ぎは、まあまあだった。

 ハンスは温かくなった懐を押さえながら小さく笑みを浮かべた。

 この街に拠点を置く冒険者の主な活動場所である森に、ドラゴンが出現したのは三週間前のこと。そのため、冒険者協会ではドラゴンが討伐されるまで等級の低い冒険者の森への立ち入りを禁止していた。

 ハンスは主に森での採取を収入源としていたのだが、等級が低く、例に漏れず森への立ち入りが禁止されていた。その日暮らしではなかったので生活はなんとかなっていたが、あまり長く続くと、生活が苦しくなるところだった。

 そして、先日、やっとドラゴンが倒されたということでハンスは今日、久しぶりに森へ入ることができるようになったのだった。

 使ってしまったお金を補填できるように、ハンスはいつもより多くの採取依頼を受けていた。森での素材は立ち入り禁止期間に少し高騰していたようで、予定よりも多く収入を得ることができた。

 短い期間だろうけど、得したな。

 ハンスは上機嫌のまま貸家へと帰宅した。

 ハンスが住んでいる部屋は、冒険者協会があるメイン通りから少し離れた所にある集合住宅(アパート)だった。協会に近い方が何かと便はいいのだが、協会がある場所はメインストリートの近くという良い立地なので、その分、家賃も高くなる。高収入とは言えないハンスが、そんな所に住んだらとてもじゃないが破産してしまう。

 その代わり、一般市民達が住む住宅街に居を構えているので、市場など生活に密接したものが近くにあったりと住むには便が良い場所だった。

 今日の分の食材をハンスは最寄りの市場で調達し、軽い足取りで集合住宅の階段を上った。

 ハンスの部屋は単身者向けの集合住宅の四階。ワンKの間取りで決して広くはないが、一人身には十分な大きさだった。

 階段を上り切り、部屋の前に着き、部屋の鍵を探している時だった。


 ドーーーーーーンッ!!


 隣の部屋から激しい爆発音が轟き、隣の玄関ドアが吹っ飛んでいった。


 「な、なんだ!?」


 突然の事に驚いたハンスはその場から飛び退き、隣の部屋から距離をとると、腰に下げた剣を抜いた。街中の住宅街でこのような異常事態。ただ事ではない。

 そのまま暫く様子を窺っていると、「ケホケホ」と咳き込みながら一人の女性が隣室の壊れた玄関から現れた。

 その女性は清らかな美貌の持ち主で、煤煙を白い肌に付け、宝石のような瞳を濡らしていた。

 思わず見惚れてしまいそうになっていたハンスは、ハッとし、爆発の発生源から出てきた女性に安否の声を掛けた。


 「大丈夫か?」


 人がいるとは思わなかったのか、美女は驚いたようにハンスの方を向き、煤汚れ以外、傷一つない(・・・・・)肌を恥ずかしそうに朱に染めた。


 「あ、あの、その、だ、大丈夫です。その、騒がせてすみません」


 女性は恥ずかしそうにモジモジと指を弄りながら清らかな声でハンスに答えた。


 「何があったんだ?」


 ハンスの問い掛けに、女性はビクリと肩を震わせると、あからさまに目を泳がせ動揺を見せた。


 「あの、えっと、その……」


 そして、答えあぐねていた女性はハンスの胸元、正確にはハンスが抱える食材達を見つめて言葉を止めた。

 その様子を怪訝に思ったハンスは首を傾げながら、女性へと声を掛けた。


 「えーと……」

 「もしかして、お料理が出来るんですか?」


 突然の女性からの質問にハンスは面食らった。何故ここで料理?


 「ええ、まあ。自分で食べるのに困らない程度だが」


 ハンスのその答えに女性は、バッと勢いよく顔を上げ、まるで救いを求めるように手を組み、潤んだ瞳でハンスに近寄ると、懇願した。


 「私に、料理を教えてください!」

 「え?」

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