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七 猪原は俺より凄い


 俺は広場でいつものように猪原に優しくボコされていると、奥で神島達が広場を出ていくのに気づいた。

 時間か?いや、時間なら俺らのもとへ来る筈だ。

 猪原も神島達に背を向けて俺を見ていたが、俺の様子に気づいたのか、後ろを振り向いた。

 神島達が広場から出ていくのを見て猪原は言った。


[皆さん、どこへ行くんでしょうか。]

[さあ、だけど表情が少し固かったな。]


 神島達は今からなにしにいくんだ?

 ここ1ヶ月の間で広場を途中で出ていくのは一度もなかった。

 これは何か新しい事が起こりそうだな。事件とか、初の魔物狩りとか。


[なぁ猪原。俺、今から勇者達の後を追うんだが、お前も来るか?]

[え、勇者達の後を追うんですか?]

[そうだ。]

[うーん、ちょっと気になりますし、私もいきます。]


 よし、翻訳者ゲット。

 猪原が通訳してくれないと神島達は何をいっているかわからんからな。これからもよろしく頼む。


 ていうか、最初から異世界の言葉が分かるとか本当にズルいよな。

 異世界転移者ボーナスとかで翻訳機能があったり?

 俺もそう言うイージーモードを選びたかった。


 先頭の騎士が扉を開けて、神島達が広場を出ていき始めたので、俺と猪原はゆっくり近づきながら勇者達全員が出たあと、扉のもとに来た。よくいる兵士達は今日は居ないため、1週間前のように連れ戻されることは無い。

 でも、扉から直接行ったら絶対バレるよな。

 どうしようか。


 猪原は俺の考えていることを読んでいるように扉の上にある俺達よりも少し大きい通気孔に前足を指して言った。


[リエルさん、扉から直接行ったら兵士さん方に見つかるかもしれないので、あの通気孔から行きましょう。]


 通気孔?何でこんなところに通気孔があるのかは知らないがこれは好都合だな。まるで予め用意されたような感覚だ。

 ···いや、通気孔なのか?蓋は通気孔みたいな感じはするけど別のところに繋がっていないよな。そういうのは無知だし。

 まぁ、分からんし通気孔でいいか、猪原もそう言ってるし。


[…で、どうやって行くの。]

[任せてください!]


 猪原はゼロ助走で上の蓋目掛けて地を強く蹴ると、扉を軽々超えて蓋を掴んだ。そして足で引っ張る。

 すると、蓋はあっという間にバキッっと音をたてて外れた。

下に着地した猪原は超ドヤ顔だ。

やば、バケモンじゃん、俺ら霊獣はみんな同じ位の大きさだけど、高さはだいたい二階建ての家の屋根くらいなんだよ?

 …ていうか壊れてないよな?

 外れた蓋を確認するがどこも問題はなさそうだ。

 やっぱり異世界パワーはすげぇなぁ。


[見失ってしまう前に、早く行きましょう。私の上に乗ってください。]

[お、おう。大丈夫か?]

[余裕です。]


 …才能もあると思うが、この世界のステータスって偉大だな。

 俺は猪原にしがみつく、うっわ鱗越しでももっふもふ。

猪原は俺が乗ったのを確認すると軽々しくひとっ跳び、そのまま2匹で通気孔内へと入っていった。















 俺が前で通気孔の中を通って神島達を追って進んでいく。

 通気孔の中は少し狭いくらいで良かった。

 少し翼を広げると壁や天井に翼が擦れるけど。


 足元は沢山の小さな穴が綺麗に並んでいる。

 そのお陰で普通に神島達の場所がわかる。

 勇者達が上を見ても、天井は白いから気づきにくい。

音を出さない限りバレることはないな。フラグじゃないぞ?


 神島達は左側にある扉の中に入っていった。

 通気孔内は分かれ道が沢山あり、どの部屋にも繋がっている。だけど部屋の道は狭くなっているためギリギリだ。

なんとか体を突っ込んで進んでいく。

 部屋の中はよく見えにくいが丸い机の上に乗っている一枚の紙を青髪が説明しているように見える。


「***************、******。」

「***、*************。」


 紙には太い黒の線が城のような絵を大回りに囲んでいる。

 黒線の外側には所々、木の絵が描かれている。


[あれは何だ?]

[地図ですね、城の外のことを話していますよ。]


 地図かー。

 確かに地図に見えなくもないけど、範囲が狭いし大雑把過ぎんか?見た感じ、青髪は俺たちがいる城とその付近の森?みたいな所を指でなぞって話している。


[もしかして、実戦?]

[その前段階だと思います。]


ここで10分ほどずっと地図を囲んで話していたが、ついに話が終わり、部屋から出ていった。


[やばい、急いで戻らないと。]

[狭そうですが、一人で戻れるんですか?]

[部屋を出たら大丈夫。]

[分かりました、先に広場へ戻っておきます。]


 猪原はまぁ大丈夫だろう。

 後は俺が出るだけだな。

狭い所を頑張ってバックしていった。


 広場の通気孔入り口には猪原が俺が来るのを待っていた。

 俺が戻ってきたことに気づくと早く乗れと言わんばかりに背中を見せた。

ちくせう、高い所は無理だけどさぁ、女子とかに助けられるっとかちょっと嫌な気分だ。


不貞腐れながらも猪原にしがみつき高いところから降り立つ。俺が降りると猪原は通気孔にまたとびのり、縁にぶら下がりながら蓋を閉めた。器用だなぁ。


 それで、遂に外に出て魔物と戦うのか。

 もうすぐとは分かっていたけど、正直嬉しい気もするし少し怖い気持ちもある。ていうか遅せぇよ展開。


小説とかアニメとかだったら1秒の間に次のページ開くだけで1ヶ月、1年経つけど、こちとらもう体感1ヶ月よ。もうこのままでいいなって思ってきたりしてたぞ。


 魔物ってどういう奴が出てくるのかな。

 異世界定番としてはゴブリンとかスライムとかだろうな。

 いや、もしかしたら出た瞬間、野生の魔王が目の前に現れたりして。ありえちゃいそうで怖い。


 俺の今の限界レベルは5だし、進化とかはすぐに出来るだろう。進化ってあるよな?

 外での実戦はいつあるかわからないし、取り敢えずいつも通り猪原と実戦練習しておくか。


 今日も俺は、猪原に手加減されながらも痛くない程度にぼこぼこにされた。



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