プロローグ:決戦! 仮面師VS剛力闘士!
「ギャハハハハッ! いいねえお前!」
緑色の怪物――ゴブリンの仮面を被った背の低いキャラクターが、飛び交う鎖鉄球をかわしながら突き進む。
その手に握られているのは2本のこん棒だ。
それを振り回し、次々と襲い来る鉄球を弾き飛ばしていた。
「よっしゃあ! この調子でガンガン狩っていこうぜぇ!! ギャハハハハッ!!!」
そう言って笑うと、ゴブリンのキャラクターが一気に加速する。
そして一瞬にして敵との距離を詰める。
相対しているのは、右手の指にはめたリングから鎖付き鉄球を顕現させ、それを振り回すムキムキマッチョの男。だがその顔は女の子のように可愛らしかった。
そんな彼は迫りくるゴブリン仮面に向けて不敵に笑い、すぐに迎撃態勢に入る。
「ギャハハハハッ! ここは俺の間合いだぜ!」
しかしそれよりも早く、ゴブリン仮面が間合いに入ると、渾身の一撃を叩き込んだ。
ドガァアアンッ!! という轟音が鳴り響く。
吹き飛ばされたのは、ゴブリン仮面の方だった。
ゴブリン仮面は空中でくるくると回転じながら、地面に着地する。
「ギャハハ……拳でも行けんのかよ……」
ゴブリン仮面が顔を上げる。
眼前には、拳を突き出すムキムキマッチョの男。
彼は、間合いに入ったゴブリン仮面を正拳突きで迎撃したのだ。
「……そう来なくっちゃあなぁ!」
ゴブリン仮面が吠える。そして――
「アーツスキル――『マスクチェンジ』!」
そう呟くと、ゴブリンの仮面が一瞬で鳥人を模した仮面に変わる。
それと同時に、ゴブリン仮面改め鳥人仮面の纏うオーラが一変する。
鳥人仮面は頭から翼を出現させると、大空に飛び上がった。
「これならば届くまい! 食らえ! アーツスキル『フェザーショット』!」
鳥人仮面は頭の翼から羽をムキムキマッチョの男に向けて射出する。
ムキムキマッチョの男は右手の指輪から鎖付き鉄球を出現させると、それを振り回して向かってくる羽を弾き飛ばした。
そして、左手の五指に填まっている指輪から鎖付き鉄球を同時に出現させ、鳥人仮面に向けて放つ。
「なにっ!?」
鳥人仮面は驚きつつも翼をはばたかせ、鉄球を的確に躱していく。
「これならばどうだ! アーツスキル『ソニックブーム』!」
鳥人仮面が翼を力強く羽ばたかせると、空気の刃が発生しムキムキマッチョの男に襲い来る。
だがムキムキマッチョの男が右手を振ると、右手の五指に填まった指輪から鎖付き鉄球が出現し、空気の刃を打ち消した。
「アーツスキル『マスクチェンジ』!」
鳥人仮面が叫ぶと、鳥人の仮面が蜘蛛を模した『4つの目に、8本の足のような飾りのついた仮面』に切り替わる。
「行くよ! アーツスキル『スパイダーストリング』!」
蜘蛛仮面は手首から糸を放つ。
糸は鎖付き鉄球に絡めとられ、その動きを封じる。
「これで、君の『チェーンリング』は使えないね」
そう言って、蜘蛛仮面は再びアーツスキル『マスクチェンジ』を使い、鬼の仮面を纏う。
「……すごいな。俺の動きに対応するなんて」
ムキムキマッチョの男が呟く。
「手の内は全て知っているからな」
鬼仮面はそう返し、2本の金棒を構える。
「さて、『剛力闘士』よ。決着をつけようか」
「――ああ!」
ムキムキマッチョの男――『剛力闘士』は両手の指輪を外す。
それと同時に、鬼仮面が金棒を振りかぶり突進してくる。
鬼仮面の金棒と、『剛力闘士』の拳がぶつかり合う。
どちらの武器も砕けることはない。
鬼仮面の力で強化された金棒と、『剛力闘士』の拳が鍔競り合う。
『剛力闘士』が拳で乱撃を放つが、鬼仮面はそれを的確に金棒で捌いていく。
(まずいな――余り余裕がない)
『剛力闘士』はHPゲージをちらりと見て、心の中でしかめた顔をする。
彼のHP残量は、すでに3分の1を切ってきた。
(さっき受けたアーツスキル『インベナム』の効果か――)
『剛力闘士』のHPゲージの横には、毒を受けたことを示すアイコンが表示されていた。
(『オートリカバリィ』で何とか相殺できていると思ったけど――時間が経つごとに効果が高まっているのか?)
そう思考を張り巡らせながら、鬼の仮面に乱撃を放つ。
だが、鬼仮面は的確に金棒で攻撃を捌き続けている。
鬼仮面のHPはまだ半分しか減っていなかった。
(次で決めるか……)
『剛力闘士』は後ろに飛びずさり、鬼仮面から距離を取る。
そして、左手を正面に構え、右手を引き絞る。
「次で決めようというのか。ならば望み通り、次の一撃で終わらせよう!」
鬼仮面はそう叫び、金棒を構える。
そして、鬼仮面は『剛力闘士』に突進し――
辺りに、爆音と衝撃波が響いた。
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