6:イベントに備えよう!
「す、すみません! 僕、仮面を被るとテンションが上がっちゃうんです!」
と、顔を真っ赤にしながらペールが何度も頭を下げる。
「大体わかった。それで、ゴブリンの次は何を仮面にするの?」
「そうですね……では、『ガルーダ』に『ウェブスパイダー』、『ブラッドオーガ』が欲しいです!」
「そんなにいるのか?」
「はい! 1週間後のプレイヤーイベントに備えたいんです!」
ん? プレイヤーイベント?
「そんなイベントあるの?」
「ええ!? 知らないんですか!? 1週間後にプレイヤー同士で戦う大規模なイベントがあるんですよ! そのイベントに備えていろんなモンスターの仮面を集めたいんです! あ! でも、そこまで頼るのは失礼ですよね……」
「……事情は分かった。ぜひ手伝わせてほしい」
「ええ!? いいんですか!?」
ペールが驚きの声を上げる。
「互いに手の内を知っておいたほうがフェアだと思うんだ。その代わり、イベントでは全力で戦う。これでいいかい?」
「――はい! ありがとうございます!」
ペールは目を輝かせながら何度も頭を下げた。
「そうだ。最初は『ウェブスパイダー』を倒しに行かない?」
と、俺はそう提案する。
「どうしてですか?」
「いや、ゴブリンの仮面の力を見てみたいなーってさ。それに、ウェブスパイダーの出る『蜘蛛の巣』は『ゴブリンの洞窟』に近いみたいだし」
首をかしげるペールに、そう説明する。
「仮面の性能テストですか。ちょうどいいですね。では、行きましょう!」
というわけで――
ダンジョン『蜘蛛の巣』にて――
「ギャハハハッ! 食らいやがれ! アビリティスキル『インベナム』!」
猛毒を帯びた刃が、人の半身くらいはある蜘蛛に命中する。
蜘蛛はすぐに反撃しようとするが、ゴブリンの仮面を纏ったペールはすぐにそれをかわす。
「どうだどうだぁ? 俺はこっちだぜぇギャハハハハッ!」
ペール(ゴブリン仮面)は蜘蛛をあざ笑いながら、攻撃を次々と躱していく。
そうこうしてるうちに蜘蛛のHPはどんどん減っていく。
そして、蜘蛛はのたうち回って力尽き、光とともに砕け散った。
:
モンスターを討伐しました。
『器の仮面』にモンスターの魂が宿りました。
アイテム『ウェブスパイダーの仮面』を手に入れました。
:
「やったね。ペール」
と、拍手をしながらペールに近づく。
「やっぱすげえなぁ『インベナム』は! どんな魔物も攻撃して放っておくだけでイチコロ何だからよぉ! けど毒耐性だけは勘弁な! ギャハハハハッ!」
と、ゴブリン仮面のペールは笑う。
うん。『インベナム』には注意しておこう。
「よっしゃあ! この調子で残り2体も倒してやるぜ!」
ペールは高らかに宣言する。
これなら大丈夫そうだな。
というわけで――
ダンジョン『双子の塔』にて――
「アーツスキル『スパイダーストリング』!」
ウェブスパイダーの仮面を纏ったペールが、手首から糸を放ち、空中に飛び上がる。
それに対して、鳥の頭を持ち、背中に羽を生やした魔物『ガルーダ』は、背中の翼から羽を射出し、ペールを打ち落とそうとする。
それに対して、ペールは蜘蛛の糸を手首から放ち、羽を絡めとる。
「ケケケッ! 小癪な真似を!」
ガルーダは更に羽を射出する。
ガルーダのアーツスキル『フェザーショット』だ。
「小癪? ならこれならどう? アーツスキル『マスクチェンジ』!」
ペールはアーツスキル『マスクチェンジ』を発動する。
すると、ペールの纏っているウェブスパイダーの仮面が、ゴブリンの仮面へと瞬時に変化する。
「ギャハハハハッ! さーって、ここからは俺のステージだ! アビリティスキル『インベナム』!」
ペールは嗤いながら、部屋中に張り巡らされた蜘蛛の糸を伝い、ガルーダに接敵する。
そして、不気味に輝く武器をガルーダに振り下ろす。
ガルーダは腕で武器を受け止め、ペールを弾き飛ばす。
「ケケケッ……この我にかすり傷をつけるとは……」
「ああかすり傷だなぁ。だが、俺の勝ちだ!」
ペールはガルーダに対して邪悪な笑みを浮かべる。
すると、ガルーダが突然地面に落ちた。
「な、なにッ……こ、これは……」
「や~っと気づいたか……ゴブリン特性の毒だぜぇ、ギャハハハハッ!」
もがくガルーダを、ゴブリン仮面のペールはあざ笑う。
……本当にすごいテンションの変わりようだな。
「ふ、不覚……」
ガルーダは光とともに砕け散った。
:
モンスターを討伐しました。
『器の仮面』にモンスターの魂が宿りました。
アイテム『ガルーダの仮面』を手に入れました。
:
「俺、さっきから見てるだけだけど、大丈夫?」
ガルーダを倒して一息つくペールに、そう尋ねる。
「じゃあ、次の『ブラッドオーガ』はケンさんに任せてもらってもいいですか?」
「わかった。任せといて」
「お願いします」
というわけで――
フィールド『血濡れの古戦場』にて――
「アビリティスキル――『コンセントレイト』『パワーIsスピード』『パワーIsテクニック』!」
アビリティスキルを3つ発動させると、神速のごときスピードでブラッドオーガに正拳突きをぶつける。
正拳突きが直撃したブラッドオーガは、その場に崩れ落ちる。
そして、光とともに砕け散った。
:
モンスターを討伐しました。
『器の仮面』にモンスターの魂が宿りました。
アイテム『ブラッドオーガの仮面』を手に入れました。
:
「本当にありがとうございます!」
と、ペールは何度も頭を下げる。
「いや、こちらこそありがとう。学ぶべきことが色々と見つかったし」
「学ぶべきこと……ですか」
「うん。俺も強くならなきゃなってさ」
そう答えると、ペールは笑顔になる。
「ふふっ、1週間後のイベントが楽しみですね」
「ああ、そうだな」
というわけで、俺とペールは『始まりの町』へ戻ったのであった。
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