異世界の住人
見 切 り 発 車
多分、どうにかなるだろう(ぺ◯ぱ感)
蒸気船、鉄道、飛行機。
これらがなかった世界において、当時の世界において大部分の存在であった農民にとっては世界とは生活する範囲だけであった。
もちろん生活範囲外の人々との交流がない訳ではなかった。山村から採集される資源が農村に渡ることもあれば、農村の大工が発展した都市へ出稼ぎに行くことも多々あった。商人が大陸を陸路や海路で横断することもあった。
ただ普通の農民たちは先祖から受け継いだ土地を耕し、農作物を行商人に売って、代わりに住む土地からは採れない物と交換して生活していた。
少し高い所から周りを見渡すと、粗末な住居、農地、そしてそれらを取り囲む山々。この景色が農民にとっての世界そのものであったであろう。
この世界で生きる者たちも同じであった。物語の舞台の人々は大きな大陸に住んでいるが、大陸の東の果ても西の果ても知らずに生きていた。人々の生活によっては海を見ることもなく砂漠や山脈を越えることもなく生きていた。
もちろん商人なども存在していたが、西の果てや東の果てまで知っているような遠い距離を渡る商人は、世界の大部分を占める農民よりはずっと少ない。
ここに生きる住人からすればそんな最果ての土地を思うより重要なことがあった。それはどこへ行けば戦争の災禍から逃れるかであった。
大陸では戦争が始まった。
「これからどうする?」
粗末な衣服と少しの荷物を持った集団たち。焚き火を囲んで残り少ない食べ物を食べながら相談している。
「南下してまだ安全な土地に行くか、西か東へと行くかだな」
「西にはエルフが統治する国家があるらしく、東は人間が統治している国があるらしい。東の海を越えた先に島国があって大変に栄えているって話だ」
話しているのはアラクネ。人間の上半身に蜘蛛のような下半身の亜人である。
「やはり西か。エルフは賢くて強い。国も平和なのは事実だろう」
「東の人間の国も発展していると聞いたことあるぞ」
「人間? 人間はアラクネの女にすら負けるような弱い奴だぞ。しかもエルフのように魔法も使えない。嘘臭い話だな」
そこにある女が話に入ってきた。尖った耳と背中の薄い羽を持つ精霊種のヒトである。
「いや、本当だったよ。あたしは商売で東の国へ過去に何度か行ったことあるけど、凄い国らしいよ」
「どう考えても嘘臭いじゃないか。どうせ夢を見ていたのか、幻術で騙されたんじゃないか?」
精霊種の女は話す。大陸の東側にある魔導国と呼ばれる国に行った時に彼らを見たとのこと。海岸部の商業都市に彼ら人間の国の船が来ていたらしい。
その船は黒色で、なんと鉄で出来ていたとのこと。船の中央には高く大きな筒があり、そこからは煙がたくさん出ていた。
そしてその船は帆がなくても動いていた。
「どんな船だよ。本当に夢か幻術だったんだじゃねぇか?」
「やはり西の国のほうがいいのでは?賢いエルフの下で技術は発展しているのは、かつてそこを訪れた商人から聞いた。それを元に作った道具も素晴らしいものであったし、そんな嘘臭い物と違って理にかなった道具だったぜ」
その商人の話ではエルフの国では技術が高くて、その証拠にインフラも発達していたようだ。道路は土を固めただけのものではなく岩を敷き詰めた立派なものであったし、建物も高い建築技術があるのが一目でわかるほどであった。
人々の話し合いは続いた。現実的な話を採用するならば、能力が高いのは知れ渡っている西のエルフの国。ただし彼らがいる場所よりはるかに遠い所にある。
精霊種の女の話を信用すると、魔法が使えず戦闘能力の低いはずの人間が統治する東の島国。エルフの国よりは近いようだ。
「俺は東に行く。ここからは東の方が近い」
この集団は二手に別れた。
高齢な者を中心とした常識人たちは西へ行き、可能性を信じた若者たちは東へと行った。その後の彼らがどうなったかはわからない。
とある世界における大陸。魔法が存在し様々な種族のヒトが存在する世界。
その東方部ではいくつもの国々に別れている。大国は覇権を握るために戦争を引き起こし、小国は生き残りをかけて謀略に走っていた。
魔法。
物理学では図れない独自のエネルギーである魔力とそれを利用して引き起こす様々な現象である。
亜人。
人間のように言語を操り道具を扱う。人間に比べて膂力のある者、獣のように速く走れる者、空を自由に飛ぶ者、そして魔法を操る者。
人間。
力は弱く、病気にもよくなる。寿命は70年ほど。
魔法は扱えず、身体は壊れやすく、毒にも弱い。
得意な事は手先が器用であることぐらい。
そんな人間はヒトという種において、この大陸でのヒエラルキーは最下位であった。
ストックしているプロットもなければ、何かしらのアイディアもないですね。
まぁどうにかなるだろう(ぺ◯ぱ感)