八 実戦当日
次の日、いつも通り広場で過ごしているとふと空に雲がかかっているのに気づいた。
そこまで日差しが強くないなと思ったら、太陽が雲で隠れているのか。
この世界の太陽と月は地球にいた時と全く変わらない。
だけど、この世界に来てずっと快晴すぎて、一度も雲が空に浮かんでいたのを見たことがなかったが、今日は空の半分位は雲で埋まっているようだ。なんだか不吉な予兆のように感じる。
目の前の勇者達は休憩で集まって話しながらいつも使っている単色水色のベーシックな水筒の水を飲んでいる。
服装も外出用なのか、ファンタジー冒険者のような服装になっている。
今日はいつもと違って朝早くからこの広場でやっている。
なんでかは多分分かるけど、今日は初の魔物と戦うのだろうな。
それくらいしか、今日早かったのは考えられんな。
隣で休憩している猪原も似たような事を考えていたのか、俺に話しかけてくる。
[勇者達は、昨日の事を考えているのでしょうか。]
[まぁ、そうだろうな。]
勇者達は魔物と初めて戦うからな。
少しだけ不安があるのだろうか、表情が険しいやつもいる。
神島も少しだけ曇った表情が見えるようだし心配なんだろうな。
俺も多分、直ぐに野生の魔物と戦うんだからな、心の準備だけはしておこう。
俺と猪原は神島達を見ていると、先程からなにもせずに、勇者達の様子を伺っていた白竜が近づいてきた。
[おい貴様、少し聞きたいことがあるのだが。]
[聞きたいことって何?あと俺はリエルっていう名前があるんだが…。]
[名前などどうでもいい。彼らに表情が優れない者がいてな。昨日、勇者の後をつけていたようだが、何か知らないか。]
白竜はいつも休みなく戦っていたけど、俺達プラス勇者を気にしながらやっていたのか?
こいつ、毎日休憩無しで動いてたし、ただの戦闘狂かと思ったらちゃんと考えてるんだな。
流石、さす竜ですな。いや、何でもない。
話してもなんの問題もないし、言っておこう。
[あぁ、昨日、勇者達は外での実戦の計画をしていてな、初めてだから緊張しているんだろう。]
[只の戦いでそこまで心配する事か?]
[まあな、勇者達は戦いというのがなかった場所に生まれたんだ、野生の相手とやるのも、緊張するんだろうな。]
[フン、そうか。]
白竜はそのまま俺に踵をかえすとそのまま霊獣達の所へ向かった。
?なんだ今のは、白竜の声に元気が無かったようだったな。不機嫌ぽい顔してたし。あそれは俺が弱いからか。
何故なんだかは知らんけど、あんまり考えすぎんなよー。
俺は霊獣達の元へ向かう白竜に軽く心のなかで言った。
時は昼、今は太陽の光によって窓から見える広場は照らされている。
雲は何処かへ行ってしまったな。意外と何も起きなかった。
次に雲を見るのはいつになるだろうか。
そして、昼になったということは。ついに始まるだろう。多分。
今は教室のような大部屋の中で勇者達が会話しているのを、眺めている。勇者全員だけでなく、霊獣達も揃っている。
俺の頭のなかは暇だと言っているが、高濱と神島含む6人がなんの話をしてるかを一応聞いている。
「秀、初めてなんだし、俺と一緒のペアになろうぜ。」
「あ、うん、わかった。」
「おい高島、ずるいぞ、俺も入れろ!」
「神島〜、波崎よりも、俺を入れた方が強いよ〜。この前やったでしょ?」
「いや、ここは間をとって水戸川よりも俺だろ。」
「三人一組なんだ、ここはジャンケンで決めるべきだろう。あ、俺も入るぞ。」
「はぁ?泉も入るの〜?まぁジャンケンでいいけど」
「「「「「ジャンケンポン!」」」」」
「あ!お前今グーからチョキに変えただろ!」
「いや、お前がチョキからパーに変えているの見たぞ。」
「いや、やってねえし!」
「俺も見てたぞ〜。」
「やってないつーの!」
「波崎、ちょっと静かにしろ、騎士の一人がゴミを見るような目で見てるぞ。」
「すいません。」
「皆にはごめんけど、ペアは高濱君と泉君でいいかな。」
「まじ?ありがとな秀。」
「え~?俺は入れてくれないのか?」
「じゃあ水戸川は俺と同じグループだ!」
「いやだぁぁ〜。」
「···まぁ、頑張れよ水戸川。」
「はぁ、じゃあ俺はこの城から出ずに見学でもしておこうかな。」
「波崎、人々を守る勇者がレベルも上げずに見学してどうする。」
神島以外の5人はいつも喋っている奴らだ。
最初が高濱、ウザイ声のヤツ、猪原を出したヤツ。
2人目が波崎、テンションの高低差が凄い、ちっこいテリジノサウルスみたいな霊獣が相方。
3人目が水戸川、おどけ野郎、一匹だけの鳥を召喚したやつ。
4人目が赤井、多分今後登場しなさそうなモブ、自分勝手野郎、柴犬付き。
5人目が泉、真面目マンでリーダーシップ高め、白竜野郎を出したヤツ。
昔からああいうことがよく起こるけど、関係性は一応仲良しなんだよな。
そんないつも通りの会話を会話を聞いていると、青髪がやって来て話始めた。
「*******、************。」
「あ、はい。ちょうど決まりました。」
「**、*******。」
青髪は何かを言うと、部屋を出ていき、勇者達が青髪に着いていった。
あ、これ確実にこの後俺たちを連れて外に出るよな。