表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/47

五 この世界のドラゴンは辛い


 奴との戦いを終えて、俺はいつも通り神島達の練習風景を見ていると横から猪原が声をかけてきた。


[さっき彼に噛まれてましたけど大丈夫ですか?]


 猪原は俺の心配をしているようだが、別にそんな心配しなくてもいいじゃん、ちょっと足噛まれて地面に体ぶつけただけだし。もはや無傷に近いし。

さっきの戦いはちょっと、数秒で決着が付いてもはや戦闘なのか?って感じだったけどさ。


[全然問題ない、別に心配しなくてもいいんだぞ?]

[心配ですよ。]


 俺は猪原との関係は特に深く無かったんだがな。

どうしてこいつはこんなに話しかけてくるのだろうか。

 自分以外の人ではない日本人に会ったからかな。


 それなら、猪原は俺に関わってくるのも少しは頷けるか。

 でも普通に勇者達に自分が同じクラスの生徒と言えばいいのに。

 俺は生徒達に俺がクラスメイトとバレた時の生徒達の俺に対する態度がどうなるか怖いから絶対に言わないけど。


[どうしたんですか?]


 おっと、考え事ををし過ぎてた。

 まぁ、ちょっと猪原に聞いてみるか。


[いや、まだ、ちょっと考え事をしていてな。]

[むぅ、考え事くらい私に教えて貰ってもいいじゃないですか、同じ日本人なんですから。]

[じゃあ猪原、何で自分の事を勇者達に話さないんだ?]


 俺の言葉を聞いて猪原は普通に返した。


[話さない理由ですか?えっと、話した後が少し怖いんです。リエルさんは何で言わないんですか?]


 同じ理由ですか、そうですか。


[大体猪原と同じだ。]

[やっぱりそうですよね、召喚した霊獣が同じクラスメイトだっら私でもどう接したらいいか分かりません。まぁ、それ以前に私たちは普通に言葉を話すことすらできないんですけどね。]


 そなの?へぇ〜知らなんだ。

まぁ、分かってるふうに言っとこ。

 

[言葉で話さなくても日本語で文字を書けば一瞬で日本人って事が分かるけどな。]

[あ、確かにそうですね。]


 聞きたい事が聞けたし少し得した気分だな。

 猪原は少し妖狐らしくニコッとしてこの場を離れた。


 先程、戦った時に思ったんだが、俺って力強いのか?

 柴犬を持ち上げた時に負担が全くかからなかったし、体には全くの疲労が見えない。

 これでも前世は運動不足で全く運動が出来なかったのになぁ。


 やっぱりドラゴンとなって身体能力が上がっているんだろうな。この体に感謝感謝しとかないとな。

 柴犬と戦った時に自分がどれだけ強いのかが少し分かった気がする。

 このまま他の霊獣達と連戦といくか?


 …いや待てよ、猪原の戦闘能力は17だ。

 猪原とやればいいじゃないか、俺より普通に強いし、手加減位はしてくれるだろう。痛いのは嫌だし。


 俺は猪原に頼もうと猪原の方を見た。

 猪原はいつの間にか神島達が剣の使い方を覚えているのを見るのに夢中だ。

 まぁ今はいいか、離れてすぐ猪原と話してやってもらうのもどうかと思うし。

 

 それにしても暇だな。

 やることが無いから寝るか?

 貴重な時間を寝ることに費やすのはやめた方がいいか。

 ここは昨日と同じように体を動かしておこう。

あ、そーいえば俺ドラゴンだったわ。


 ということで俺が今からやるのは、空を飛ぶことだ。

 この世界に来て俺はまだ翼を閉じていて動かしたことがない。

 異世界にきて真新しいものが多すぎて忘れていたとかないない。

 せっかくドラゴンになったのに、空を飛ばなけりゃ只の蜥蜴だ。


 こんな小さな身体にもあるんだから飛べるはずだ。

 でも問題があるんだよなぁ。

 翼があるという感覚が無いのだ。耳たぶみたいな感覚で神経が通ってなさそう。


 後ろを見れば体の3分の2位の畳まれた翼がある。広げたらさぞ美しいのだろう。

 取り敢えず背の裏を動かす様にやってみる。

 うーん、全然分からん。


 ドラゴンって翼の感覚って普通は無いのかな。

人間やその他動物には無く、鳥とか虫とかしか持つことが出来ない物だし、新しい感覚を掴み取るってのはそこそこハードみたいだ。

 異世界の小説とかだったら何も躊躇もなく飛んでいる事が普通だったんだが、まぁその辺は仕方がないか。


 白竜を見てみるがアイツは楽しそうに他の霊獣達とやっている。翼は俺と同じように閉じたままだ。

 よし、割り込んで聞いてみるか。

 白竜のもとまで行くと、白竜が気づいたのか先に話しかけられた。


[貴様、少し前に弱者と戦っていたが、もしや我と戦う気になったのか?]

[え、弱者?あいや、違うけど。]

[フン、冷やかしなら来るな、邪魔なだけだからな。]


 白竜は時間の無駄だと言うように俺を睨んでくる。

 白竜だけじゃなくて、突然割り込みしてきた俺に対する周りの視線もちょっと痛いんだが。

 言われなくても直ぐに離れるよ、先に翼の事を聞いてから。


[なぁ、ドラゴンって空を飛ぶことは出来るのか?]

[空を飛ぶだと?知らんな。]

[あ、はい。]


 白竜の目力が強くなってきてるので、俺は逃げるように離れる。


 あの白竜が分かんねえのかあ。

 いや、さすがにあいつは俺と同じでここに来て2日、分かるはずがないか。


俺はめげずになんとか動かそうと意識しながらめっちゃ翼をガン見する。

背中の肩甲骨を動かすみたいに考えてるからなんか気持ち悪い。

 …これ絶対無理なやつだ。


 暫く翼を見つめ飽きてそろそろ止めようと思った時、ずっと閉じていた翼は微かに開いている事に気づいた。

 変化がないと思ってたけど地味に最初と変わってんな。

 何とか動かす事はできるみたいだし、繰り返せば滑らかに動かせるようになるかな。

その代わりに肩(?)と目の疲労が一瞬で溜まるけど。

ってか少し開けちゃったけどどうやって戻そう…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ