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四十五 復習・恨みからの戦い


目の前の黒ローブの男は神島達には目もくれず、俺と猪原しか見ていないようだ。

3歩歩けば近づかれる距離、不意をつかれてもおかしくは無い。

青髪と星団が居ないこの状況、非常にマズイ。


猪原が、直ぐに時間を稼ぐように返す。

[なぜ戻ってくるんですか…]

「なぜ?そんな簡単な質問は必要無いでしょう、そんなことより…」


黒ローブが何か話そうとする前に神島が遮るように聞く。

「あの、僕達を見逃してくれたりはしませんかね…」

「皆様を殺す為に来たのですよ?当然始末いたします…しかし」


そして高濱。

「おいレオラさんとイェンカはどうしたってんだよ!」

「そちらはラゼンとその他の信者に時間稼ぎを任せておりますよ…それより」


泉…

「ちょ、お、俺だけは見逃してくれよ…!頼む!」


黒ローブは3人に押されて全然話せてない。

「見逃すはずがないと…って私にも話をさせて下さい!」


あーあ、黒ローブが完全にプッツンしちゃったよ…

気が抜けるような展開に俺は拍子抜けな気持ちになってしまう。


しかし、黒ローブは違うようだった。

俺に問いただすように聞いてくる。


「何故、貴方が生きているのですか?あの時、確実に首を切断し絶命させたと思ったのですが?」

[えぇ!?リエルさん首ごと切断されてたんですか!?]

[いや知らんし]

「私はこの手、目であなたを確実に始末しました、私の腕には間違いは無かったはずです、一体どういう…」

[いや、そう言われてもなぁ]

「何か話したらどうですか?貴方がどんなトリックを使ったかを話してください」

[魔物だから…かな?知らんけど]

[リエルって〜結構しぶといよね〜]


俺の声は黒ローブに聞こえないため、黒ローブの1人演説会と化していた。


「話さないのならもういいです…」


そう言って黒ローブは懐から歪な形をした緑の短剣を取り出す。

短剣を見ると首元が切られたような一瞬の痛みが思い出させるように反応してしまう。


猪原は緊張している神島達3人組に何かを指示すると、高濱と泉は頷く間も無く剣を鞘に収めながら、すぐ近くにある階段を全速力で降りて行った。

どうやら勇者達は先に猪原から何かを聞いていたようだ。俺と違って抜け目がないな。

神島はとても不安そうに俺を見たが、直ぐに高濱達の後を着いて行く。


[だ、大丈夫〜?やっぱり普通に戦った方がいいんじゃい〜?]

[…アルゲン、よろしく頼む]

[う〜ん、わかったよ〜]


アルゲンは俺の後ろに着き片脚を俺の尻尾に乗せる。


青髪は最初からこいつがこういうアクションしてくるとは考えなかったんだろうか。

それとも、俺達が勝てる事を考えて他の兵士達の元へ向かったのだろうか。






黒ローブは他の者達全てを無視するかの如く、俺へと短剣を差し掛かってくる。

そのその距離での速度は俺では確実に回避不能であったが、アルゲンは俺の翼と尻尾の付け根を強引に上へ引っ張り、宙へと浮かせた。


そのまま、アルゲンは俺を両足で軽々と鷲掴みし、物見櫓から直ぐに飛んでいく。



そして猪原が黒ローブへ声を大きくして言った。


[理由を知りたいなら追ってきてもう一度殺してみろと彼は言ってます!!!]


黒ローブは猪原の言葉に惹き付けられるように言う。

「直ぐに吐いてもらいますよ!」


そのまま黒ローブは柵を乗り越え、空中に居る俺達の所へ大ジャンプしてきた。

[うぇ!?届くのかよ!]

こいつ10mくらいは余裕で跳んで来るとかやばすぎだろ。


しかし、そのまま物見櫓をどんどん離れていた俺達に短剣はギリギリで届かず、勢いの無くなった黒ローブはそのまま下へと落ちて行った。

高さ的に城壁位の高さから落ちてるけど、どうせ無傷だろう。


俺は黒ローブが俺達から気を変えないようにアルゲンへと伝える。

[アルゲン!奴が俺らを追うようにできるだけ低空飛行で頼む!]

[りょ〜かい]


アルゲンは町の地面から10mくらいの高さで飛んでくれている。

そして下に落ちた黒ローブは俺達を見上げながら直ぐに追って来てくれる。


そのまま町の外へと飛んで行きたいが、そう上手くは行くはずない。

奴は俺達の屋根上を渡りながら真下まで直ぐに追いつき、直ぐさまもう一度大ジャンプをしてきた。

今度は相手の軌道が完璧で当たってしまいそうだ。


[上がれ!]

俺が指示するとアルゲンが直ぐに反応し、高度を一気にあげてくれる。

休な高度変化に俺の首が逝ってしまいそうになるが、そんなのは我慢だ我慢。


「*****************!」


黒ローブの二度目の跳び攻撃は高さが足りず失敗、残念だったな。

黒ローブが何か話しているが、奴が話す言葉はもう知ることは無いだろう。


アルゲンは俺を掴んだまま街の外れにあるゴミ山の場所へと向かう。あの場所はここからでも見えるため、3分もすれば直ぐに着く。

黒ローブも執拗に追いかけてくれるが、流石にしんどそうだ。もしかしたらさっき何か話してた事が諦めてしまう話だった可能性がある。


[アルゲン、もっと高度を落とそう、速度もさっきよりも遅く]

[それって、大丈夫〜?]

[相手は直線ジャンプしか出来ないから横に動けばいい]


アルゲンは速度を落とし、高度も家二つ分くらいに下げた。

そこをすかさず狙ってくる黒ローブ、直ぐにまた大きなジャンプを繰り出してきた。


[うわ、右!]


少し遅れたその言葉は黒ローブの速度にギリギリ追いつけなかった。

迫ってきた短剣は為す術なく俺の左腹部とアルゲンの左翼の一部を軽く切り裂く。


[痛ッ…くそ!]


昨日の痛覚のない時とは違って、死にそうな程の痛みがやってくるが、気にしてられない。アルゲンはさらに速度が落ちてしまい、バランス悪くゆらゆらと揺れる。

黒ローブは屋根に着地すると、次は仕留めると言うかのように、短剣をクルクルと回す。


[つぅう〜]

[だ、だいじょうぶか?]

[な、なんとか〜]


やられた。隙を見せる行為なんてしてはいけなかった。


[まだ余裕は?]

[急な移動はもう無理、かも〜?]

[わかった、高度をとにかく上げてくれ。速度は今のままでいい]


明らかな疲労が見えるアルゲンはゆっくりながらも精一杯翼を羽ばたかせ、一気に上がっていく。

奴からしたら俺達にダメージを与えてるし、いくら高くとも空中でふらふらしながらゆっくり進んでたらアルゲンのの体力が尽きるまで追ってくるだろう。


黒ローブは直ぐにまた跳んで来たが、もう届くことは無さそうだった。


そして、ようやく俺達は街の端についた、目の前には俺が死にかけた時に目覚めたあの場所、ゴミ山がある。


アルゲンは滑空しながら徐々に高度を下げて、ゴミ山の中心へと向かう。

黒ローブもしっかりと真下から着いてきてくれていた。

[も、もう限界〜]


アルゲンは急激にバランスを崩し、だんだん下へと落ちていく。

黒ローブは俺達が落ちてきているのを見ると、直ぐに高く跳んで来た。


死の刃が急速に迫ってくる、今回は避けられない。



ただ、俺はもう避ける気はなかった。


[今だ!落とせ!]


アルゲンは俺が叫ぶとずっと掴んでいた俺を勢いをつけて落とした。

その行動に黒ローブもびっくりしている。


落下する俺はそのまま黒ローブの跳んでいる進路へ。

頭と頭がゴチン!と強烈にぶつかった。










ドシャリと少し柔らかいゴミ山に落ちた所で、俺の意識はすぐに帰ってきた。

[う、うぐぐぐぐ…]


チカチカとまた意識が飛びそうになりそうなのをギリギリで持ちこたえる。

朦朧とする意識の中で見える黒い影。


[う、あ…まりょく…]

ここでトドメを刺さないと…。


足元にはちょうど運良く【竜火粉】が散らばっている。

俺は何も考えずに【魔力動作】で、薄青色の霧を粉へと触れさせた。


竜火粉は魔力に触れると周囲の温度が急激に上昇していき、唸り声をあげるかのような音と共に炎の渦が周辺に高く舞い上がる。

炎は周りの腐った食べ物や木製の物に燃え移り、あっという間に火の海と化した。



[あ、熱…]

炎に巻き込まれて、火に耐性のない竜体が焼け爛れて行くのが感じる。

迫り来る死の恐怖はもう無かった。それよりも、あの人間に復習を果たした喜びの方が頭でいっぱいだ。


[は、はは…]

[リエル〜!]


アルゲンの声が火の海の外から聞こえた。

上を見上げると、火の海に飛び込み、俺の方へと近づいてくるアルゲンがいた。

アルゲンはすぐさま俺の背中を食い込ませるように鷲掴みにし、全力で火の海を脱する。


そのまま、アルゲンは俺を火届かない場所へと運んでくれた。

[あっつ〜!熱いよ〜!]


俺を雑に降ろしたアルゲンは自身の羽毛についた火を地面をゴロゴロと転がって鎮火する。

ほぼ火の鳥状態くらいに燃え盛っているが、意外と元気そうだ。


[別に…助けなくていいのに…]


ぼーっとする中で、俺は小さく一言だけぼやいた。

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